二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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[ポケモン] ギンガの星は今日も輝く
日時: 2011/05/07 22:03
名前: ポテト ◆ymbs7pfL2w (ID: cZfgr/oz)

はじめまして、ポテトと申します

さておき。タイトルにも「ギンガ」と書きましたがこの作品、ギンガ団が主役です
ボスも幹部も個性が強いので、彼らを小説に書いてみたくなりました
しかし気分転換に書いているものなので、更新は遅めです
ではでは、よろしくお願いしますm(_ _)m



【 注意 】

1.更新は不定期です
2.基となるゲームは“プラチナ”です
3.主に出てくるキャラは、ボスと幹部達です
4.若干のキャラ崩壊、お許しください
5.バトルはほぼ皆無です(バトル好きの方すみませぬ)


【 目次 】

>>1   登場人物

第一章
>>2   1話
>>3   2話
>>4   3話
>>5   4話


Page:1



Re: [ポケモン] ギンガの星は今日も輝く ( No.1 )
日時: 2011/04/30 09:29
名前: ポテト ◆ymbs7pfL2w (ID: CR1FbmJC)

【 主な登場人物 】


【 アカギ 】

ギンガ団のボス。
シンオウの神話にのっとって、新世界を生み出そうとたくらんでいる男性
普段はとってもジェントルマン。しかし神話のことになると延々と独り言をつぶやき、周りが見えなくなる困ったさん

【 サターン 】

ギンガ団の幹部の一人。
幹部の中でも仕事ができる方で、ボスの右腕(お世話係)である青年
組織をまとめたり動かしたりツッコんだりと毎日忙しい。アカギの言動に悩む日々を送っている

【 マーズ 】

ギンガ団幹部の一人。
幹部の中では最年少で、気が強く明るい少女
アカギに何かとアプローチしているがほとんど眼中に置かれていない。そのことでサターンによく八つ当たりする

【 ジュピター 】

ギンガ団幹部の一人。
ミステリアスな雰囲気を醸し出す、クールビューティーのお姉さん
平凡を嫌う人。アカギの意向を無視して、ギンガ団の髪形とファッションを一から変えてしまったこともある

【 プルート 】

ギンガ団幹部の一人。
最近入団したばっかりの、自称天才科学者のおじいさん
金食い虫でアカギのことを呼び捨て。そのせいかマーズや部下からは人望が薄く、いつも怒りを買っている

Re: [ポケモン] ギンガの星は今日も輝く ( No.2 )
日時: 2011/04/30 17:50
名前: ポテト ◆ymbs7pfL2w (ID: 31yiqGJ0)

第一章 1話


 正午。春うららな今日この頃。
 極寒の地と言われるシンオウ地方にも、遅咲きの桜がようやくほころび始めていた。
 この時期は妙にうきうきしたり、落ち込んだり。桜の開花と共に人々の心は忙しなく駆り立てられる。

 トバリシティにて。
 コンクリートジャングルとも呼ばれる街の中を、頬を紅潮させ、緊張した面持ちの人々がぞろぞろと歩いている。
 まだ顔にあどけなさを残した若者達。そうした百人近くの者達が同じ方向を目指していく。
 歩みを進める先には、街の北部のとある施設が高台にそびえていた。
 海を背にし、街を見下ろすかのように建つそれの名を——トバリギンガビルと呼ぶ。

 四階建て地下付き。屋上には円形のドームがどんと構えられ、ドームの中央に“G”の文字が輝いている。
 広い敷地内には、見上げるほど巨大なアンテナが二つも鎮座していた。
 ここまでなら問題はない、普通の建物である。だがこのビルには意味不明なオプションが付いていた。

 左右の壁から、何か威嚇するように巨大なトゲが突き出している。古いパンクファッションみたいな。
 さらに……巨大な円形のカミソリとでも言うべきか。非常に表現しがたいが、そうしたものがビルに埋め込まれるように設置され、左側の壁から右側の壁へゆっくりと旋回している。ひたすらぐるぐるしているだけである。

 故にものすごく目立つ。
 目立つ割にはこのビル、立地目的が不明という謎めいた部分がある。立地目的どころか活動目的も不明。
 近隣の住民達からは不気味な印象しか持たれていない。悪目立ちともいう。
 そんなところへ何故これほど大勢の人が……?
 住民達の疑問をよそに、若者たちは続々と建物へと入っていくのであった——。

Re: [ポケモン] ギンガの星は今日も輝く ( No.3 )
日時: 2011/04/30 22:18
名前: ポテト ◆ymbs7pfL2w (ID: T3diiZRD)

第一章 2話


 ギンガ団——というものをご存じだろうか。

 シンオウ地方に存在する謎の集団。彼らはいわゆる……悪の組織であった。
 事実、輝かしい名とは裏腹に、彼らの言動は怪しいものばかりである。
 新しい宇宙を生み出すとか。夢の力を手に入れるとか。爆弾で吹き飛ばすとか。
 怪しい上に危ない集団。過激だしなにより思想が危ない。あまりお近づきにはなりたくない類。そこいらの悪の組織ですらちょっと身を引いてしまう。
 そしてそれ相応に、組織には個性的なメンバーが勢揃いしていた。

   ☆

「なんですか、これは」

 トバリギンガビル内部。最上階の団長室にて。
 ぞろぞろと吸い込まれるように入ってくる若者達を、ブラインドをわずかに開けて眺めやる人物がいる。
 ボブカットの青い髪の青年。凛とした目つきと声音で喋るのは、ギンガ団幹部の“サターン”だ。

「何って、ギンガ団に新たに入団する者達に決まっているだろう」

 当たり前じゃないかと言わんばかりに、サターンの問いに答えるのは、ギンガ団のボス“アカギ”である。
 ソファに座る彼は、痩けた頬に鋭い目つき。さらに無表情であるために、顔つきがいささか恐ろしい。
 睨みをきかすには便利な顔だが、アカギは時々この顔に不便に感じることがある。
 つい先日。トバリシティで迷子を見かけ、なんとはなしに話しかけてみた。だがもともと顔が怖いせいで、子供にものすごい泣かれてしまった。自分の方が泣けてきた。
 サターンは窓から目を離し、眉間に皺を寄せてボスに向き直る。

「こんなに来るとは聞いていませんよ」
「今年は大仕事になるから、団員の募集枠を広げただけだ。当初の二倍以上はいるはず」
「なんで自信満々なんですか。ワタシの相談なしに勝手に決めないでください」

 今日、トバリギンガビルでは新しい団員を迎えるため、入団式を執り行うことになっている。
 サターンの言うとおり、今年は約四十名ほどの採用を予定していたはずだった。だが後にアカギが「少し増やしたい」と言い出し、幹部達抜きで募集やら個人面接やらを行ったのである。
 その結果が総勢百名の新団員。頭が痛い。

「ともかく私は忙しい。あまり話しかけてくれるなよ」

 おもむろにソファから立ち上がるアカギ。部屋にある姿見を前にしながら、灰色がかった青い髪をなでつけた。今日も頭がつんつんしている。
 入団式なのでアカギは今日、団員達の前で挨拶を述べなければならない。身だしなみは大切である。
 だがサターンにとってアカギの身だしなみよりも、もっと大切なことがあった。

「そういえばアカギ様。こちらをご覧いただけましたか?」

 そう言って彼は団長机に置かれた、一つの冊子を手に取った。すっとアカギの前に差し出す。
 その冊子は、サターンが今日のためにわざわざ三徹までして書き上げた、アカギのスピーチ原稿であった。
 ボスは常日頃忙しい。部下があらかじめ原稿を用意しないといけないのである。
 しかし。差し出された冊子を、何故かアカギは不思議そうに眺めていた。なんとはなしに嫌な予感がする。
 そしてその嫌な予感は的中した。

「……その紙がどうかしたか?」
「?! ま……まさかお読みになっていないと?」
「そういえば何かしら書いてあるようだな」
「し、信じられない……」

 ぐらりと膝から崩れ、サターンは床に両手をついた。

「どうした。腹でも痛めたか」

 見当違いな心配をされるサターン。ただこの事態は腹を痛めかねないほどに深刻だった。一度も目を通していないどころか原稿の存在にすら気付いていないとはどういう事か。
 気を取り直し、サターンはすっくと立ち上がる。

「これはですね、ワタシが三徹して書き上げたスピーチ原稿です。昨日の朝にお渡ししたはずですが」
「ふむ、そうだったのか。だが私は低血圧だからな。朝は頭がはっきりしないから気付かなかったかもしれん」
「昼にもなれば嫌でもわかるでしょう」
「あまり気にしてなかった。たぶんオヤツの柿ピーを乗せるのに使ったと思う」
「なんですと!?」

 慌てて原稿をよく見てみる。裏側に、ピーナッツの油染みとかいっぱい付いていた。努力の末がなんちゅう扱い。

「読んでくださいっ。今すぐにっ」

 ズビッと原稿を突き出すサターン。
 こうなったら油染みだろうがなんだろうが読んでもらう。そうでもしてもらわなければ自分が報われない。
 だが肝心のボスはつれなかった。

「無理だ。今ちょうど髪形のセットに入ったから手が離せん」
「後でも出来るでしょうが!」
「ワックスがないな。そこの戸棚にあるかもしれん。取ってきてくれ」
「聞いてますか、人の話を!?」

 原稿よりもワックスが大事と言い張るボス。説得難しそう。サターンは再び頭を抱えるのであった。
 入団式まで、残り三十分——。

Re: [ポケモン] ギンガの星は今日も輝く ( No.4 )
日時: 2011/05/01 20:16
名前: ポテト ◆ymbs7pfL2w (ID: C5PYK3fB)

第一章 3話


「マーズ様、そろそろ会場に参りませんと……」
「静かに! 今大事なところなのよ!」

 言葉をはねつけるように二人の部下を叱咤したのは、最年少幹部の“マーズ”である。
 若くも幹部としてなかなかの実力を持ち、自分よりも年上の部下達をビシバシ指導している少女だ。
 ただ彼女、ちょっと困ったところがある。
 アカギのことになると周りが見えなくなるのだ。

 入団当初からマーズはアカギにぞっこんだった。新世界を創るという思想も気に入ったらしいが、アカギも気に入ったらしい。何がそんなにいいのか知らないが、人前で憚ることなく「アカギ様は俺の嫁」などと言っているくらいである。
 だが、まったく相手にされていない。
 アカギは別にマーズを嫌っているわけでも何でもないのだが、どうやらそういう恋慕を無意識に受け取らいない節がある。マーズ以外の部下にも告白だのなんだのされているらしいが全てスルー。
 多くの女性は泣く泣くあきらめていくのだが、マーズだけはいまだに挑戦している。告白回数と失恋回数は日に日に伸び、団で記録更新中である。

「ですが……」
「生クリームしぼってるところだから黙ってて!」

 トバリギンガビル内部。調理室にて。
 今日は突然「入団式で挨拶なさるアカギ様に甘いものでリラックスを」という理由で、彼女はケーキを作り始めてしまった。燃えるような赤いショートヘアをバンダナで締め、エプロンを身につけている。やる気満々。
 近づくと「邪魔」と怒られてしまうので、部下達は調理室には入れないでいる。仕方なくドア付近で遠巻きに見ていた。
 しかしそろそろ時間がやばい。このまま放っておくと確実に遅刻する。故にさっきから説得を試みているのだが……。

「しかしマーズ様。これ以上時間を延ばすと式に間に合わな——」
「ふふふ、ケーキのサプライズプレゼント……我ながら名案だわ。最高だわ。ロマンチックだわ……『アカギ様、はい、あーん』なあんてねええ! あーははははは!」

 マーズ様、妄想モードに突入。なんかぶつぶつ言い始めた。部下の言うことなどまったく聞いていない様子である。
 それにしても、女性がお菓子を作る姿はもっとかわいらしく上品なもののはず。マーズの場合は執念と邪恋が満ちあふれ、毒でも作っているのではないかとさえ思わせる。
 一心不乱に生クリームをしぼりながらぶつぶつ呟く後ろ姿。怖い。

「で……出来たああ! 何コレヤバすぎ! どうしよう!」

 ヤバいのはあなたのテンションと脳内です。
 ともあれようやく完成したか、と部下達は安堵した。これで自分達も式に行くことが出来る。まさか上司を放って己らだけで行くことはできない。

「ねえちょっと見てよ、見て! あたし完璧じゃね!? 写メ、写メ!」

 そんな部下達の気もつゆ知らず。大興奮のマーズは嬉しそうにケータイ取り出している。暢気な。
 しかしまあどんなかは気になるので見てみよう。白い生クリームが上手にデコレーションされて美味そうにも見え——。
 驚いた。

 顔だ。顔がある。ギンガ団のボス、アカギ様の顔が。
 生クリームとイチゴに囲まれるようにデザインされたそれは、一体何を用いて作ったのか。知りたくはないが、色といい顔つきといいそっくりそのままである。
 まるでそこに本人の顔を埋め込んだかのように精巧な作り。精巧すぎて食欲なくしそう。

「……それではマーズ様。急いで会場に……」
「さあ次はラッピングよ! どんな風にしようかしら?」

 部下を無視して早速ラッピングを始めるマーズ。まだやるのかよ。部下達は頭を抱えた。
 入団式まで、残り三十分——。

Re: [ポケモン] ギンガの星は今日も輝く ( No.5 )
日時: 2011/05/07 22:07
名前: ポテト ◆ymbs7pfL2w (ID: cZfgr/oz)

第一章 4話


「よくこんなところで仕事できるわね」

 トバリギンガビル。地下研究室にて。
 あらゆる所にコンピュータが設置されたその研究室は、ただでさえ光が届かぬ場所だというに薄暗かった。照明を全く点けておらず、コンピュータの発する電子光だけが頼りとなっている。それでもぼんやりとした明るさにしかなっていない。
 こんなところで——と、部屋のテーブルに腰掛ける女性、“ジュピター”は呆れたようにつぶやいた。
 その彼女のつぶやきに、背を向けていた人物は振り返る。

「サターンの奴に節電しろと言われたんじゃ。好きで暗くしとるわけじゃないわい」

 陰鬱そうな丸顔を肩越しに向ける老人。科学者の“プルート”である。
 彼は最近入団したばかりの新参者であるが、入団して直後、新米飛び越して幹部のポストにおさまっていた。
 どういう経緯があってそうなったか知らないが、科学者としてのプルートの力をアカギが買っているらしい。金に困っていたプルートは二つ返事でOKし、ほくほくとおいしい地位で入団が決まったのである。

 しかし組織での彼の立場は相当悪いものだった。
 何が悪いって、人間関係が非常に悪い。ボスのアカギを呼び捨てにした途端、幹部やら部下やらとにかく周囲から物凄い怒りを買ったのだ。特にマーズが凄まじい。爆弾を投げつけられた。新人いびりどころではない。殺意すら感じる。もっと老人をいたわってほしい。

「そう。それは大変」
「おい、人の研究室でケータイを充電するなっ」

 大変とか言いながら、しっかり充電コードをコンセントにつなぐジュピター。言葉と行動が伴っていない。

「式の準備は滞りなくて?」
「滞りじゃと? この天才科学者プルート様に抜かりなどないわ。これを見てみい」

 ナチュラルに話をそらされる自称天才科学者。とりあえず、式の準備とは言うまでもなく入団式のこと。
 これ、と言ってプルートはあるものを差し出す。細長いリモコンだ。番号の割り振ってあるボタンがたくさん付いている。

「こいつで舞台装置を動かすことができるでな。要望通り作ってやったわい」

 入団式はビル内のホールにて行われる。そのホールを造ったのはアカギなのだが、機械いじりの血が騒いでいろいろ設備を加えすぎた。おかげで団員達がまったく扱いきれていないという困った状況に。自業自得である。
 周囲から「なんとかして」と言われ、渋々作ったのがプルートの持つリモコンである。これひとつでみんな解決! やったね!
 ふと、プルートは顔をしかめる。

「それよりも気になることがあるんじゃが」
「なにかしら」

 幹部であるプルートを前にして、再びテーブルに腰掛け、足を組むジュピター。そうした態度が咎められないのは、彼女もまたギンガ団の幹部であるからだった。
 艶っぽい声音と仕草が定評の、ギンガ団一の美女と噂される彼女。普段から感情を露わにせず、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。変わり者の多いギンガ団の中でも、存外悪の組織らしいポジション。
 だがやはり彼女も変わっていた。

「お前さん、なにゆえそのような……奇抜な頭をしておる」

 彼女は深い紫の長髪をしており、昨年は、その髪をまっすぐにさらっとおろしたシンプルなものだったらしい。
 それが今年は何を思ったのか。というより何があったのか。
 プルートの気になること。それは巨大な団子を取り付けたような、ジュピターの髪形。
 アップにしたのが一つと、下側の両サイドに二つ、でかいお団子ヘアーが三つも並んでいる。パンクでも、モードでも、フェミニンでも何でもない。ジャンルに属さない斬新な髪形。あえて言うならエキセントリック。

「これ? オシャレでしょ」

 「ええとっても素敵」とかそんなコメント出ようはずもない。言葉を失う。同意を求めないでほしい。
 そういえば——と、プルートは風の噂で聞いたことを思い出した。ジュピターの団での呼称が「奇天烈美女」であることを。
 平凡を嫌うという彼女は、とかく奇抜なものにこだわりを持っているらしい。ギンガ団に入ったのも「退屈しなさそう」という理由。「もちろんアカギ様の思想も素晴らしいからよ」というついでっぽい言い訳は誰も聞いていない。

 手持ちポケモンにしてもそう。ジュピターが持つのは “スカタンク”というポケモンである。
 四つ足で歩くそれは紫と白の体毛をまとい、尾は長く大ぶりで背や頭にわたってずしりと乗せている。その尾にかぶさる頭から、ぎぬろと相手を睨め付けるような眼がのぞき、思わず萎縮してしまう。
 しかし人々が萎縮するのはその点だけではない。先程述べた尾だが、実はそこから臭い液体を飛ばして攻撃するらしい。それもなかなか凄まじいものだ。さらに鳴き声がやや屁の音に近いとのこと。これと付き合うにはそれなりの度胸がいりそうである。
 それを「面白いわ」と難なく受け入れ、今やエースポケモンとして愛用するジュピター。感服します。

「あら、もうこんな時間。スカタンク、出ておいで」

 唐突に、ジュピターはモンスターボールを取り出すと、そこから例のスカタンクを呼びだした。

「スカタンク、おやつの時間よ。ポフィン食べるでしょ?」
「おい。こんな場所にポケモンを出すでない。作業の邪魔じゃ」

 プルートがそう言うのも構わず、どこからかポフィンを取り出すジュピター。自分に都合の悪いことは耳に入らない。
 ところがここから悲劇は起こった。
 スカタンクは腹が空いていたのだろうか。ポフィンを見るやいなや飛びかかり、その弾みでジュピターの手からポフィンが飛んでしまった。ポフィンはゆっくりと弧を描いて……プルートの方へと向かっていく。

「あら」
「何っ……ぐへあっ!」

 当然の流れのように、ポフィンを追いかけたスカタンクはそのまま助走をつけてプルートにダイブ。
 それほど重くはないはずだが、ずどんとのしかかった衝撃は老体に辛い。五臓六腑が飛び出すかと思った。

 バキッ。

 今なにか、不吉な音がした。体に受けた衝撃はかなりのものだが、どうやら骨が折れたわけではない。では今のは?
 音のした方をそろーっと見てみる。そこにあったのは……完成間近であったはずの、リモコンの無残な姿。
 プルートは頭を抱えた。
 入団式まで、残り三十分——。


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