二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 零崎乙織の人間遊戯 ( No.1 )
- 日時: 2010/04/21 22:42
- 名前: 零崎狂識 ◆mGDRzMC2dk (ID: iykFqmai)
【始マリハ五年前ノ聖ナル夜】
特に大きな事件事故もなかった平和なある年
そんな年もそろそろ終わろうとしていた12月25日
つまり大晦日まで一週間を切ったクリスマスの夜
小さな極東の島国を騒がせる事件が起きた
舞台はK県某市の住宅街
時刻は丁度24時をまわろうとしていた頃
その時間帯に時折国家の犬と皮肉られる方々が到着した
何の変哲もないある一軒の二階建ての住宅
通報があったのは隣の家の住人から
『隣の家から叫び声がした』
明らかにふざけているのとは違う断末魔の叫び
しかし、到着した頃には辺りは静寂に包まれていた
まだ犯人は中にいるかもしれない
その危険を予測しつつ、何名かの男が玄関へと近づく
扉には鍵がかかっていた
無理矢理にそれを壊してこじ開ける
一見何の変哲もない家
それは、外見だけであったことを誰もが知ることになる
扉を開ければそこには当たり前玄関があり
そこには一人のまだ幼い少年が倒れていた
否、実際には少年だったモノと言った方が正しいかもしれない
後一歩のところで間に合わなかったらしい
青ざめた表情になりながら男達は家の中へお邪魔する
リビングには合計三体のほんの数時間前までは人として機能していたモノが散らばっていた
しかし部屋のどこも荒らされてはおらず物が壊れている様子もない
まるでこの光景は人で遊んだ後のよう
幼い子供が時折する、憐れな虫や人形を使った残酷な遊び
それが人を用いて行われたようだった
さすがにいくら経験と覚悟を積んだ屈強な男達も平常心ではいられない
そろそろ誰か一人くらいは叫び声をあげそうだった頃
隣にあるキッチンから物音が聞こえた
『犯人かもしれない』
そんな思いが全員の頭をよぎったが、勇気を振り絞ってそちらへと足を向ける
キッチンの床に倒れ込むようにしゃがみこんでいたのは
全身が赤く濡れた一人の少女だった
美しい黒髪はところどころ汚れてかたまっていて
身につけている真っ赤なワンピースは元は純白だったのだろう
陶磁器のような白い肌にも赤色はこびりついていて
少女の表情はこの世の終わりを見たかのようだった
何も持っていない怯えた様子の少女を見て、男達は不謹慎にも安堵する
いきなり現れた見知らぬ男達に怯えの色を濃くする少女
おそらくはこの家の長女
まだいくらか理性の残っていた男が少女に優しく声をかける
『君は、この家のお嬢さん?』
聞かなくても見れば分かること
しかし、我を失っているように見える少女には一番答えさせる必要のある質問
自分自身を思い出させることが必要だった
その問いを聞いた瞬間、少女のうつろだった瞳に光が灯る
淡い桃色の形の良い唇から可憐な美声が漏れた
『こいつらは、僕の家族じゃない』
『僕の家族は、こいつらじゃない』
『僕は、家族を探しに行かないと』
唖然とする男達の横を難なく通り抜け
今さっきまで呆然としていた少女は意気揚々と歩きだす
スキップでもしそうな勢いで
裏口から出ていった
『聖夜の一家惨殺事件』
『五年たった現在でも犯人は捕まらず』
『その日以来あの少女の姿を見た者はいない』
『家族唯一の生き残りである少女は』
『現在も生存しているならば19歳になっているはずである』