二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂「算盤と刀」 ( No.3 )
日時: 2010/02/01 20:12
名前: コナ ◆Oamxnad08k (ID: u/Zf4dZT)

「川崎薫君か…君って雑務からなんでもこなせそうな顔をしてるねぇ」
「ありがとうございます!」
日だまり当たる、社長室。
日光に照らされ輝く高級感溢れる革製の事務椅子。

それに座っている、人物は礼をする男を褒め書類を机に置く。
一重瞼の釣り目は黒く、同色の短い髪は無造作に散らす。
深い緋色の羽織と渋色の着物が見事に溶け込んでいる。
礼をする男の本名は山崎退。真選組監察役を務める。
なぜ、人当たりが良さそうな社長の目の前にこのような人間がいるかと言うと。今から数時間に遡る。





「『白石邸』ですか…」
山崎は上司である土方十四朗に渡された資料を怪訝そうに眺める。
「あぁ、ビルは古いし小さいが利益は江戸で1、2を競う貿易会社だ」
確かに、社内案内に掲載されている写真は周りのビルに比べて背丈が低いしデザインも数十年物だ。
「でもおかしいですよ…結構儲かってるのに、なんで建て替えないのでしょう?」

山崎は首をひねると、テーブルを挟んで向こう側の席に座る土方は「そこからが本題だ」と紫煙を吐き出す。
「白石正二郎は…残りの利益をビルの建て替えに回す気はねぇ」
「どこに回してるんですか?」
「答えは、無名有名構わず攘夷志士の資金支援に回している可能性が高いからだ」
「え…って事は、今回の仕事はまさか」
「話が早いな山崎、そのまさかだ」
イコール潜入捜査である。
「え゛ェェェェェ!! 無理ですよ副長! もう俺あんな思いごめんです!!」
そう、山崎はかつてとある攘夷志士の間者として仲間に入ったが、警察手帳を落とし正体がばれたという辛い過去があった。
当然、土方からキツイお仕置きもされた。

「今回は、お前の警察手帳は俺が預かる。あと念のため偽名で入社しろよ」
今回の調査はデケェぞと無責任な事を言いながら、土方は頼んだかつ丼にマヨネーズを盛った。
そして今に至る。

第一訓「あだ名をつける時は相手の承諾を得ろ」


(はあ…無責任だな)
白石邸社長白石正二郎の背とその秘書石橋そよごの背を追いながら、曇りの表情を見せる。
「どうしましたか?」
突如山崎に振り向き、赤淵眼鏡を鋭く輝かせるそよご。
「いえなんでもありませんよ」
悟られないよう愛想笑いを浮かべる山崎。
「貴方の目元クマが出来ておりますね、寝不足は仕事の敵ですよ」
「そうですね」
「分かればよろしい」
はきはきと喋るそよごにたじたじになる山崎。
(この人苦手だなぁ…)
山崎は苦い顔を浮かべるのもつかの間。白石が
「ふゆ、あんまりダブルケイちゃんをいじめんなよー」
と言った。
(ふゆ!? ダブルケイちゃん!?)
そよごは呆れた表情を浮かべため息を吐いて
「社長こそいい加減変なあだ名付けるのやめてください、不愉快です」
「いいじゃないか、ふゆ。そんなんだから社員に『冷血仕事女』って言われるんだぞ☆」
「その”☆”やめてくれません? 三十代過ぎの男が使ったら気色悪いですし、さらに苛立ちます」
「うわぁ…聞いた? ダブルケイちゃんふゆの辛辣な言葉で僕傷ついた!」
山崎の肩に寄りかかり、泣き真似をする白石。
さらに山崎の顔色は困惑に染まっていく。
(おかしいぞ、絶対あり得ない、こんな奴が絶対攘夷志士の資金支援なんてしてない。つーか本当にコイツ社長ォォォ?! クラスにいるよこういう典型的馬鹿な奴ゥゥゥゥ!!)
白石の社長とはとても思えない態度を見て、先が思いやる山崎だった。