二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

イナズマイレブン -DE風丸メイン ( No.1 )
日時: 2010/04/27 18:54
名前: くぁーつ (ID: WPWjN3c4)

まっくらやみでした。


 【 どうかこの手に温もりを 】 



 じんわりと胸上に触れているエイリア石から、冷たくそれでもどこか優しい温もりが伝わってくる。
 ああ、もう俺はエイリア石に依存してしまっているんだ。
 風丸は改めてそう実感し、グラウンドを見渡した。

 ダークエンペラーズ。それが、彼らに与えられた名前だった。
 そのメンバー達が、各自で練習を行っている。
 組んで練習している者もいれば、独りで練習している者もいる。
 誰の首にも、黒っぽい紐が掛かっている。紐はユニフォームの中へと入れられている。
 あの紐の先につながっているモノ——

「……俺は、」

 エイリア石。毒々しい紫色の光を放つその石は、持つだけでその者に多大なる力を授ける。
 練習無しに強くなれる。きっと、誰もが望むモノだろう。
 けれどそれは今までただの夢でしか、妄想でしかなかった。そんな都合の良いものは無い。
 ……はずだった。

「……おれ、は」

 それが、今ここにある。そして彼らに、彼に力を授けているのだ。
 初めは酷く冷たく残酷に感じられたその感触も輝きも、今では愛しく優しいモノになってしまっている。

「……あぁ」

 俺は、ここまで堕ちたんだ。
 風丸は心の中でぽつりと呟き、足元に転がるサッカーボールに目を向けた。
 サッカーボールを見ると浮かんでくるのは、昔の仲間“だった”者達の顔。
 ずきりと胸が痛み、息苦しくなる。本当は、エイリア石に手を出すことなんてしたくなかったのだ。

 今はエイリア石に依存してしまっている彼らでも、初めは少なからずの抵抗があった。
 しかし、欲望には打ち勝てなかった。

「……なぁ、」

 彼らは、自らの力に絶望した。そして、望んだ。“もっと強くなりたい”、と。
 強くなれば。強くなることが出来れば。以前のように、楽しくサッカーができる。
 そんな想いが脳を揺さぶり続ける。本当は、間違っていることだと分かっているのに。

「——円堂、」

 結局、彼らは。半ば強引に、エイリア石を押し付けられ。
 その温かさを知ってしまった彼らは——エイリア石に依存してしまったのだ。
 “楽しい”。今では、そんな感情も消え失せてしまっていた。
 “勝つために”。それが、心を脳を全てを支配している。
 
 間違っていることだとわかっていたはずなのに。

 けれど、今は————


「もうすぐ、また一緒にサッカーできるんだ」


 それも全て、歪んでしまっていた。
 自分は弱い。自己嫌悪だけが募り、それを癒してくれるのがエイリア石。
 エイリア石は、自分達に絶対を与えてくれる。
 彼らは、“力”だけを求めるようになっていった。ただ、強さだけを。


「もうすぐ、あえる。なぁ、円堂、みんな——」


 強くなかったらサッカーは楽しくない。
 だったら、強くなればいい。そう、“強く”なれば。
 強くなれば、みんなは自分を求めてくれる。頼ってくれる。もう、悔しさなんて感じなくなる。

 俺達は、間違っている。

 そんな想いは、とっくの昔に消え失せた。


「——一緒にサッカー、楽しもう」


 愉快げに口元を歪ませた風丸は、そう言葉を吐き出すと——足元のサッカーボールを、蹴った。



end.


【後書き】
……意味分からん← DE風丸です。取り扱いジャンル名は、題名に書いていきますのでよろしくです。
DE大好きです。きっと複雑な想いをあったんだろうなー、なんて思いながら書きました。
初っ端からこれです。ハイ。反省はしてませんが、若干後悔もしてません(ぇ
タイトルは切な願いってことで! ……書いてるうちに関係なくなったとか秘密。
次はDグレかぷよぷよ書きたいです。では、有難うございましたーっ!