二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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うたうたいのうた
日時: 2012/02/03 16:32
名前: ぷに十。 (ID: .ys/4ZzH)

はじめまして、ぷに十。です!
主に私は、ボーカロイド曲をベースに小説を書いていますー!

初投稿作品は、「うたうたいのうた 初音ミク」より、
『うたうたいのうた』を書かせていただきます〜

途中で挫折する事がありますのでご注意ください!(笑)
よければみなさん聴いてみて下さいっ!


ぷに十。

Page:1



Re: うたうたいのうた ( No.1 )
日時: 2012/02/03 17:27
名前: ぷに十。 (ID: .ys/4ZzH)

第一話:6月3日 雨




・・・土砂降りの雨だというのに、人はざわざわと街を賑わせていた。僕はそんな冷たい雨に打たれながら、人が通り過ぎていくのを箱の中で見つめていた。・・・もう長い事だった。と、目の前に二本の脚が立つ。
「こんなところに・・・・・・冷えちゃったね。よしよし。」
その少女は、そっと僕を抱えあげると、優しく撫でた。きれいな緑髪ショートカットの女の子。少女は僕を抱きながら、雨の中を家路についた。

「ふぅ・・・すぐにキレイにしてあげるね。」
暖かく、紙や楽器が散乱している家。ここが彼女の家のようだった。どうやら彼女はうたうたいのようだ。散乱している紙は、すべて書きかけの五線紙・・・、作詞作曲も手がけているのかな。
彼女は奥からタオルを持ってくると、僕の冷え切った体を拭いてくれた。ふかふかで、いいにおい・・・。久しぶりの感覚だった。優しい笑顔、温かい居場所、・・・そして歌声。僕はうまれた時から歌と共に過ごしてきた。なぜなら、僕はうたうたいのために生を受けた、『うたうたいの猫』だから。そして僕は決めたんだ。・・・彼女と共にいようと。共に唄おうと。それが『うたうたいの猫』の宿命で、運命だから。
僕はその気持ちが伝えたくて。彼女に唄いかけた。それを聴いて、彼女は少し驚いていたけど、すぐにはにかんでくれた。
「あなたも唄いたいの?」
僕を撫でながら、彼女は笑った。それに言葉で応えることはできないなりに、そうだ、と応えた。それが彼女に伝わったかはわからないけど・・・彼女は言ってくれた。
「私と一緒に、歌を唄わない?きっと素敵になるわ!」
彼女は僕を抱きあげて、笑いかけた。
「一緒に、うたうたいになろう!『うたうたいの猫』さん!」
冷たい雨が降る日、温かい居場所を見つけた。捨てられて3週間経った日のことだった—————。




つづき

Re: うたうたいのうた ( No.2 )
日時: 2012/04/08 12:17
名前: ぷに十。 (ID: zKALihrN)

第二話:6月4日 晴れ



「ラース!唄いに行くよっ!」
新たな寝床で寝ていると、彼女は元気に僕の元へやってきた。どうやら「ラース」というのは僕の名前らしい。いつの間につけたのかはわからないけど。僕は抱えられて街へ出た。今まで見たくらい場所でも、人々の姿を路地裏から見ているだけではない。抱えられてみる街の景色は、見たこともないようなエキゾチックな世界だった。空は青く、光に満ち溢れている、楽しそうな風景。不意に流れる町並みが止まる。・・・そうか、この広場で唄うんだ・・・!

彼女はおもむろに僕を見つめ、「いくよ」と囁いた。そして、彼女の口から歌がこぼれだす。まるで弾むような、明るいロンドだった。それを耳にした者は、次々と尋おばへ集い、聴き入っていく。
「リロワだ、やっぱりいいなぁ」
「明るい曲調がいいわよね、リロワの歌は。」
リロワ・シナエザー。それが彼女の名。ここらへんでは有名なうたうたいらしい。僕はあっという間に彼女の歌に引き込まれていった。まるでオルゴールのように音を紡いでいく。そんな彼女の歌声は、ゆっくりと終わりを迎えた。割れんばかりの拍手の中、ぺこっとおじぎをした。
そして、僕の名を挙げた。
「昨日、雨の中この子を拾いました。今日から私は、彼ラースと共に唄います!」
彼女も僕をパートナーと認めてくれたようだった。それがなんだか無性に嬉しくて。僕は人々に唄いかけたんだ。その音でみんなの顔が明るくなったのがまた嬉しかった。 すると、民衆の中の一人が呟いた。
「・・・ほう、『うたうたいの猫』か、いいものを拾ったな」
そう、僕は『うたうたいの猫』。僕の生の理由を知るものも少なくなかった。どうやらこの街は、うたうたいに協力的な町らしい。
『うたうたいの猫』の紋章は、僕の体に刻み込まれている。
「リロワ頑張れ〜!」
子供たちの声に、唄ってる最中にっ、と拳骨をくれる母親。そんな微笑ましい光景に、リロワは手を振って応えた。
「ラースよろしくねー!!」
懲りない子だねッ、とまたひっぱたかれている。そうしてまでも、僕の名を呼んでくれるのは、とても嬉しい事だった。僕はそれに歌で応えた。僕には唄うことしかできないから。せめて歌でそれが伝えらたなら。僕はとても幸せだから——————。
僕は、いや僕たちは。暗くなるまで唄い続けた。幸せを皆に分けたくて。いつまでも、ずっと唄っていた。



つづく

Re: うたうたいのうた ( No.3 )
日時: 2012/02/08 12:25
名前: ぷに十。 (ID: eK4vc3Ov)

第三話:6月28日 晴れ



「ライブ・・・ですか!?」
今日はなんだか空気が違う。きっと家に違う人がいるからだ。
「えぇ。街の人から要請があったんですが、路上や広場などではなく、もっとちゃんとしたホールなどで演奏すべきだと。」
メガネをかけ、きちっとしたスーツ姿の女の人だ。はじめてみた人だけど・・・ご主人の知り合いかな?その人は難しい言葉を並べてご主人と話している。
「ホントですか!?私がライブ・・・っ」
ご主人は嬉しそうに僕を抱えあげた。ライブ、ライブだよ!ライブができるよ!と笑いながら。僕にはよくわからなかったけれど、いいことがあったみたい。
メガネの人が帰った後、ご主人は嬉しそうに僕に話しかけた。
「ラース、あのね。私たち、もっと大勢の人に私たちの歌を聴いてもらえるようになるんだよ・・・・・!」
もっと、大勢の人に・・・!?
広場で唄ったときでも、30人くらいいた。それよりもっと大勢なんてすごい!
「どうしよう、こんなこと初めてだよっ!」
ご主人はとても嬉しさと不安が入り混じったような表情で僕を見つめる。そんなご主人を見ていると僕も自然に嬉しくなってしまう。
「ラース、頑張ろーねっ!」
そう小さく意気込んで見せると、またいつもの作詞作曲にとりかかっていった。
ライブは、1ヵ月後に決まった———。





つづく

Re: うたうたいのうた ( No.4 )
日時: 2012/02/19 11:12
名前: ぷに十。 (ID: 0N93rCdO)

第四話:7月10日 晴れのち雨




ご主人は、気分転換をかねて、買い物に出ようと言い出した。僕たちは街へ出て、パン屋さんや服屋さんを転々としていたが、イザベルのブティックの前で声をかけられた。
「リロワ!ラース!」
誰かと思えば、広場で歌ったときの子供たちだ。親同士も仲良しなようで、3人一緒に買い物に来たようだ。
「ライブの練習はどう?進んだ?」
ご主人のライブ情報は、その日のうちに街中を駆け巡り、今では誰もが応援してくれている。
「頑張ってね!僕ら応援してるっ!」
「あたしも応援してるよ!リロワおねーちゃん頑張れー!」
そう身振り手振りで応援したあと、あんたたち勝手に離れるんじゃないわよー!!という母親の声を聞いて、慌てて母親の元に戻っていった。
「・・・応援してくれる人がいるって、嬉しいね・・・。」
ご主人は、そうつぶやいて遠くを見つめた。・・・?遠くに何か、面白いものでもあるのかな?
すると突然、ご主人は思いついたように言った。
「そうだ!海見ようラース!」
そうか、ここは海辺の街・・・「シー・ハーツ」じゃないか・・・!


「・・・・・きれいだね・・・・・」
ご主人は、どこまでも続く水平線に視線を置いたまま、動かさずに言った。その瞳には、瞳の色よりも青い「海」が映り込んでいて、・・・とても幻想的。
「ね、ラース。海ってね、色が変わるんだよ。」
色が・・・?海はずっと青いものだと思っていたけど。色が変わるなんてすごい・・・ただの水溜りじゃないんだ!
「ここね、キグネーラ海って言うんだけど・・・言い伝えっていうか、伝説があるの。」
言い伝え?伝説?そんなの初耳だ。
「この海はね、人の心の色を映すんだって。・・・よくここで海の色を見てたよ。」
ご主人は、少し寂しそうに笑うと空を見上げた。
「・・・空が・・・・青い」
ポツリとつぶやくと、彼女は話しはじめた。
ご主人が6歳の頃に、両親がこの海で死んでしまったこと。
何度もこの海で、両親のあとを追おうとしたこと。
一人のうたうたいのおかげで、今の自分があること———。
ご主人は寂しそうに、それでもしっかりと語ってくれた。
「・・・・・だから私は、歌を唄い続けたい・・・・・。」
一瞬の沈黙の後、ご主人は僕を抱えて唄い始めた。
『メロディーを奏でてく まだ見ぬ誰かのために 届かないと知っていても————』
その明るくも切ないメロディーに、僕は音色を重ねた。
———水平線の向こうに、大きな入道雲が見えた。・・・一降りきそうだ。
「・・・・・・・・・・帰ろっか、歌の練習もしたいもんね!」
そう言うと、僕たちは家路についた。・・・・僕が支えてあげたい。

ご主人がライブなんて、・・・少し不安だなぁ・・・。




つづく


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