二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

TEARS OF SAFFLOWER 1 ( No.1 )
日時: 2010/05/08 12:09
名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: MIiIBvYo)
参照: http://almpo.blog109.fc2.com/

 
今年も真央霊術院を卒業し護廷の試験に合格、晴れて憧れの死神となれた初々しい彼らは十三隊へと配属されて行く。
此処、三番隊でも同じだ。
此れから入隊式を行われると言うのに要の三番隊隊長は未だ前に立っていない。

「今年もか……」
はあぁ…と呆れたように溜息を吐く三番隊第三席—束原陽樹の隣の同隊副隊長吉良イヅルは慣れた様な表情だ。
毎年毎年入隊式の時には必ずギンは何処かに行ってしまうのだ。
此の事をギンの同期である乱菊に相談しても「何時もの事よ」と其れだけだ。
三番隊に異動後五年で陽樹はもう諦めたが—矢張り自分の上司としては如何なものかと首を傾げ続けて早二十数年。
イヅルはもうとっくに諦めてはいるが。

「隊長何かあったのか?」
「え、何時もの事らしいよ。こんな事」
ぼそぼそと囁く新隊士の声が陽樹の耳に届いたなら怒鳴られて。
埒が明かないと、「探して来る」—そうイヅルに言い残し陽樹が此処を発ったのはもう三十分ほど経っただろうか。
「何してるんだろう、陽樹…」

 1.Do It Properly!

がたりと隊首室の障子を開けると案の定、ギンは其処に眠りに就いて居たのだ。

「去年は十番隊隊舎、一昨年は三番隊修練場……今年は隊首室か…」

ギンの寝顔をまじまじと見つめては呟き。そっと銀髪に手を伸ばして指で梳いてみると、水の様に指と指の隙間から零れて落ちた。

「寝てても起きててもあんま変わんない…」
何時も閉じられたギンの両眼。見た事の無いギンの瞳を一度でも見てみたい、と。
そんな事を考えてゆっくり瞼を開けようと指を滑らせた時だ。
「何やってんの。陽樹ちゃん」
ぐ、と陽樹の腕を掴んだギンは何かを企んでいる様な笑みを浮かべていた。

「…入隊式がもう直ぐ開式致しますので、隊長を御呼びに参りました」
「嘘。何でボクの髪触ったりしてたん?時間無いんやろ?さっさと蹴り起こすなり何なりして行かせればええやん」
「、それはっ…」
言葉を続けようとしても頭には何も思い浮かばない。
黙りこくってしまった陽樹を前にギンはくすりと笑う。

「ええよ、ボクもう行くし。陽樹も付いて来んねやろ?」
立ち上がって「あ、そうそう」と続けて。

「なぁ、ボクちゃあんとしてたら何かしてくれる?」
「そうですね…」
隊首室を出て廊下を歩き始めた時に思いつく。
「鯛焼きでも、御馳走させて頂きますよ」
「ほんま?それええなぁ。頑張らなあかんなぁ、ボク」
くすくすと二人で笑い合いながら、廊下を歩く。