二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 始まり【仔沖神】 ( No.7 )
- 日時: 2010/07/02 22:11
- 名前: 夜湖 (ID: e65Hbqlh)
「姉上は大丈夫ですかねェ」
ほかほかの肉まんをほおばりながら少年が言う。
「ミツバ殿は自分のことはいいからとにかく楽しんでくれと言っていた。総悟、その気持ちをありがたく思って楽しむのが礼儀だぞ」
一人の男が言う。
しかし少年がなかなか晴れない表情をしているのを見ると、少し笑い、提案した。
「なら、トシか俺がミツバ殿のところに行っといてやろうか。そうすればお前も存分楽しめるだろ?」
「こいつと二人きりなんて絶対ごめんでさァ。かと言ってこいつが姉上のところに行くと絶対なんかしやすよ」
少年がもう一人の男を親指で指しながらしかめっ面をして答えた。
「全部俺が原因じゃねーか!
つーか何もしねーし!」
「あ、団子屋!」
少年は風にはためく団子屋の旗を見ると走っていった。
「これであいつの食べ物にかかった費用いくらだ?
毎日の食費も馬鹿になんねーんじゃねーの」
「うるせー、マヨバカ!」
少年は走っている途中に振り向くと罵声を浴びせた。
地獄耳なのだろうか。
「あら、可愛いお客さんが二人も。
何が欲しい?」
少女と少年は団子屋でちょうど鉢合わせした。
団子屋の娘が笑顔で二人に聞く。
二人はガラス越しに並ぶ色々な団子を見ながら言った。
「みたらし団子が欲しいアル!」
「みたらし団子をお願いしまさァ」
ちょうど二人の声が重なった。
娘は申し訳なさそうな顔で答えた。
「ごめんね、みたらし団子はそこに並んでる一本で終わりなの」
少女が首にぶらさげていた財布から何枚か小銭を出し、小さい手に乗せて差し出した。
「私が先にお金出したからそのみたらし団子は私の物アルよね!」
「あっ、ずりィ!」
少年は財布は二人の男が持っていることを思い出した。
「ふふーん、早いもの勝ちネ!」
見たもの全員がムカつくこと間違いなしな表情で少女は少年を横目に見る。
娘は困惑していたが、何か思いつくと店の奥に入っていった。
少年も何か思いつくとまた二人の男の方へ戻り、財布を持って走ってきた。
「何も最初に出したから買えるというわけは無ェんだぜィ。それよりも、お金を多く出した方が買えるんでさァ!」
どういう理屈なのだ、それは。
少年は少女よりも百円多く出した。
明らかにやってやったぞ、というような態度だ。
少女は財布の中からお金全てを出すと、またさっきのような表情をした。
「そんなことやるなんて、愚のそっちょう……あれ?
愚の何だったけ?愚のゆうちょう?
まあ、いいアル。
手の外を明かしたのが間違いだったなあ!
るざんどす!」
「るざんどす?」
完全に少女はところどころ間違えている。
「何も言わずに多くお金を出しとけばよかったものを、馬鹿アルなあ!そんなことやれば相手からもっと多くお金を出されるだけネ!
まあ、今のお前には私よりお金を持ってるなんて考えられないアルけどなあ!」
「ちょっと待って二人共!」
少年が臨戦態勢に入った時、娘が両手に何かを持って戻ってきた。
両手に持っているものは緑色の団子だった。
「これはうちの裏メニューの草もち団子!
みたらし団子とこれ、どっちがいい?」
「草もち!」
結局二人は草もち団子を買って帰った。
ちなみにみたらし団子はその後、少年と一緒にいた男の(少年が言うに)犬のエサにされたか、ある男が食べて喉につまらせてしまったのかはいまだ分からない。
しかし、これが総悟と神楽の一番最初のケンカだった。
二人が覚えているのかは分からないが、相手の顔を見た時のどこかムカつく感じが二人をケンカに導いているのだろう。