二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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あらしのよるに〜苺泥棒が書き換えてみた〜
日時: 2012/06/24 23:04
名前: 苺泥棒 (ID: p17IpJNR)

こんにちは。苺泥棒と申します。

興味不本意で...小説を書いてみた次第です。

テーマは、あの有名な『あらしのよるに』。

あるオオカミとヤギを主人公にしたお話です。

そのオオカミとヤギを擬人化してみたら.....

苺泥棒ワールドではこうなる!!






登場人物=ほぼ、原作に同じ。

☆人魚

・メイ

・長

・メイのおばあちゃん

・タプ

・ミイ

人魚は女ばかり。
香りと髪に特徴がある。

☆人間

・ガブ

・ギロ

・バリー

人魚を獲ることを職とする人達。漁師。
人魚はその時代の人気の食材であった。


では、本編!!







誰が言い出したのであろうか。

誰が発見したのであろうか。

人魚の瞳は、不治の病も治す万能の薬。

人魚の生き血は、傷を一瞬にて癒す水。

そして人魚肉は、最高に美味であった。


ある時代、人魚は食用として獲られていた。

人間は、自分らに似た人魚達を平然と食した。

これは、そんな時代の話である・・。



さわやかに晴れ渡ったある日の午後のこと。

人魚岩では、たくさんの人魚が遊んでいた。

人魚は神秘の生き物。ヒレを足に変えることができる。

ただ、人魚独特の甘いような潮っぽい香りと、白い泡の模様の浮く海色の髪は、隠すことは出来なかった。


その中に、メイという名前の人魚がいる。メイはおばあちゃんのお土産の木の実を拾いに、林を歩いていた。



急に雨雲が広がって、空が薄暗くなってきた。

「おーい、メイ。そろそろ、帰ろうよー。」

タプが呼んだ。

「早く戻んないと、やばいよぉ。」

モロも心配そうにいう。

でもメイは、

「ちょっと待ってー」

と、まだ木の実を採っていた。


「うっわ、こりゃぁひと雨来ちゃうよ。」

「メイ、私たち先に帰ってるねー」

タプとモロが叫んでも、

「メイも早くぅ」

とミイが急かしても、メイはなかなか来ない。

とうとう皆はメイをおいて、帰ってしまった。



メイが気付くと、辺りはもう真っ暗だった。

急に雨が降り始め、風もビュウビュウとメイの体にぶつかってくる。


ピカッ!ガラガラガラッ!


どこかに、雷が落ちたようだ。

その音に驚いたメイは「きゃっ」と叫んで、海とは真反対の方向へ走っていった。

走っていくメイの後を、雷と激しい雨が責めたてる。



どれくらい、走ったであろうか。

メイは壊れかかった小屋を見つけ、その中に逃げ込んだ。

「何も見えない・・。困ったなぁ。雨、とうぶんおさまりそうにないよ・・」


ピカッ!ガラガラガラッ!


「ひやぁっ!」

その時、ガタッ!と大きな音がして、誰かが、ドアから入ってきた。

「誰・・?」

メイがじっと様子を伺っていると、少し独特な匂いがしてきた。

—潮の香りがする。きっと人魚だ。よかったぁ・・。

メイはホッとして、その人に声をかけた。

「すごい嵐ですね」

「えっ!あ、誰かいたんだ。真っ暗で気付かなかった・・」

—へぇ、男の人魚だ。珍しい。

「わたしも、ついさっき飛び込んできたとこなんです。
すっかりずぶ濡れで・・」

「ハハ、まったくですよねー。
おかげで仕事投げ出すはめになって・・
ちょっと女性のいるところで失礼いますね。
よっと」

そういうと、その人は雨ではなく海水で濡れたTシャツとサンダルを脱ぎ、床に置いた。


・・・声の主は、ガブという名前の人間だった。


「あなたが来てくれて、ホッとしました。」

「それ、ナンパですか?・・なんて。
でも確かに、嵐の夜にこんな真っ暗な小屋に1人は、男の俺でも心細いかなー・・くしゅっ!」

「だ、大丈夫ですか?」

「い、いやぁ。どうやら鼻風邪をひいたみたいで・・くしゅっ!」

「ふふっ、気を付けてくださいね
ところで、どちらに住んでいるんですか?」

「東の方。ごめん、俺地理には疎くて・・」

「東の方?」

東の方には、人間の村がたくさんある。

「あっちの方は、危なくないですか?」

「え?・・まあちょっと厳しい奴らはいるけど、いいとこですよ。」

「度胸があるんですね・・
私は西の方です。
実は私も、地理に疎くて・・」

「へぇ、羨ましいですね
あっちはたくさん獲れるし・・」

西の方には、人魚が多く住んでる。

ガブは人魚達が海を優雅に漂っているところを思い浮かべた。

「とれる?私は東のほうがたくさん採れると思いますけど・・」

メイは魚が遊泳している様子を思い浮かべた。

「そう?でも美味いですよね・・
ちょっと気の毒にはなるけど、やめられないっていうか。」

「ですよね。ちょっと可哀そうだけど・・」

「あぁあ、あれが今ここにいたらなぁ。
実は俺、腹ペコなんっすよ」

「実はわたしも、お腹が空いちゃって。」

「俺もです
そういえば俺、昔はガリッガリで・・。今では大食いだけど。
あのころはよくばあちゃんに、もっと食えーもっと食えーってよくいわれてたなぁ。」

「あ、私もそんなこといわれてました。
食べられるときにしっかり食べておかないと、いざというときに力が出ないわよーって。」

「そうそう、俺も全く同じ
それ、母さんから?」

「いいえ。わたしもおばあちゃんから。
母はわたしが小さいときに・・」

「そっか・・。俺のおふくろも、もう死んでるんです」

「・・なんかわたしたち、似てますね。」

「確かに。真っ暗でお互いの顔見えないけど、実は顔まで似ていたりして。」

ガブが、そういったとたん。


ピカッ!ガラガラガラッ!


激しい稲妻が光り、小屋の中が昼間のように明るくなった。

「ひあっ!」

「ぅあ!・・っと。だ、大丈夫か?」

「は、はい・・。
あっ!わたし、つい下を向いてましたけど、わたしの顔見えたんじゃないですか?」

メイが思い出したように聞くと、

「そ、それが俺、思わず目をつぶっちゃって・・」


ピシッ!ガラガラガラッ!


「きゃあっ!」
「うわっ!」

2人は同時に声を上げて、身を寄せあった。

「あっ、ご・・ごめんなさい!
私、その、怖くて、つい・・」

メイは急いで身を退いた。

相手は男。・・少し胸が鳴った。

「俺こそ・・
その、別に雷が怖いってワケじゃないですよ?ただ、その・・」

見えなくても分かる彼があわてふためく様子に、くすっと息を漏らした。

「ホント、わたしたちって似てますね。」

「・・俺は別に、雷怖くないですからね。」

「ふふっ。
そうだ!どうです?今度天気のいい日に、一緒にお弁当持ってどこか行きません?」

何かしらの友情を覚えたメイは、そんなことを尋ねた。

「それいい!
はぁ、ひどい嵐で最悪の夜かなと思ったけど、最高の夜になりそ。
・・あ、嵐が止んだみたいだ。」

「本当・・。ねぇ、とりあえず明日のお昼なんていうのはどうですか?」

「了解。嵐のあとは、特にいい天気っていうし。」

「会う場所はどうします?」

「うーん・・この小屋の前は?」

「いいですね。でも、お互いの顔が分からなかったりして・・」

「それじゃ念のために、俺が〈嵐の夜に会ったものです〉っていうよ。」

「それじゃ長くありません?〈あらしのよるに〉はどう?」

「お、それもらい。じゃ、俺たちの合言葉は〈あらしのよるに〉ってことで」

ガブはゆっくり立ち上がった。ところが、メイは立ち上がれなかった。

「うっ、いっつぅ・・」

「どうした?」

「いや、長時間座るのは久しぶりだから足が痺れて・・」

「おぶろうか?」

「ありがとう。でもいいです。先に帰っててください。」

「そう・・。それじゃ、明日。あらしのよるに」

「気を付けて。あらしのよるに」

メイは痺れた足に気をとられていて、戸口から出ていったガブの姿を見ていなかった。

だんだん、ガブの姿が遠くなっていく。

メイも、遅れて小屋から出た。

2人は真反対の方向へと歩いていく。


やがて夜が明け、雨上がりの木々がキラキラと輝きだした。



あくる日は、昨夜の嵐が嘘のように晴れ渡り、小鳥も元気に歌っている。

道をメイが鼻歌混じりに歩いてきた。

手の先には、お弁当が入ったビニールバックがある。

そして小屋の前まで来ると、あたりをキョロキョロ見回した。

まだ誰も来ていないと分かったメイは、ちょっとした悪戯を思いついた。

小屋のそばにあるクヌギの木の影に隠れたのである。


反対の道からガブが歩いてきた。

ガブも弁当袋を提げている。

ガブは小屋の前までやってくると、木の裏に隠れているメイの影を見つけ、ソロリソロリと近づいてきた。

甘いような潮っぽいような香りが鼻を刺す。

木のそばまで来たガブは、嬉しさをこらえながら、コホン!とせきばらいをして、あの合言葉をいった。


「あらしのよるに!」


メイも思わずにっこりして、合言葉を返した。


「あらしのよるに!」


えっ!



穏やかな日差しが照らす丘の上を、メイとガブは登っていく。

2人の笑い声が、楽しそうに丘に響き渡る。

「まさか・・。びっくり。
あなたが人間だったなんて。」

「俺も。まさか君が人魚だったなんて・・」

「ホント・・。人間と一緒にお昼ご飯食べる約束したなんて、何かの間違いじゃないのかな。」

「同感。お昼ご飯と一緒に、お昼ご飯を食べるようなもん・・っと、ごめん。」

「いいよ。あなたがわたしを食べるつもりだったら、さっき小屋の前で・・ね?
あ、まさかお昼ご飯中に踊り食いする気とか。
今、人間の中で流行ってるんだよね?」

「そんなわけないっすよ!
俺、食料よりなにより友情を大切にするタイプなんで。」

「それ、おばあちゃんからよくいわれた。」

「実は俺も。」

「雷に弱いところといい、わたしたちって本当によく似てるね。」

「・・改めていうけど、別に俺は雷怖くないから。」



どうやら2人は、丘の頂上で弁当を食べようとしているようだ。

「あっ!」

突然、メイが声をあげた。

崖崩れで道が割れ、谷ができてたのである。

「どうしよう・・」

メイが心配そうにいうと、

「大丈夫さ!これくらいの崖なら飛び越えれるさ。よっと」

ガブそういって、ポンと崖を飛び越えた。と、そのときだった。

弁当袋の持ち手が切れ、


ヒューン


「うっわ、しまった!」

谷底へまっ逆さま。

「ちぇー、ま、いっか。
俺、2、3日食わなくたってへっちゃらだし。」

「昨夜は大食いだっていってませんでしたっけ?」



2人はずんずん丘を登っていく。

ガブはあまり、元気がなかった。

—あぁあ、今日1日弁当なしかぁ。

そう思うと余計、お腹が空いてきたのだった。

「あっ・・」

ガブは思わず声を上げた。

人魚が、メイが食べ物として見えたからである。

ガブは思わず手が出そうになり、慌ててそれを抑えた。

—俺、何してんだ!友達を・・

甘いような潮っぽいような香りが鼻を刺す。


『まさかお昼ご飯中に踊り食いする気とか。』


グーッ!

ガブのお腹の音。首を振り、目をつぶる。

そんなことを繰り返してるガブに、メイが気付いた。

「どうしたの?ついたよ、頂上。」

ガブが目を開けると、メイがにっこりと笑っていた。

「い、いや!俺はなんともないよ。ハハ」

ガブは眩しそうにメイを見上げた。



丘の頂上に立つと、ひろびろとした景色が広がっていた。

「あ、人魚岩が見える。」

「本当だ。俺よくあそこで人魚を・・うっ」

「え?」

「い、いや。お、俺は断じてあそこで人魚を獲ったりしない!絶対!」

「・・ホントに?」

「も、もっちろん!俺、人魚の肉なんて一度も食べたことないしっ。ハハ、ハハハ」

「へぇー・・とりあえず、お弁当にしちゃいましょう!
って、あ・・」

ガブは弁当を落としまっている。

「わたしのお弁当、半分食べる?魚や貝ばかりだけど・・」

「いや、その・・」

「あ、まさかさっき落としたお弁当の中身が人魚の肉だったりして。」

「ん、んなワケない!断じてない!俺、ホンットーに人魚の肉だけは・・」

「ふふっ。その慌てようかわいい。」

「なっ・・!とっ、とにかく!ちゃっちゃと食べちゃって下さい!
俺、昼寝でもしてます。」

「そう?それじゃぁ・・」

メイはガブに背を向けると、弁当箱を開いた。

中にはキラキラの魚や貝がぎっしり。

「いただきまーす!」

そういって、食べ始めた。

—俺も、弁当があるといっちゃぁ・・あるんだよね。後ろに・・。

ガブは、メイの後ろ姿をうらめしそうに見ながら心の中でそう呟いた。

「うーん、やっぱりこんな景色を見ながらの弁当っていいなぁ。
あっ・・、ごめん。」

メイが振り替えると、ガブは目をつぶって寝たふりをしていた。

「もう寝ちゃったんだ・・」

メイはそういって、またガブに背を向けて食べ始めた。

弁当を食べおわると、大きくあくびをした。

「んー、お腹いっぱい。わたしも寝ちゃおうかなぁ・・」

メイは大きなあくびをして、ゴロリと横になった。

「ふぁあ、ムニュムニュ・・」

ガブのほうは、お腹が空いて眠れなかった。

むくりと起き上がると、ぐっすり眠っているメイをジーッと見つめた。

—彼女、いい子だもんなぁ。食べても美味そうだけど、何か一緒にいると・・ホッとする?っていうのかな・・。

そのときメイの髪が風になびき、耳をさらした。

「うわっ・・」

—うっわ、美味そう・・。〈あなたは友達だから、方耳くらいなら・・〉って、ハハ、そんなワケないか。

・・・でも、俺、もう・・。

ガブは、そっとメイの耳に口を近づけた。

唇を少し開いた。

「はっ・・」

ガブの吐息が耳にかかると、

「ひあっ!や、やめてくださいよ。くすぐったいです」

メイが飛び起きてしまった。

「ふわーぁ、よく寝たぁ。わたし、くすぐったがり屋なんです。特に耳はダメで・・。
わたしの耳に、何か付いてました?」

「えっ!あ、いや、別に・・」

「ふーん、変なの。ねぇ、そろそろ丘下りようよ。」

「だな。」

メイは立ち上がって、歩きだした。


ガブの目は、つい前を歩くメイの耳にいってしまう。

よだれが滴れてきた。また、メイの髪が風になびく。

はぁ、はぁ。

だんだん息遣いが荒くなり、ガブは思わずメイのところに駆け寄って行った。

「うっ・・。やっぱり・・、やっぱりこんなの我慢できねぇ!」

メイが振り返った。

「どうかしたの?」

「い、いや。ひ・・、1つ大事なことを忘れてたなぁ・・っ、て。」

「え?」

「えっと、つまり・・。だから、」

ガブは下を向いて、ボソリといった。

「こ、今度、いつ会う?」

メイはガブを見つめて、笑顔を浮かべた。

丘の上の2人の影がひとつになって、どこまでも伸びていた。



朝の人魚岩では、人魚の長が皆を集めて何か話していた。

「これから、冬に入る。人間どもは私たち人魚をいつにも増して、次々に襲ってくると思うわ。
つまり、1年で1番今が危険な時期ってこと。
くれぐれも油断しないで。なるべく1人で出歩かないことを心がけて。」

まだ話の途中だというのに、メイが海からあがってどこかへ行こうとしていた。

それに気付いたミイが声をかけた。

「メイ、どこ行くの?」

「えっ!あ、その・・」

「なんか、怪しい!」

「べ、別に怪しくなんて・・」

メイがもじもじしていると、そこへタプがやってきた。

「何してるの?」

「メイがどこか行くみたいなの。」

「どこ行くの?メイ」

「え、えっと。東の方・・。ほら、クヌギの木がある、西と東がぶつかるとこ・・」

「東ぃ!」

いきなりタプが叫んだ。

「お前バカ!?あそこは、この間真っ昼間に人魚が大量に人間に捕られたところだよ!このごろじゃあのあたり、“昼飯海岸”て呼ばれてるの、知らない?危ないって!」

「でも・・。約束したから。」

メイがなんとか1人で行こうとしていると・・。

「だめよ、絶対ダメ。行くならタプと一緒に行きなさい。」

おばあちゃんに、そういわれてしまった。

仕方なく、メイはタプとミイと一緒に向かった。



道の途中、タプが心配そうに話しかけてきた。

「いい?メイ。人間のことなら、なんでも聞いてよね。って、ちょっと。何でそこでため息つくわけ?」

「・・・」

メイは黙ったままだ。

「あのね、メイ。人間ってのは・・」

そんな話をして歩いてるうちに、3人は小屋の前についた。

「まだ、友達は来ていないみたいね。」

「え?あ、うん。」

そういって、メイは何気なく見た茂みの中に驚いた。
ガブが寝ていたからだ。

「メイ、何ぼんやりしてんの?」

「えっ?あ、別に・・」

タプはまだ話を続ける。

「私は何度も人間を見てるの。私たちに似てるけど、髪青くないし、匂いも変だし・・
でも安心して。人間なんかがもし現れたら、こうやって足でエイッ!って」

そのひょうしに、タプの足が茂みの中のガブの頭に、


ボコッ!


思わずガブは、

「なぁにすんだドアホ!」

といって、立ち上がった。

驚いたのは、タプとミイ。

「いやぁぁ!」
「きゃぁー!」

タプとミイは大慌てで逃げ出した。

「いっつー!痛いなぁ、いきなり頭蹴られた。」

ガブはそういって、頭のコブを押さえた。

「ご、ごめんなさい!今の、わたしの友達で・・」

「ハハ、すごく活きのよさそうな・・、いや、気のよさそうな友達じゃん。
でも、何だか脅かしちゃったみたいだな・・」

「でも、やっと2人だけになれました。メイが心配だからどうしてもついてくるって、困ってて・・
あっ、私の名前、メイっていうんです」

「へぇ、メイか。いい名前じゃん。
俺はガブ。」

「何か変ですね。今ごろ、お互いの名前を知るなんて。」

「だな。」

「ふふっ、ずいぶん待たせちゃいました?ガブ。」

「いや、俺もさっき来たとこ。」

「とにかく仲間がうるさくて。今から人間に会うなんていったら、大変なことになってただろうなぁ。」

「俺も。人魚と友達だなんて、仲間には絶対いえねー。」

「わたしたちだけの秘密だね。」

「そ、そんないいかたすると、俺ドキドキしちゃうじゃんか。
でも、本当にいいのか?俺みたいな人間と一緒にいて。」

「あなたこそ、いいの?私みたいな人魚と一緒にいて。」

「ふぅ、俺たちは秘密の友達ってことだな。」

「ですね。秘密の友達。ふふっ」

「ハハッ」


2人は林の中を歩きながら、いろいろなことを話した。
そしてまた会う約束をすると、それぞれ自分がいるべき場所へ帰っていった。



翌日、東の村で人魚捕りの人間たちの集会が会った。
真ん中にいるのは、片目に大きな傷のある、ボスのギロだ。

「分かってるな。これからは失敗は許されねぇ。なんたって、もうすぐ寒い冬だ。それに、町に疫病が流行ってやがる。なんとしてでも、人魚を捕まえねぇとなんねぇ。いいか、これは町のお偉いさんからの依頼でもあるんだ。気ぃ引き締めてかかれ。」

「へい!」

「手始めに、早速今日は、貝の岬で人魚を捕る」

「えっ、貝の岬!」

ガブは思わず声をあげた。メイと会う約束をしていた場所が貝の岬だったからだ。

「貝の岬?あそこにはあまり人魚がいないはずじゃ・・」

バリーがいった。

「だから、狙うのさ。あそこは岩ばっかだが、その境目にある貝が人魚にとって美味いらしい。俺たちには不味いが・・。俺が見たとこ、絶対人魚がチラホラやってくる。」

「なるほど、流石はボス。考えることが違うや。で、どんな作戦?」

「バリー、お前たちはいつものように人魚を追う役だ。次に、ガブ。お前らは反対側に先回りだ。挟み撃ちにする。」

「へい!」

「あとはいつもどおり、俺の指示にしたがって人魚をやりゃいい。」

そんな話を聞きながら、ガブは小さな声で呟いた。


「なんとかメイだけでも逃がしてやらなきゃ・・」



メイが貝の岬にやってきた。ところが、あたりは深い霧に覆われていて、何も見えない。そこに、漁師たちもやってきた。

何も知らないメイは、霧の中をさまよって、なんとギロのすぐ近くに来てしまった。

「人間がいる。ガブかな?」

メイがじっと見つめると、それは片目のギロだった。

メイは慌てて岩影に隠れた。

「ちきしょう。風向きが悪くて匂いが分かりにくいが、まちがいなく人魚が近くにいるはずだ。」

ギロがどんどんメイに近づいてくる。

—どうしよう、見つかる—

メイがそう思ったとき、

「あ、ギロさん。何か見つけました?」

ガブの声が聞こえてきた。

「しっ、大きな声をだすんじゃねぇ。近くに人魚がいる。」

ギロがそういうと、

「あぁ、その人魚なら向こうの岩のほうに泳いで行きましたよ。それを知らせにきたんです。」

と、ガブは向こうの大きな岩を指していった。

「よし、俺が行く。お前はここで見張ってろ。」

「ラジャ。」

ギロが泳いでいくのを見届け、ガブはほっと胸を撫で下ろした。

ところがメイのほうをふりむくと、今度はロープを持ったバリーがいまにもメイに飛び掛かろうとしている。

振り向いたメイは、

「あっ!」

と尖った声をあげた後、怖さのあまり身動きがとれない。

美少年といえるバリーの目がギラリと光った。と、そのとき、バリーの足に突然海藻が絡み付いた。

「うわっ!」

バリーが溺れまいと必死にもがき、固結びされた海藻を取り払うと、

「ん?」

もう、メイの姿はなかった。ガブがメイの手を引いて、霧の中へ逃げ去ったからだ。




〜続く〜

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