二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 君の笑み、そして涙。【イナズマ短編集】 ( No.16 )
日時: 2010/02/12 20:30
名前: ぺりどっと (ID: SLKx/CAW)

第9話 体育館裏で


次の日、俺たちの教室がある2階には
嫌な空気が流れていた。
何か目線を向けられているようで
気味が悪かった。

そして、嫌な予感は見事に的中する。

部活後、俺は偶然体育館近くを通った。
そのときただならぬ気配がしたので、
裏へ行ってみると女子の輪が見えた。

俺は物陰に身をひそめて様子を見た。
そこにあったのは、あってはならない
光景だった。

「お嬢様だからって調子に乗るなよ!」

「被害妄想しやがって、気持ち悪いんだよ!」

次々に暴言を吐く女子たち。
こいつら全員、猫をかぶっていたのか。

そして、こいつらのゆがんだ怒りが
どこに向けられているのかもすぐわかった。

「11月から4ヶ月も来てないよねー。
 アンタなんか自殺したのかと思ってた」

「来れなかったのには、理由があって……」

「アンタの親の会社、つぶれかけたんでしょ?
 度重なる赤字決算、大量の解雇、
 工場もいくつかなくなり、生産量も激減」

「それの原因がリーマンショックだってねー。
 リアルすぎて気味悪い」

あざ笑う女子たち。泣くまいと耐える
アイツ。そして、いじめを見ている俺。

ここでなんとかしなくちゃ、俺まで
アイツをいじめてることになる……!!


一歩踏み出すことを決断した、
というより体が勝手に動いてたというほうが
近いだろう。

「おまえら、ここで何やってるんだ?」

「あ、鬼道くん!」

さっきまでいじめていたのに、
俺が出てきたときの豹変ぶり。憎たらしい。

「雷門中の吹奏楽部は仲間を平気で
 いじめるのか?そんなやつらとは、
 俺も知らなかったなぁ」

皮肉まじりに言ってみる。

「いじめ?何のこと?」

わざとらしい反応。
そんなもので俺が納得するわけが無い。

「私たち、ただお喋りしてただけ、ねー?」

グループの女子と思われるやつが、
他のやつを見回して「ねー」とはにかんだ。

「じゃあ、笠峰はどうして目が赤いんだ!」

俺はイラだって怒鳴った。

「そりゃあ、さっきゴミが入って……」

「ごまかすな。俺はさっき、ひどいものを
 見た。雷門中の恥じともいえる、
 ひどく汚い光景をな」

少々言いすぎかと反省したが、
全力でスルーしようとしている
コイツらには、やはりこれくらい言わないと
わからないものである。

人をいじめて自分たちを満足させようなんて、
汚い手に決まってる。実際、春奈も
いじめられていた……

「うちらはいつでも綺麗だよ。
 ほら、手だってピカピカ」

アハハ、と笑い続ける女子。

俺はいらだちを通り過ぎて
あきれ果てていた。

「吹奏楽部なんて、どうせ新入部員
 そんなに入ってないんだろ。
 このままじゃあ、廃部決定だな」

事実、吹奏楽部はいじめが絶えない。
それで新1年生は吹奏楽部ではなく、
他の部活に散らばった。

「もういいよ鬼道くん」

後ろから笠峰の声がした。

「もう……いい」


続く!!