二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 悪ノ召使 勝手に妄想 ( No.9 )
日時: 2010/02/13 20:43
名前: リリアン (ID: glXVlHlM)


 レンは、荒々しく温室のドアを開いた。
 ミクの姿は無い。あるのは、一面に咲く花だけ。そこからレンは、大輪の薔薇を採った。
 奥に進むと、さっきのショップが空いていた。ミクの歌声も聞こえた。

「〜♪〜♪・・・」

 レンは、ソードをグッと握り締め、ショップに入った。ミクは、その花たちに、水を上げていた。

「あら、レン君。何か忘れ物?」
「・・・ミクさん。」

 これから殺される。そんな事もしらずに、微笑むミクが、レンには辛かった。
 レンは、持って来た薔薇を、近くの花瓶に刺した。そして、今にも泣きそうな声で言う。

「周りの哀れな雑草は、王女の養分となる・・・。」
「何言ってるの?レン君。」
「邪魔な雑草は始末しろとの命令だ。僕の愛する王女様から。」
「えっ・・・。」

 レンは、ソードを向ける。ミクは、凍ったようにそこに立っていた。

「君は、雑草だ。だから、僕はその雑草を消さなきゃいけない。だけど・・僕は、本当に君が好きだった。たとえ、雑草だったとしても、このタンポポのようにけなげな美しさを持った君が。」
「レン君・・・・?」
「ごめんなさい。ミクさん。」

 肉が切れる音と共に、その温室が薔薇色に染まった。レンは、逃げ出すようにその場を去った。
 温室の外は、火の海だった。だが、レンの進んでいった道だけは、火がついていなかった。きっと、王女が逃げ道を作れと命令したのだろう。
 道をとぼとぼと歩く。
 下は見たくない。見るたびに恋した人を殺ったソードが目にはいる。その血も。
 あの時、王女を止められていればよかったのに。いくら嘆いても遅いのに、そうしか思えなかった。
 それ以前に、どうして、王女と自分が、一緒に入れなかったのか。一緒にすごせていれば、こんな事にはならなかった。そんな気がしたのだ。

「リン・・・とっても可愛くて、無邪気な君なのに・・・君の気持ち読めなくて・・・君にはとげが多すぎて・・・僕には触れないよ・・・。」

 城の大広間は、もうすっかり綺麗になっていた。メイドの誰かが掃除をしたのだろう。いつも通り、リンが頬杖をしてレンを待ち構えていた。
 レンは、真っ赤に染まったソードを差し出し、静かに言った。

「すべては・・・・リン様のために・・・・・・・・・・・。」
「ありがとう。レン。辛かったでしょう?」
「えっ・・・・。」
「私にだって分かるわ。人を殺す事の恐ろしさくらい。」
「リン様・・・・・・」
「いいの。何も言わないで。今日はゆっくり休んで。」
「・・・はい。」

 姉は、無限の顔を持っていた。