二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入!
- 日時: 2011/12/18 11:00
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
はじめまして。冒険者といいます。ここでは書くのが初めてです。
二次創作が好きなので、最近初めて遊んでいるととモノというゲームをオリジナルを踏まえて書きたいと思います。
これまで多くのキャラ、ありがとうございました!必ず出します!
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- Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.56 )
- 日時: 2011/12/20 15:33
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
第五話 追っ手
「ゆうの?」
「……」
「ゆうの、聞こえてる?」
「……」
「ゆうの危ない!」
「!?」
朝、起きると大きな木にもたれかかっていた筈のゆうのが移動していた。ぐったりとした顔で、木に手を掛けてよろよろと立ち上がろうとして失敗、顔面から地面に突っ込む。げふっ、という呻き声が聞こえた。
「ゆうの!?」
「……ショコラ?」
「そうだよ、私だよ!どうしたの?」
「……まずいわ。追われてるの」
声をようやく理解したのか、ゆうのは見当違いな方向をみていった。
「音で分かったけど、多分街道を追ってきてる。近いわ。12時の方向に複数、6時の方向に単体で何組か近付いてきてる。種族は……6時方向がフェルパー、クラッズが3人ずつ。12時のほうは、人間に、ディアボロスとセレスティア、それに……ああもう全種族ね。何人いんのよ……凄く多いわ」
「……」
ゆうのの魔力感知能力と唯一使える聴覚は凄まじく当たる。それだけ感覚が絞られているせいか、それはソナーのように発達していた。
「逃げるわよ、ショコラ!追いつかれれば、あたしだって戦うことになる」
「戦う……ってゆうのが!?ダメだよ、そんなこと!」
ゆうのをお姫様抱っこすると、背中のツバサを展開、飛翔して滑空するようにその場を飛び出した。
ごはっ、とゆうのが今朝一番の吐血をするが無視。今更だ。
街道を北側に疾走し始める。
「……魔力探知を元にして、魔法攻撃をするくらいならできるわ。あくまで固定砲台だけどね。回避能力もないし、ショコラが抱っこするの前提だけど」
「ふざけてる場合!?ってあわわっ!?」
「来たわね……」
目の前に武器をもった学生と思われる制服を着た少年少女たちが踊り出る。制服の色は紅かったり空色だったり小豆色だったりとさまざまだ。
「3学園混合か……丁度いいわ。ショコラ、そのまま突っ込んで。あたしが片付ける」
「へ?……!?」
ゆうののぐったりとした右手に、黒紫の炎が纏わりついていた。純粋な闇の魔力の解放して、炎の形にしている。凄い魔力だ。桁違い。ショコラの根本的な魔力とは違う。
ゆうのが頷いたことを確認すると、ショコラは速度を上げる。ボーリングの玉のように生徒達の群れに突っ込む。生徒たちは予想外の動きに右往左往していた。
「ダークフレイム」
呟くそうにいい、軽くゴミを払うように手を振った。それだけで目の前を紫の炎が飛んでいく。散り散りに逃げる生徒。紫の炎は街道の石畳を容赦なく破壊する。爆音。立ち昇る煙。気にせず突っ切る。
「跳んで」
「りょーかい!」
思い切りツバサを広げ、空を舞う。その光景は純白のツバサが朝の光を反射して、本物の天使が亡骸を天に召させるようだった——と後の生徒の一人が語った。
「逃げられた!?しかも協力者ありで!?」
「……誰だか知らないが、ゆうのに手を貸している者がいるらしい。セレスティアであること以外、不明だ」
「……ゆうの、本気で帰ってくるつもり、ないんだ」
「……だがあいつを見た人間によると、大分弱っているように見えたらしい。早く治療しないと、手遅れになる」
「分かってる!だけどゆうのが抵抗するんじゃ、下手したらその場でしぬよ!?」
「ゆうの……」
報告を受けた学園から遠く離れたとある宿の一室。簡素なベットに座って、杏樹、グレイ、レイスは話し合っていた。3人は制服のまま、苦い顔で俯いていた。
「……杏樹、グレイ、お前等はあいつの死にたい理由ってやつを、分からないのか?」
「わかんないよ……」
「私も……分かったら、苦労しない」
「そうか……悪い、不躾な質問をした」
それっきり、3人は何も言わなかった。
一番未だに困惑してるのは杏樹だった。何がしたいのか、ゆうのの心が理解できない。何で逃げるんだろう?何から逃げてるんだろう?
杏樹は願っていた。もう一度彼女の笑顔をみることを。
- Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.57 )
- 日時: 2011/12/20 16:45
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
新章なので、改めて彼女を紹介したいと思います。
名前/読み ゆうの
性別 ♀
種族 人間
年齢 15
職業 ???(分類不明)
概要 常に闇の魔力に体を蝕まれた結果、視覚を失い最早戦うだけの力は一切残っていない。筈なのだが、代わりなのか魔法感知能力が跳ね上がり、失った視覚の代用として使用、更に凶悪な能力と化している。ただ吐血を常に続けるため接近戦等は一切出来ない。
戦い方 ショコラに抱っこしてもらっての魔法砲撃。ただし単発でしか出来ないが破壊力は前より桁違いにあがっており、魔力解放すればショコラ以外の全てに対する障壁と化す。
武器 魔法砲撃
性格 死にたいという長年心のそこにあった願いを表に出され、そのためならかつての仲間たちですら攻撃の対象となる。悲しみより憎しみの対象に、という考えもある。ショコラや死地を求める旅の間に会った仲間には違う意味でこころを開いているが、杏樹やグレイに対する罪悪感が残っているため、戦うときはかなり憎まれるように容赦なくなっている。
容姿 真紅の目(戦っている状態と同じ煉獄状態)、真紅の長い髪の毛(暴走状態のためバチバチと微弱な魔力の電気をまとい始めている)、やせ細ったからだ
一人称、三人称「あたし」「あんたたち」
その他 死ぬために学園を逃げ出した後のゆうの。もう体は殆どやきつくされ、ショコラの介護無しには動けないほど衰弱している。常に吐血を続け、移動は専らショコラの役目。
自分を連れ戻そうとしている生徒に攻撃し、説得しようものなら殺すつもりで攻撃してくる。杏樹やグレイ、レイスに対して少なからず罪悪感があるがその反面、憎まれたいとも考え始めているのか激しく攻撃する。その命はもう長くない。
サンプルボイス
「杏……樹……お願い、忘れて。あたしのことは……嘘は言ってないけど……あたしだって考えは変わるわ……」
「グレイ……殺すなら、殺してくれていいわ。さぁ」
「レイス、あんときみたいに助けてよ。あたしをリーダーって認めてくれるんなら。簡単よ、暗殺するみたいに首をかっ裂くだけ。ね?」
「レオ……久々ね。随分、強くなったのね?さすが未来の英雄……」
「死にたい……早く消えたいな」
- Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.58 )
- 日時: 2011/12/21 14:15
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
第六話 大きな街
「はぁ……はぁ……」
「何とか撒いたわね」
「あっぶなかった〜」
「大丈夫よ、追撃はないみたい。あたしの感じる範囲では」
「そっか……」
二人は正午くらいまでノンストップで逃げ続けた。ショコラの体力も限界に達したため、大陸街道を抜けたところにある割と大きめな街にたどり着き、人混みに紛れ込んだ。その頃にはゆうのの体も手を引いてなら歩ける程度に回復と言うか戻っていた。
「……なんでバレたのかな」
「あたしの魔力がまた探知機に引っかかるレベルまで増幅したんでしょ。あるいは吐血の後でも追ってきたか。まさかと思うけどあたしの血調べてそれで吐血のあとを追跡してきたとかもありえる」
「うへー……どうしよう?」
「暫く何処かに潜伏しましょ。そしてほとぼりが冷めた頃にまた逃げる。ショコラだっていい加減お風呂入りたいでしょ」
「そりゃそうだけどー」
ゆうのはふらふらと手を引かれ歩きながら小声でショコラに言った。
魔力は日に日に増大し、比例して体力は低下していく。生命力を犠牲にして魔力に加速をかけているみたいだ、とショコラは思う。
ゆうのの精神が限界を突き抜けるのが先か、生命力がゼロになって終わるのが先か。ショコラには分からない。
どの道、ゆうのには明るい未来などありえないことだけはこの一ヶ月で分かった。
それに彼女はなんだかんだでショコラのことも常に気に掛けている。ショコラは笑いながら翼をたたみ込み、ゆっくりと手を引いた。握られるその手の握力が徐々に弱まっていることをショコラは気付いている。だが口には決して出さない。約束だから。それを墓場まで持っていくゆうのの決意を汚したりしないと心に誓ったから。
「さて、宿でも探して、そこでごろごろしてようか」
「そうね……」
今朝はまだ数回しか吐血していない。普通なら数回でも大騒ぎだがショコラもいい加減慣れたのでむしろ調子がいいのかと思ってしまう。
わざと明るく言うとゆうのも微笑を浮かべて答えた。初期の強気だった、あの頃のゆうのとは思えないほど儚い笑顔だった。
「ふに〜っ……生き返るねゆうの」
「……」(ぶくぶくぶく)
「ゆうの?ゆうの!?ちょっ、沈んじゃダメ死ぬよ!ゆうの!」
「……」(ぶくぶくぶくぶく……)
巨大なお風呂に浸かって手足を伸ばし、極楽の声をあげるショコラとは対象的に、ゆうのはお風呂の縁にしがみ付いて入っていたが脱力したのか、そのまま湯船に沈没していた。
気泡だけが悲しく浮かんでいる。
「ゆうのぉー!?」
「ぶくぶくぶく」
「何言ってるかわかんないよ!」
「ぶくぶくぶくぶく」
「ちょっ、沈んでる!髪の毛怖い紅い海草みたいに広がって怖いってば!」
「ぶくぶぅ?」
「しかも面積広!?」
慌てて湯船に両手を突っ込みゆうのを引っ張り上げた。
「ぶはっ」
「何してるのゆうの!」
「力抜けちゃった……」
のぼせたように顔を真っ赤にして前髪からぽたぽたと雫がたれる。
ざばざばとお湯を掻き分け縁まで引き摺るように運んだ。
ショコラの心配を他所に彼女は微笑む。
「たまには広い温泉もありね。気持ちいいわ」
「湯船に沈没するどこが気持ちいいのか私にはわかんないよっ」
「仕方ないでしょ。腰が抜けてるんだから」
壁に寄り掛かるゆうのは紅く煌く瞳でショコラのいないほうを睨む。
やはり、もうショコラの姿は見えていないのだ。とショコラは改めて実感。だがすぐにゆうのは向きを変える。
「ああ、そこだったんだ。ごめんごめん」
「視えるの?」
「魔力はね」
答えになってない答えを返すとゆうのは軽く体を伸ばす。
ショコラは実体が見えてないのをいいことにゆうのの体を凝視する。
病的にまで体が細く、白い。この一ヶ月、ずっと抱っこし続けているがどんどん軽くなっている。今では羽のようにもう重さだって殆ど感じない。魔力的な意味ではどんどん重くなっているが……。
元々小柄でスレンダーというより幼児体系みたいな体つきだったが、同見ても同年代には見えない。子供だ。
「で、あたしが幼児体系と言いたいわけね。ショコラ、殺すわよあんた」
ギロッと、手負いの獣のような妙な迫力を醸し出すゆうのに、ざぶんと湯船に入って視線を避けるショコラ。
「気にしてんのよこれでも。どーせあたしは幼児体系よ、しかも魔力に栄養行ってましたよどーせ」
ぷいっ、とそっぽを向くゆうのが可愛かった。
- Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.59 )
- 日時: 2011/12/23 13:46
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
第七話 面白い二人
二人は入浴後、部屋に戻って遅い夕食にしていた。
基本冒険者向けの宿は食事はつかない。というのも、冒険者は基本一箇所に長居しない。しかも大体来る時間帯は夜遅くか朝早く。だから食事を出す前にさっさと行ってしまうのだ。
なので今食べている食事は自分たちが外で購入してきたものを食べていた。この宿の浴衣は大きく、ショコラとゆうののサイズでだぼだぼだった。二人の服はいま部屋備え付けの洗濯機で洗われている。
「はい、ゆうのー。口あーんしてー」
「……あ〜ん。あむっ」
「……くぁわぁいぃ〜!!」
「むぐっ、むぐっ!?」
ショコラに食事の手伝いをしてもらっていた。視覚を失っていらい、彼女は食事すら一人で取る事を困難としていた。もう失明した、と言っても過言ではないだろう。相変わらず瞳の紅は鮮明に輝いているが、輝いているだけで光を捉えてはいない。
日に日にショコラの態度もおかしい方向にいっているとゆうのは思う。何かしら助けてもらうたびに何故か「くぁわぁぃぃ〜!」と言われて頭を撫でられる。屈辱だった。反論するにも今は口の中にプリンは入っていて無理。悔しいが撫でられるのを我慢することにする。
「……んぐっ。だ、誰が可愛いですって!?」
「あぁもぅ〜!ぷりちーすぎるんだよぉ!」
「や、やめて何するのショコラやめてってばそこは触るな変なとこ触るなやめてやめてやめれー!!!」
遂には抱きつかれた。抵抗するゆうの、だが弱った体で抵抗などできる筈もなく、なすがまま抱きつかれ振り回されぐったりと力尽きる。
「はぁはぁ……はっ!?」
「……」
「ゆ、ゆうの!?」
「……死にたい。いっそ殺してよショコラ。いいえ、もうあたしに触らないで触れないでお願いだから」
「えー!?何でー!?」
「あたしはあんたの妹か何か!?」
「くぁぁぁわぁぁ——」
「え、嘘やめてそんなキラキラした目で見ないで何する気よやめてやめてやめ——」
「いぃぃぃ〜!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
悲惨なゆうのの悲鳴は夜の宿に響いた。すぐに別の歓喜の声で掻き消されたが。
————♪
「……」
ショコラが夕飯のついでに、と宿に置いてあったハーモニカを吹いてくれた。すごく上手い。しかも綺麗だ。ゆうのはうつらうつらとし始めたが先ほどの悲劇(という名のショコラにとってはご褒美)を思い出し慌てて意識をはっきりさせる。油断して寝てしまったら今度こそ貞操の危機になると確信している。
「……」
この見えない瞳に映るのは魔力の出す光という根本的な色だけだ。正確に言えば色のついた蛍光灯の弱い光を、暗闇の中で遠目に見ているような感じ。
だから実体のあるものは見えないし、近くで誰がいても気付かない。幸いまだ聴力が残っているので何とか立つこと、手を引いてもらって歩くことは出来る。でもいずれはそれすら出来なくなるだろう。音のない世界、実体の見えない世界であたしは生きていくと思うともっと死にたくなる。あたしはそこまで強くない。そんな絶望より深い闇の中で生きていけるほど心は硬くない。
「……」
壁に寄り掛かりながら、自分の感覚の未来を考える。
触覚。いまだ収まらぬ痛みを感じることを考えるとなくなりはしない。出来れば一番最初に無くなって欲しかった。特に痛覚。
味覚。もう死んでいる。先ほどの食事も味のあの字すら感じていなかった。冷たい何かが口の中に入っていった感じだ。ただ血の味を感じなくなったのは正直助かった。
嗅覚。大丈夫。これは無くならないと思う。味覚が死んでも、この鼻はいまだダメージがないのだ。楽観的に見て多分大丈夫。
聴覚。時々何も聞こえなくなるが、まだ大丈夫。しばらくはなくなったりはしない、と思う。これがなくなったらあたしは終わりだ。
視覚。消失。
第六感。魔力感知が異常に強くなってる。これが現在の視覚の代わり。代用する限り襲われることはないだろう。今まではどの種族までは分からなかったが今では種族、方向、距離までかなり正確に掴めるようになった。
これがある限り。あたしは逃げ続けることが出来る。
- Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.60 )
- 日時: 2011/12/23 16:41
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
番外話 一足早いクリスマス!
ゆうのが今まで歩んできた物語は、かなり痛みの伴った物語であったと、一人の物書きとして僕は思った。彼女のその味わった絶望は、僕程度が表せる筈もなく、彼女と彼女の仲間たちは今日も痛みや苦しみ、悲しみに満ちている物語を歩んでいるのだろう。
そして、あっちの世界で時間は進む。
こっちの世界での時間はもっと早く進む。
今は、彼女たちに物書きとして、そして一人の作者として、プレゼントを上げたいと思う。
聖なる夜が近いから、僕に出来る精一杯の贈り物。ゆうの、杏樹、グレイ、レイス、ショコラ。まだ出てきていないキャラクターたち。本家のキャラたち全てに送る、僕からのメリークリスマス!!
「ゆうの!乾杯しよう!!」
「ええ!!」
「あー!酷いよゆうの!わたし置いてけぼり!?」
「そうだよそうだよ!!」
とある小説、舞台裏。今夜は聖なる夜だ。
登場人物たちが飲めや謳えやの大騒ぎ。講堂がパーティー会場になって、年齢も性別も種族も関係なく、みなが楽しんでいる。
そんな中、一際騒がしい場所があった。
真紅のドレス、真紅の髪飾りを可愛らしいゆうのの姿だった。
その周りに女の子たちが集まっている。セレスティア、フェアリー。
黒い和服に、黒いかんざしのグレイ、精一杯のおしゃれだ。
杏樹もショコラも、着飾ってかなり愛らしい容姿になっている。元々可愛らしいのが際立ったというべきか。
みな、嬉しそうに微笑み、手にはワイングラス。なみなみとシャンパンが注がれていた。
ここには種族差別も、優劣差別もない。みなが楽しみ、笑っている。
「かんぱーい!」
からんっ!とグラスがぶつかりあう。
「ショコラ!抱きつかないで食べられないでしょ!」
「えー!いいじゃないの減るもんじゃないし」
「ショコラずるいわよ!私だっていっしょに騒ぎたいんだから!」
「はむっ……はむッ……」
ゆうの、ショコラと杏樹が楽しそうにじゃれあい、グレイは七面鳥にかじりつく。
「しっかし、あいつも何考えてんのかな?」
「さぁ……?」
「いいんじゃないかな?折角のプレゼントだよ、楽しもうよ」
ゆうのの言うあいつ、とは一体誰のことやら?
「あんたよ!」
おおっと、これはいけない。
「なんなのよこれは!確かに嬉しいけど、何でいきなりお祭り騒ぎなわけ!」
まぁまぁ、ちなみにゆうの。
「何よ?」
俺の声は君にしか聞こえてないから気をつけてね?
「は?」
ゆうのが横を向くと二人がフリーズしていた。
「あの人、いるの?」
「見えないけど……?」
「あ、いや……」
二人とも。と俺はショコラと杏樹に声をかける。
「わっ!?」
「何?!」
今は聞こえるけど、これは一足早い俺からのプレゼントだよ。本編とはこの世界は違う。聖なる夜のために俺が作った世界だよ。現実ではあと二日足らずで一番盛り上がる時間になる。俺はその時これないから、こうしてちょっと早く贈り物を届けたと言うわけ。
「へぇ」
「そうなんだ」
うん。ここでは互いの過去のことは一切ない。だから今という時間を純粋に楽しんで欲しい。ついでに、本編のほうも、明るい未来を約束すると言うプレゼントもありだ。
「ネタバレするな!」
ゆうの、叫ばないでくれ。大丈夫。今は見えるその瞳も、すぐに見えなくなるさ。
「……そういえばなんかマトモに物体を視認できるのよね此処着てから」
そういうこと。さぁ、3人とも。グレイが全部の料理を食い尽くす前に、せめて甘いスイーツだけでも確保しておくことをオススメするよ。
「え?あ、グレイ!それあたしのチョコケーキ!喰うな!」
「むぐっ!?」
振り返る三人、その先でグレイは口の周りをチョコだらけにしながら驚きの声をあげた。
「あ、グレイ!私のケーキ食べたわね!?」
「私のもないよ!」
慌てる杏樹、ショコラ。グレイはその場を脱兎の如く逃げ出す。
「あ、こら!」
人混みの中にすぐ消えてしまった。
「……二人とも、移動しましょ」
「「うん……」」
二人は隔離しておいたスイーツを食われてすごく残念そう。
ゆうの、杏樹、ショコラ、食い逃げ犯。
————メリークリスマス!
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