二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 記憶ノ螺旋 薄桜鬼 ( No.3 )
日時: 2010/04/30 16:05
名前: 牙暁 (ID: ouG7SBqg)

 ■壱個目....


 元治元年 六月


僕は江戸から京の都にやって来た。

「此処が、京の都……」

僕は三条大橋から、都を見下ろす。

江戸と違って、京に都は整然として、古風で、冷たく取り澄まして見える。
町の漂う空気、気配的に少し居心地が悪い。

(此処は鬼がいる。鬼が息を潜めている町だ……)

理屈では無く、直感で思った。


今の京は、決して平穏な場所ではない。
侍という権力を笠に着て、暴力を振るう浪士達が集まっている京の都である。
だから、油断していてはいけないのだ。


「……先ずは宿を探そう」

そう呟いた刹那。
薄絹を裂いた様な悲鳴が響き渡った。
多分、奴等の仕業だろう。

「チッ……!」

僕は殺気に満ちた表情で翔けると、一直線に悲鳴目掛けて空を駆け上がった。


僕の瞳に飛び込んできたのは、刀を持った浅葱色の羽織を着た白銀の男が二人。
其の足下、血溜まりに倒れ伏す、人間の姿。

(……こいつ等、新選組か?)

浅葱色で、袖口に白い山形を染め抜いた羽織は、新選組の隊服だ。
実際見るのは、今回が初めてだが、新選組の噂なら耳に聞いている。
確か、今月に池田屋事件を解決させたとかそんな感じだった気がする。

まぁ、実はいうと僕的に興味は無い。
新選組なんて、殺ろうと思えば殺れる。


彼等が向き直るよりも早く、僕は力任せに黒錬を振るう。
勿論、狙ったのは羅刹の弱点である心臓。

逃げ出そうとしたもう一人の羅刹も、容赦無く切り捨てた。
彼は上半身と下半身が別々の方向に倒れる。



「あ─あ、残念だな…」


散布した血飛沫の向こうに、浅葱色の羽織を着た男が立っている。
彼の言葉の持つ意味とは裏腹に、其の声は可笑しげに弾んでいた。

「僕ひとりで始末しちゃうつもりだったのに」

其の人は恨み言を告げながらも、楽しそうに僕に微笑み掛けた。