二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- それは酷く単純なこと / ふどたか←げん・三期 ( No.348 )
- 日時: 2011/02/07 01:58
- 名前: 宮園 紫奔 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
- 参照: ただの突発十五分クオリティ
@それは酷く単純なこと
好きだの愛してるだの、そんな言葉はいらない。ただ抱き締めてやればいいだけだ、眉をひそめながら、苦々しく源田はそう思う。確かに自分は求められてはいないが、彼女が求めている本質的な行為はそれなのだ。たとえ自分が彼女の望む人物ではなかったとしても、今の彼女なら拒絶などはしないだろう。むしろ、できないのではと源田は思った。ぼろぼろに廃れた彼女の精神は、ずるずると今にも引きちぎれそうな欠片を地面に引きずり宛もなく彷徨い這い回っている。それが何を意味するのか、はたまた何を示しているのか。助けてくれと咽び泣いているのか、近寄るなと気丈に振る舞っているのか。あまりにも短すぎた一緒に過ごした過去の時間は、それらを悟るのに役立ってはくれない。
溜息とか、もうそんなものすら出なかった。もやもやとした苛立ちがひたすらに精神を蝕み、ぼうっとしていると自傷行為に走ってしまいそう。別にそんなものに依存しているわけではない。苛立ちを何かにぶつけたいだけで、自分のふがいなさにひたすらストレスが溜まっていくだけで、結局その二つが重なって自分を自分で痛めつけてしまうのだ。それを心地よいなどとは思わない。ろくに手入れのされていない伸びた爪ががりがりと幾度も掻き毟った腕は、びりびりとした痺れに似た痛みを放ち続けている。それが苛立ちに拍車をかけ、罪悪感だとか後悔だとか、もうそんなものはどこにもなかった。確かにはじめは——彼女を自分は救えないとわかった時から——膨大なそれらを爆発しそうなほど溜め込んでいたのだが、今となっては津波にさらわれてしまったかのように跡形もなく消え去っていた。所詮彼女を思う自分の気持ちはその程度なのだろうかと、また彼は苦悩する。苦悩し続けても何も変わらない、それは確かにわかっていた。それでもどうしても行動ができないのは、紛れもない自分の弱さだ。それがわかりきってしまっているからこそ、余計に報われず、救われない。嗚呼、こちらまで病んでしまいそうだ。酷く震える声音で、彼はぽつりと呟いた。