二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 涼宮ハルヒの嫉妬 ( No.5 )
- 日時: 2009/12/10 23:31
- 名前: song (ID: p17IpJNR)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.php?mode=view&no=11516
「いらっしゃい。どうぞごゆっくり」
先ほどの母親だろうか。ハルヒにかなり似ている。
「はい。ありがとうございます……」
しかし容姿はさることながら性格の程は天と地のようだ。
「ほら、こっちよ! 」
「あぁ……」
ハルヒは奥の部屋からひょこっと顔を出した。その表情にいつもと変わりはない。
ハルヒについて行くと恐らく自分の部屋であろう、「HARUHI」と書かれたドアを開く。
「入って」
表情は変わっていないが、いつもと雰囲気が違うのは気のせいだろうか。
「…………」
ハルヒのことだからとんでもない魔窟のような部屋だと思っていたのだが……
「案外普通だな」
思わず俺は、間の抜けた反応をしてしまった。
「何言ってるのよ……部屋の隅に椅子あるからそれに座って」
「あぁ」
俺は言われた通りに椅子に座り、ハルヒは自分のベットに腰掛けた。
すると、ハルヒは突然こんな話を持ちかける。
「キョン……私さぁ、最近思うんだけど『友達と恋人の境界線』って何だと思う? 」
突然何を言い出すのだ?
「……友達と恋人の境界線?」
俺は何を言っていいのか分からず、ただ、ハルヒの言うことを繰り返した。
「そう。私思うんだけど、好意を持つってだけじゃ恋人同士とはならないじゃない? でも、持つんじゃなくて伝えるのなら、恋人になれるかもしれない。だけど『持つ』と『伝える』ってそんなに違うものなのかしら……」
ハルヒらしくない恋模様の話は俺に何かを感じさせた。
「……——俺はさ、恋愛経験なんて無いに等しいし、付き合ったことなんてそれこそ無いけど……誰かが俺に好意を寄せるとして、それが分かるとしたらやっぱ『伝える』しかねぇんじゃねえかな」
俺は、取り合えずハルヒの応答に答えた。
「……そうよね」
俺にはハルヒが酷く落ち込んでいるように見える。そこで俺はこう切り出す。
「……でもよ。恋人じゃないにせよ、ずっと一緒に行動してきて、そいつの気持ちを考えずに暴言吐いちまったヤツの気持ちも『伝える』しかねぇんだよな」
俺はとうとう踏み切った。
「……え? 」
あどけない表情がハルヒを包んだ。そして、
「ハルヒ……本当にすまん!!」
俺は椅子から降りハルヒに謝った。
「キョン……!」
ハルヒが動揺しているのがすぐにわかった。
「あの後、すぐに思い知らされた。俺とお前は『関係ない』なんて軽く言えた仲じゃない」
正確には朝比奈さんに悟らされたわけだが、そこは省いた。
「……弁明ってわけ? 」
「あぁ」
ハルヒの軽く赤みがかった頬を見て、俺は順応して言う。そして、それに対するハルヒの反応は……——
「しょうがないわねぇ! 許してあげるわ! 」
甲高いハルヒの声が部屋いっぱいに響いた。
俺が頭を上げたとき、少しハルヒの瞳が潤んでいるように見えたのは錯覚ではないだろう。
「ハルヒ……!」
喜びのため息と共に心の雲が一気に晴れた気がした。
かくして、一連の喧嘩は俺の過運動というリスクのみを負い解決した。はずだが……——
「しかーし! 」
ハルヒは元の元気を取り戻したのだが、先ほどの言葉を前言撤回するように俺に人差し指を向けた。
「……? 」
だがさっきのような不安はもう感じられない。恐らくはいつもの無理難題を俺に強いようとしているのだ。
「ただ許すだけじゃ面白みがないと思わない……? 」
嫌な予感がガンガンする。今までの経験上このシュチューションでろくな目に遭っていない。
「何をするきだ……? 」
取り合えず、聞いては見た。
「何怯えてんのよ! 別にアンタは何もしなくていいの! 」
一体何を……?
「デコピンよ! 」
「はぁ? 」
俺は予想だにしない始末に驚いた。
「それでチャラでいいわ! ほら、するの?しないの? 」
まぁそれでいいなら、構わないが。
「……さっさとやれ! 」
俺は立ち上がり、ぶっきら棒に言った。
「ちょっとやり辛いからかがんで! 」
もはや恐喝に近い。軽く恐怖を覚える。
「おう……」
俺は言われたとおりかがんでハルヒの手が近づくのを目を瞑って感じた。その時……——
キュッキュッ!
俺の額にマジックか何かで文字を書かれてるように思える。
「ハルヒ……お前何してる? 」
俺は目を瞑ったまま、ハルヒに問うた。
「細かい事気にしない!ほらいくわよ……そりゃッ! 」
ビシッ!
「痛ってぇー !!! 」
本気でやりやがった。しかもメチャクチャ痛い。
「これで許す! 」
ハルヒも少し痛かったのか、自分の指を気にしつつ、俺の額もなでた。
「ところで、お前おれのデコに何書いたんだ……?」
おもむろに俺は部屋の鏡を覗き込もうとした。が、しかし……
「だ、だめーッ !!! 」
勢いよく、ハルヒは俺と鏡台の間に入る。
「何なんだ一体? 」
今度は顔を真っ赤にしてそこに立つハルヒを見て俺はしぶしぶ後ろへ下がった。
「家に帰るまで絶対に見ちゃダメよ! いい?分かった? 」
ハルヒは俺の耳を引っ張り、大声で言う。
「うおぉ……耳がガンガンする」
本当に痛かった。が、それ以上に俺の心は何かに満たされ、いつもなら怒るところを笑って過ごせた。ハルヒに対する悲愴感……——これは今後一切抱きたくない。