二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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    疾走少年、  [ 黒バス/長篇 ]
日時: 2012/08/14 10:57
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照: http://nanos.jp/10sakura/page/19/

 




 今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならでいふよしもがな、

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*last up!
0814: 花色+1



Hello.‖0813
 部活も、マーチングも無事終わり、今はお盆休みです。私は相変わらずキセキにお熱です。
 花色彼女*ももう直ぐ完結します。次のネタを考え
ているんですが・・・。
 青峰夢書きたい。でも黒バスファンタジーパロは長くなりそう。
 青峰夢は切甘。黒バスは、消えた故郷の生き残りの最強ヒロインが故郷の復興を願い、旅をしながらキャラ達と関係を持って行く物語。
 高尾は短編書きたいなあああああああああああ。

 ってこんな事してる暇ないわ私。宿題まだ半分も終わってねえよ。
 


[ → ]
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‖Attention!
 当方は、黒子のバスケを題材にした長篇、短編、他スレッド。
 此方でも使い回しキャラを起用と思っていましたが、原作に沿い、苗字を白李に変えました。なので面影は全く御座いません。
 あくまで私の自作ですので、閲覧後の苦情は受け付けません。無断転載、パクリは禁止です。荒らし、晒し、中傷はやめてください。
 その他何かありましたら、遠慮なくコメントを残して下さい。出来る範囲でのサポート・努力は致します。
 

‖About master!
 thread Name...疾走少年、 >>000
 master...さくら/sakura 
 好きな子中心にまったりと。かめこーしん^^



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 疾走少年、‖menu.



|Long

The basketball which Kuroko plays...


(( 軌跡の断片をさがして、 ))  表記:軌跡
   ∟私は君等のバスケに、惚れたんだ。

 人物/>>036
 00. Prologue />>023
 01. 黒子はボクです />>012/>>017/>>024/>>030/>>033



( 花色彼女* ) 表記:花色
   ∟彼女に振られた黄瀬とずっと黄瀬の事が好きだった女。

 01. 泣くドロシーの空色のカサブランカ (/>>22)
 02. メリルローズは太陽色のキャラメルでお別れ (/>>31)
 03. 午前二時、まさかのハンナ、ミルクティーは雪色 (/>>32)
 04. ロイヤルブルーのピアスはジュリエットの恋人 (/>>047)
 05. 彼のアリスはバラ色のティラミスを食む (/>>048)
 06. エメラルドは桜色だと言い張るエリスのくちびる (/>>049)
 07. アフタヌーンは黄金色、あとはセーラだけだ (/>>051)





|Shout
きいろ いろいろ ゆうひいろ  (/>>017-018/黄瀬)




|Title
きみと夏まつり >>025

................................................................................................................................................................

‖others.

|Animation.
 >>037 >>038 >>039 >>040 >>041

|memo.
 >>044 >>045 >>046



‖KISS.

*お客様
 風風様/海穹様/香月様/兎欠様/ゆう様/音愛羽様////

*他
 Made in Alice*様(お題)/確かに恋だった様

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240605 開設

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 きみと夏まつり/黄瀬 ( No.27 )
日時: 2012/07/22 17:43
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照:  赤司様まじ赤司様





 今日は鳴り響く蝉の声が一段と五月蝿い。イカ焼き屋の主人が此処で屋台を出してから随分の時間が立った。それは、夕焼け色だった空はとうに沈み、星がちらつく夜空になった事で人目で分かる。

 夏の熱さまっ盛りの夜、屋台と聞けばまず思い浮かぶのがあのイベントだろう。

 主人はその夏祭りの屋台の一つ「イカ焼き」という看板を掲げて頑張っていた。とは言っても横にあの屋台の王道「かき氷」を構えられては「イカ焼き」に勝ち目はない。所詮ジジイが食べる料理だ。
 主人は横のかき氷の客の出入りを恨めしそうに見て数分。

 イカ焼き好きな少年も何人かは居たらしく。


「おじさん。イカ焼き一つ下さい」

「・・・へい。300円ね」

「は?高くね?100円で良いんだよ詐欺か」

「お前が詐欺なのだよ青峰」


 まあ、これがイカ焼き屋に対する宿命か。おじさんはなら200円で良いからとため息を付いて看板を「イカ焼き特大サイズ300円!」から「イカ焼き特大サイズ200円!」へと書き直したのだった。


「あれ、あの娘」


 そして、主人は屋台の直ぐ傍で妙に辺りを見回す少女を見かけた。

 黒い生地に金や蒼の蝶が美しく舞い、終いには綺麗な赤色の帯。絹の様な滑らかな髪は高い位置で編み込んであり、睫毛はとても長くくるんとカールしている。主人が彼女に抱いた第一印象は「とにかく別嬪さん」であった。
 だがそんなベッピンさんは一際輝くこのお祭り現場で妙に辺りを見回していた。彼氏だろうか。そりゃまああんな可愛娘ちゃん、彼氏が居ないはずがない。
 そしてその疑問は確信に変わった。彼女はそわそわしながら小まめに鏡を取り出し髪型を確認したり、時には主人の目も眩むような笑顔を見せた少女。伊達に今までの57年間生きてきた訳じゃない。瞳を閉じ、相手の事を考えては頬を赤くする。早く来ないかなあ、不意にそう呟いた時には主人の疑問が確信に変わっていた。

 彼女は恋人と待ち合わせをしているに違いない。


 認めたく無いが丁度客の出入りが少ないこのイカ焼き。仕方がないから彼女を見守ってやる事にした。そ、そう!変な奴らとかに絡まれちゃ危ないからな!決して客来ないから寂しいって訳じゃないからな。



←|→

  きみと夏まつり/黄瀬 ( No.28 )
日時: 2012/07/22 17:44
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照:  赤司様まじ赤司様

 だがそれから薄々と彼女の異変に気が付いて来ていた。彼女が恋人を待ち続けてから早50分が過ぎている。相変わらず客の出入りは全く無いが、主人は彼女の事で頭がいっぱいだった。
 ———遅すぎる。、どう考えても遅すぎる。他人の恋路に首を突っ込む気は無いが、それとこれとはどうも違った。


「52、分か、」


 すると今度は彼女の方に異変があった。


「あ、赤司君」

「やあ、サクラ。黄瀬はまだ来ないのかい?」

「・・・うん。仕事が長引いちゃってるみたい。仕方無いよ、黄瀬君頑張り屋だもん」


 そうへらっと笑う彼女に主人は「て、天使」と呟いたのを、彼女と赤司と呼ばれた赤色は知らない。
 そして主人には聞き捨てならない言葉が一つあった。「仕事」である。相手は社会人なのか?でも明らかに同年代であろう赤髪や彼女に呼び捨てだったり君付けにされる社会人が居て良いのか。
 主人はどうもこうも言えない複雑な心境で彼等を見つめていた。


「そう言えば、テツヤ達知らない?ちょっと矧ぐれちゃってさ」

「あーテツヤ君達ならさっき見かけたけど。・・・ほら、其処の屋台で。イカ焼き買ってた」

「え?」


 天使である彼女が此方を指差して来た。まさかの展開である。
 赤司と呼ばれた赤髪は少し考えた後「サクラ、おいで」と手を差し伸べた。彼が甚平を来ている為か、傍から見れば恋人だ。お似合いである。

 もうあんな彼女待たせる奴なんか辞めてこの男と付き合えば良いのに。主人は此方に歩いてくる二人を見て思う。


「イカ焼きか・・・。おじさん、りんご飴をくれないか」

「 な ん だ と 」

「無いのかい?」

「ごめんな、ウチはイカ焼き専門なんだ」

「え?何だって?」

「イカ焼き買うなら幾らでもあg」

「え?」

「ストップ!赤司君堪えて!」


 「何おじさん自殺願望あるのかい?折角だから俺も手伝ってあげるよ」何やら瞳をかっ開いてぶつぶつぶつと喋る目の前の少年に鳥肌が立った。
 な、何なんだ。俺が一体何をしたって言うんだ。というか怖すぎる。

 そんな少年を横に只管謝り続ける彼女が只管天使に見えて仕方が無かった。このお祭りに来ているどんな女子よりも輝いて見える。
 主人はもう神にでも拝む様な心行きで少年と少女に一つずつイカ焼きをプレゼントした。


「どうせ残るものなんだ。貰ってやってくれ」


 もう彼女が恋人を待ち続けて1時間15分が経過していた。
 どう考えても遅すぎるだろう。彼女の変わりに、その黄瀬とやらにガツンと一発言ってやろうか。主人は先程の赤髪の事やらその前の妙にカラフル頭な奴らの事やらでイライラし、その怒りも彼にぶつけてやろうと拳を震わせる。


「ごめんサクラ。君の為にりんご飴を買ってあげようと思ったのに」

「・・・! い、否、良いよ赤司君」

「じゃあ俺はもう行くね。あの馬鹿達は俺の事も忘れて楽しんでるらしいから。早く行ってあげないと」

「うん。有難う赤司君」


 じゃあね。そう言って赤髪と別れた彼女はまた数十分前に戻り、そわそわしながら小まめに鏡を取り出し髪型を確認したり、恋人の事を考えては早く来ないかなと頬を赤くする。
 そうやってまた数十分が経った。そしてやっと、彼女と主人が望んた瞬間が現れる。


「黄瀬君!」


 「サクラっちー!」そうやって翔けてくる少年の姿に、彼女はぱあっと顔を輝かせ、今まで見た事もない笑顔で「黄瀬君」と名前を呼ぶ。
 そんなに恋人と会えて嬉しいのかい。あんなに待たされたのに。主人は彼を見た時の彼女の変わり様にもう酷く落胆さえしていた。会えただけで嬉しい、私は彼を心から愛している。その気持ちが身体全体から、表情から伝わって来て遅れてやって来た恋人をガツンとやってやろうという気も失せた。

 だが諦めが悪いのが此処の主人の意地。イカ焼き魂である。
 せめてもの抵抗に、一体どんな奴なのかと面を一度拝見しておこうと恋人の男の方を見た瞬間、主人の心は粉砕されてしまった。


「う、麗しい」


 夜空に輝く綺麗な金髪、長い睫毛に切れ長の瞳。顔つきはとても端正でため息が出てしまう程。背も高く、スラっと伸びた四股に付いた無駄の無い筋肉は、彼が運動も出来ると言う事を物語っていた。それに、これ程までにセンスの良い甚平は着崩され、彼女を見るなり此方も嬉しそうに素敵スマイルを振り撒いていた。

 まさかこれ程までのイケメンが居て良いのだろうか。天使な彼女と釣り合っている。もはや二人を見る度にお似合い過ぎてため息も出なくなった。


「サクラっちー!うわあサクラっちだ!心の癒しッス!」

「ちょ、ちょっと黄瀬君。恥ずかしいよ」


 そして何て馬鹿な彼氏なのだろうか。ヤケにオーバーリアクションである。最初は明らかに他の女と遊んでたなと思ったが、純粋なその笑顔を見れば、彼が余程計算高く無い限りその疑問は外れていた。
 何故なら会ってまず抱きつく。そして触れるだけのキス。一体なんなんだこの彼氏は。彼女は人前で恥ずかしいのか固まって微動だにしない。


「ごめんッス。遅くなって、待たせちゃって」

「ううん、平気。忙しいんだから気にしないで」

「でも俺心配してたんすよ。サクラっち可愛いから変なのに絡まれて無いかとか。撮影集中出来なくて長引いちゃったんすけど」

「え、それはダメだよ。今人気のモデルさんなんだから。ビシっとしなきゃビシッと!」

「本当にごめん」

「だから良いの。黄瀬君の為なら一日中待ってられるよ私。黄瀬君頑張ってるから」

「もう、サクラっちのそういうとこ惚れるッスー!」


 手を取り合って屋台から離れていく彼等に自然と笑みが溢れる。これが世の言うバカップルという奴か。
 少女も嬉しそうな事だし、この件は落着として良いだろう。

 煌びやかな明かりが漏れるこの空間で、何よりも輝いて見えたあの浴衣。あの恋人達はデレデレと緩みきった笑みを浮かべて人混みの中に消えてった。


「頑張れよ、青春小僧」








「あー黒子っち達—!来てたんす———ぐはっ!」

「てめえ遅えんだよ黄瀬ッ!」

「黄瀬君彼女待たせるなんて最低ですね」

「黄瀬ちん最っ低ー」

「こらこら、涼太を余り苛めるな」

「赤司、お前が一番楽しそうなのだよ」

「皆来てたんだ!甚平似合ってるよー!」






「・・・・・・・・・・・、アイツ等グルだったのか」




@/煌めく世界ときみ

240713
お題一つ消化しました。
何か訳の解らん変なおっさんが主人公みたいになってしまいましたけど^^;




 きみと夏まつり/赤司 ( No.29 )
日時: 2012/07/22 17:45
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照:  赤司様まじ赤司様



 深い夜空に瞬く間に輝く提灯の明かり。屋台の光が漏れている。
 夏祭りと言えば恋人と行くか、友人と行くか。屋台巡りや花火などの数々のイベントが待っている夏の醍醐味である。


「うっわー。凄い人混み」

「サクラ、離れるなよ」


 大人しめの色の浴衣に赤髪が映える。全く、眩しい位鮮やかな赤髪だ。
 右目が赤色、左目が橙色の綺麗な瞳の全部が私を映してくれていると思うと凄く嬉しくて。ふふっと笑みを零すと赤司は調子に乗って疚しい事を次々としでかすから下手に期待させると止まらない。勿論、その場が此処の様に公然だとしてもだ。


「離れないから。この年で迷子になんかならないよ」

「ふふっ、どうかな」

「ちょっと、どう言う意味?」


 ムスっと頬を膨らませて見せるとあろう事か目の前の赤司様は「可愛くないよ」と言い蔑むような目で此方を見て来た。はっ、其れが愛する彼女への態度かよ。世の中の彼氏持ち女が泣くぜ。
 というか、恋人なんだからもう少し「可愛い」の一つ位は行って欲しいものだ。

 自慢では無いが、付き合って一年半になる私達だが、赤司から可愛いという言葉を聞いた事は一度も無かった。「好きだよ」やら「愛してる」などの胡散臭い文句なら小馬鹿にしら様な態度で何回も聞いた。
 別にお世辞でも可愛いとは言えないと思わせる位ブスでもないと思うぞ私は。

 でもそんな所全て好きで愛してて、赤司の全てに溺れたいと思っている私は余程の変わり者なのだろう。
 「赤司様の言う事はゼッターイ」良く誰かがそう叫んで居た気がする。最もである。常にハサミを持ち歩いているらしく、この間黄瀬と青峰に切りかかっている所を目撃した。因みにその際黄瀬達に助けを求められたが、裏切って逃げた。

 だけどでも、やっぱり赤司は大好きで、たまに見せる優しい所とか、形はどうであれ私を精一杯の愛で愛してくれている所とか、バスケになるとキャプテン、司令塔として皆を引っ張るリーダー的な所とか。全て全部丸ごと大好きなのである。


「サクラ、今日浴衣可愛いな。似合ってる」

「え」


 び、びびったのだよ。行き成り何なんだこのコマシ男。確実に態ととしか思えない。畜生、狙ってやがったなあいつ。
 急に言われて太刀打ち出来る程人間なって無いんだよ私は。赤司みたいに頭の回転も早くなければ冷静に物事を考える能力なんてない。

 顔は紅潮し、突然の可愛い発言に口をパクパクさせる。まさか此処まで早く求めていた言葉が聞けるとは思わなかった。レア度急降下。


「あ、あかしっ、さま」

「ん、何だい?」

「そ、そそそんな急に、ゴ・・・ゴリラ!」

「ぶち犯すよ」

「すみませんでした」


 赤司の考えている事が良く分からない。ってか下ネタかよ。くすくす笑いを堪えている赤司が、そんな赤司までもが何故か愛おしくて。ああやっぱり笑うって良いなあ。どんな形であれ。

 そして急に立ち止まった赤司に吃驚して、反射的に立ち止まる。

 そのまま此方を向いて直ぐに私の手を握り歩き出した。赤司の大きな手に、私の手がすっぽりと包まれる。あったかい、
 手も温かいが、私の顔を温かかった。更に顔は紅潮し、平然と歩く赤司を涙目で睨む。が、赤司は前を向いている為気が付いてくれない。こん畜生!
 それは夢を見てるみたいで、


「やっぱり今日のサクラ可愛いから。変な奴らに絡まれない様に、ちゃんと俺のって証」

「ちょ、皆見てるから!」

「恋人が堂々と手を繋いで何が悪いのさ。それにサクラ方向音痴だから、逸れない様に。」


 「こうしたら、絶対逸れないだろう?」と片目だけ此方に向けて言って来た赤司にもう色々と爆発しそうだった。




「じゃあ今日は、最後までたっぷり楽しもうか」




@/はぐれない方法


240715
お題二つ目消化。赤司様まじ赤司様。
赤司かっこいいですよね。超好きです黄瀬君と同じくらい好きです。いや、黄瀬君の次かな?


Re:     疾走少年、  [ 黒バス/長篇 ] ( No.30 )
日時: 2012/07/22 18:17
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照:  赤司様まじ赤司様

04.




「・・・女の子?」

「はい。」


 あれ、女子って事はマネージャー希望?ん?でもさっき選手って言ってなかったっけ。空耳?———動揺を隠せないリコは、目の前の少女が平然と立っているのに妙に違和感を感じた。
 空耳だと思うが、でも自分の耳に狂いは無いはず。彼女は先程選手兼マネージャーと言った。どういう事だろうか、訳の分からないままOKを出すのもいけない。そう感じ取ったリコは、もう一度サクラに聞いてみることにした。


「えっと、マネージャー希望?・・・選手、なの?」

「両方です」

「ウチは新設校だから、バスケ部は男女で別れてはいないけど選手は皆男子だよ?」

「知ってます。・・・大丈夫です、中学時代もそうでした」

「中学?」

「帝光バスケットボール部一軍に所属していた白李です。白李サクラ」


 “白李”。その名前に何処か聞き覚えのあった。それに帝光バスケ部と言えばあの言わずと知れた超強豪校ではないか。リコは更なる動揺の波に打ち拉がれる。
 まずどう考えたってバスケが強いという女子の体付きでは無い。だがどうしてだろう。リコは人目で相手の能力・状態を見極める能力を持っているはずなのに、サクラに其の能力を使っても視えなかった。“何も”視えなかったのだ。ステータスから全て。モザイクが掛かったかの様に、どう目を凝らしても分からない。

 ごくり、リコはサクラを見上げると頭の筋に一本の線が通った。思い出した、もしかすると彼女はキセキの世代では無いだろうか。
 こういう噂を何度か聞いた覚えがある。“帝光に女子で在りながら男子と同等以上にプレーをし、その優れたゲームメイクやバスケセンスでレギュラー入りを果たした唯一女子でのキセキの世代が居る”。
 その際はまさか女子が、と只の噂としてしか気にしなかったが。まさか実在するとは。だが噂では有名だし、女子でキセキの世代だと言われる程の強さならもう少し強豪校に行くはず。

 黒子と言いサクラと言い、キセキの世代とは謎に満ち溢れたものだ。リコはサクラをじとりと見ながら思った。


「よし、仮入部を認めましょう。だけど、幾つか質問があるわ」

「・・・はい」

「何故もう少し早く入部届けを提出しなかったの?」

「あー、其れはえっと。私最初はバスケ諦めてたんですよね。もうバスケはしないって決めてて。だから他の高校からスカウトの話が来ても断ってて。」

「だから、誠凛に来たって?」

「最初はそのつもりでした。此処でバスケとはもう無縁に生きていこうって」

「ん?でも、ならどうして?」

「多分、あの人達の御蔭だと思いますよ。朝礼、見たんで。あれで心揺れ動いたって言うか。ははっ、バスケはしないって決めてたのに、まさかこんな簡単に動かされるとは思ってなかったです」


 其処まで聞いて、リコはサクラの瞳を見た。・・・嘘は言っていない。この目は筋金入りのバスケ馬鹿の目だ。
 サクラは、常にリコに視点を合わせながらも何処か隅でボールを奪い合う彼等を見ていたからだ。


「じゃあ、これから宜しく!」

「はいっ。リコ先輩!」

「へへっ、監督でも良いよ」



230716
急激な心変わり白李さん。


  花色彼女*  02. ( No.31 )
日時: 2012/07/24 18:39
名前: さくら (ID: noCtoyMf)
参照: 今まで黙っててごめん。実は俺、赤司様のハサミだったんだ(バッ

02.




 時遡る事、桜の季節。

 校則が厳しかった所為で十分にアレンジされていなかったダサいセーラー服をハンガーに掛け、隣の落ち着いた色のブレザーを手にとった。
 そのまま腕を通すと真新しい制服の匂いが鼻を霞める。ああそうだ、中学に入学する時もこんな匂いでこんな気持ちがしてたな。

 今日は、待ちに待った海常高校の入学式である。高校では数々の青春をしたいと思う。中学時叶わなかった彼氏を持ち、部活に入って勉強も頑張って。遊ぶ時は遊びまくって。そんな生活を頭に浮かべ、不意ににやけてしまう。


「おっと。こんな緩みきった頬じゃダメだ」


 ぺちぺちと頬を叩き、改めてこれから待ち受ける素晴らしい青春ライフに胸を膨らませた。膨らませる胸なんて無いけど!

 待ってろよ海常高校!薔薇色の高校ライフを期待して、準備が整った私は家を出たのだった。



「行ってきまーす!」





 ×





 元々其処まで頭が良くなかった私は、滑り止めで海常に入学した。受験では完璧に落ちて居た私は、内申点が良かったせいでギリギリ入学できた。真面目に頑張ってきたあの3年間は、無駄ではなかったようだ。

 期待に胸を躍らせて居ると、あっという間に正門の前に立っていた。横を通って行く他の生徒が邪魔そうに此方を見て通って行く。あ、御免なさい邪魔ですか。

 海常高校の校門を通って足を進めると直ぐ、周りに異変が起き始めた。何やら先を行っていた女子生徒やら男子生徒やらが挙って私の方を見てこそこそと話している。え、何!?そして更に、よく見ると女子には顔を赤らめるものもおり、男子は皆して此方を見て「おー!」と感心の色を帯びていた。
 え、私か!?私なんかしたか!?そ、そうかもしかして私この高校の中でアイドルだったりして!?え、見た目も中身も冴えないこの私が!?でも現実は私が思っているのと全然違うのだよ。これはまさかの私に向ける憧れの羨望なのではないだろうか・・・!

 だが此処で私が真顔スルーすれば株も下がる。此処は笑顔で挨拶、手を振って、最低限でもお淑やかに・・・。


「み、皆さんごきげんよう。おほほほほ」


 見事にスルーされてしまった。近くに居た、此方を見ていたであろう女子達が、一瞬だけ私を見てまた視線を戻す。こ、こいつら今の見なかった事にしたな・・・!
 くっそう。だが視線は今でも私だ。先程と変わらない眼差し。

 ああ、先程のは聞こえていなかったのか!

 それなら納得行ける。私は改めて挨拶しようと足を止めた。髪を耳にかけ、お嬢様な笑顔でもう一度、にこりと笑う。


「ごきげんよう、皆様。き、今日は清々しい朝ですわね!」


「———やっぱ見てよ。あれ黄瀬君じゃん!モデルのー!」

「やっぱ本当!?あああ近くで見るとますますイケメン!」

「あああ今直ぐこの腕で抱きしめたいっ!ああっ、なんて恰好良いの!抱いてー!」


 此処はツッコミ所が多すぎてツッコミが追いつかない!
 黄瀬君っ?誰だよwプリ●ュアかっての。私今回も見事にスルーされたよね!もう荒ぶってしまってどうしようもないわ。どうしましょう。

 そう言えば私、かなり恥ずかしくないか?こんな私を惨めな気持ちにしたのは何処のどいつだと言う事と、周りが余り噂するからの好奇心で、反射的に振り向いて言葉を失った。
 輝ける綺麗な金髪の絹髪、長い睫毛に切れ長の瞳。顔つきはとても端正でため息が出てしまう程。背も高く、スラっと伸びた四股に付いた無駄の無い筋肉は、彼が運動も出来ると言う事を物語っていた。

 私は今まで生きてきた中の15年間、これ程までのイケメンを見た事がない。そう言えば女子達はモデルと言っていた。そうか、背も高いし彼はモデルをやっているのか。
 今は何というか、自分が惨めな気持ちになった事などどうでも良く、只彼と同じ世代に生まれて来れた事が凄く誇りに思えた。



 ×



 一目惚れ、とでも言うのだろうか。今までに恋は何度もして来たが周りに顔が良い子がわんさか居た中学では彼氏を持つ事など叶わなかった。


「はあー。黄瀬君恰好良いー」

「そうだね。ほら、今月号の黄瀬君の載ってる雑誌。」

「う、うわああああ、ま、眩しい!」


 そして運が良い事に同じクラスだと言う事が分かった。私は飛び上がる様な気持ちで同中で仲が良かった友達と盛り上がる。
 だがその舞い上がりもその場だけで終わった。クラスに入った瞬間、黄瀬君は忽ち生徒に囲まれ人気者となった。モデルの他にバスケが上手い黄瀬君は「キセキの世代」の一人と呼ばれているらしく、クラスの男子からも羨望の声が聞こえる。

 私はあの輪に入って行く勇気も無く、少し離れた自分の席から友達と黄瀬君を眺めているだけ。ちゅーちゅーと苺牛乳を飲みながら笑顔を振り向く黄瀬君は本当に天使だと思う。可愛い、恰好良い、本当王子様。



 ×



 だが私の恋は、一目惚れして一週間足らずで粉砕した。

 要は失恋だ。私達の王子様であった黄瀬君は、同じ学年の女子と登下校をしているのを目撃してしまった。
 しかも相手は、同じ学年でも美人で有名なお姫様。違う雰囲気を醸し出す、えっと・・・、篠原さん、だっけ・・・?
 違うクラスだがその美貌は留まる事を知らない様で、人目見た時同性の私でもトキめいてしまった。黄瀬君のブロンドに似た金茶髪のふわふわした絹髪。睫毛は長く瞳が綺麗な桃色。とても可愛かった。それはもうお姫様と言われる程に。

 特に相手が黄瀬君みたいな王子様だから、傍から見ればおとぎ話でも聞いているんじゃないかと言う程の美男美女カップルだった。
 私みたいな平凡少女が入る隙間なんて、一ミリも無かった。




02:{ メリルローズは太陽色のキャラメルでお別れ }/白李



240724
何かサクラの過去編になってしまった。
過去編は次回まで続きます。あああ高尾連載書きたいー。


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