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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 鋼の錬金術師 〜約束の月光〜 ( No.3 )
- 日時: 2010/06/22 19:52
- 名前: 皇林 (ID: slitpE5G)
プロローグ
静かな風がふいている。肌触りが良い、優しい優しい風。だけどその優しい風とは裏腹に、その周りは荒れ果てていた。緑の草はもはやそこらじゅうに散らばっており、木も倒れてしまっている。地面の土は犬が荒らしたかのようにばらばらとなっていて、物音1つ聞こえない。
そしてその周りに倒れている人達。皆同じような服を着ている。そして、皆血を流している。息をしているのかしていないのかは分からない。ただ、誰の肩も動いていない。そんな時、1つの影がむっくりと起き上った。
「……みんな……?」
起き上ったのは1人の少女だった。その淡い薄紅色の髪には、ところどころ土がついてしまっている。そしてその幼さが残る顔は、ところどころ怪我をしてしまっていて、血が出ている。そしてそれは右腕からもだ。
少女は痛む右腕を左腕でおさえながら、ゆっくりと歩き始めた。誰も動かない。皆、眠っている。それとも、もう息をしていないのだろうか。少女の顔に恐怖の色が走った。
「お父さん……お母さん……!?」
倒れた木にもたれかかる様にして倒れている2人に、少女は駆け寄った。その2人は少女の両親なのだろうか。少女は涙目で両親の身体を揺さぶった。
だが、返事はない。男と女はかたく目を閉じたままだ。否、もう開かれる事はないのだろう。
「嘘……やだ……やだ……っ! ……いやぁーっっ!」
少女の悲鳴は、誰にも届く事なく消えて行った。
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