二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.65 )
日時: 2010/09/18 00:15
名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: C9Wlw5Q9)


 第三十二話 日曜日の公園 

 *
 蘭とエリちゃんは、よく似ている。
 *

 日曜日の公園、それは俺にとって大切だった。
 エイリアにいた時も、なんとか抜け出して公園へいった。

「やっときたのね」

 短い言葉だけれど、澄んでいて冷たい声だけど、とろけるように甘い。
 細く尖った顎。綺麗な鼻筋。桃色の、出っ張り過ぎない形のいい唇以外は、白い。
 まるで白いチーズみたいだって、バニラアイスみたいだって、よく思う。食べると美味しそうだ。太陽のしたにいると溶けてしまいそうだ。
 黒くてふわふわした髪が風に揺れる。
 切れ長の瞳の中に塗られた漆黒の闇。麗しい、と幾度なく思った瞳。
 烏の羽根を髪の毛に絡ませている。髪飾りのつもりなのだろう。
 たしか唐須って不良がいたけど、彼女の方が烏って感じがする。
 黒くて細い眉。小さい頃からずっと見てきた綺麗な眉。
 黒いパフリーブのワンピース。彼女はいつも黒いワンピースを着ている。袖が変化するだけで、他はいつも同じだ。
 そして、靴も変化する。彼女は今回、黒いサンダルを履いている。

「ごめん。ちょっといろいろあって、ね」

 俺がそう言うと、彼女は鼻の先で笑った。
 でも、別に怒らない。彼女はするりと公園のベンチに腰を下ろす。
 そして、歌うように言った。

「さぁ、聞かせてもらおうじゃないの」

 彼女は、俺にとって最高の相談相手。
 お姉さん同然の存在。
 もちろん、エリちゃんもだけど、恋の事で、エリちゃんと相談することなんて、無理。
 風丸のことで、エリちゃんと相談するのも、無理。
 だから——、彼女と相談する。畑山蘭と。
 蘭とであったのは——あれ、何年前だっけ?
 覚えてないけど、この公園で、日曜日だった。
 まだお陽さま園にきたばっかりで、友達ができなかった。
 もうなにもかもが信じられなくて、でも其れが真実で、いやだ、って思いながら泣いてた。
 そしたら、蘭にであった。
 蘭は鼻の先で俺のことを笑った。泣き虫、臆病って。
 すっごい悔しかった。
 周囲の大人たちの言葉、男の子なんだから勇敢でなくちゃ、とかなんとか。瞳子おねえさんはあんまり言わないけど、泣いてる俺のことをみるとすっごく困った顔をする。どうして男の子は泣いちゃいけないんだって理不尽に思ったこともある。
 でも蘭は、俺が泣いてもどうとも思わなかった。ただ、静かにじっと見てた、それだけだ。
 そして蘭は、慰めてくれなかった。なんにもしなかった。虚ろな目で、ただこっちを見ていた、それだけ。
 初めてエリちゃんとあったとき、似てるって思った。
 外見はともかくとして、性格とか、何気ない仕草とか。
 初めてあったとき、エリちゃんは何回も俺に謝ってた。——蘭も。因みに、ちゃん付けしないのは「キモいから」と禁じられただけで、蘭に対して特別な気持ちはこれっぽっちもない、だって俺はエリちゃん一筋だから!
 蘭も、外国にいたことがあったらしい。エリちゃんも、台湾にいたことがある。
 そしてエリちゃんは、困ったとき、よく髪を掻き毟る。それから、綺麗に整る——蘭も。
 そしてエリちゃんも蘭も、細かい事に拘らない。
 基本、気にしているのは大局で、小さい事を見極めるなんてめんどくさいことはしないと言うのが二人の言い分だ。

「——リュウジ」
「えっとぉ……何?」
「——はぁ、真面目に人の話を聞きなさい。あなた、攻めて」
「——はっ?」
「あなたに変化球なんてとことん似合わないし、男と女のサインは違う。だから直球でいくのよ。その方が伝わりやすいわ。変なサイン使って相手を惑わさないほうがいいわね」

 蘭がそう言った。
 俺はこくんと頷いた。ちょ、直球ね。

「ところで蘭、」
「ん?」

 *
 直球って、何?
 *