二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.114 )
日時: 2011/04/26 20:58
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

「・・・・・・っえええええっ!」ティルスの言葉に、まず反応したのはレイサだった。
「か、か、か、カレイムさん、なのっ!? そ、そういや、言われてみれば・・・そんな感じも、するけど」
「誰さん?」首を傾げるマイレナとリーシアに、レイサは説明した。
「ダーマ神殿の、特別親衛隊の魔法戦士。すっごい背が高い人」
「私より?」
「確実に」
「それじゃあ」リーシアだ。「この人・・・仮に人は、わたしたちを敵と勘違いしている、ってことか」
「だろうな」
 ティルスが短く頷く。「ダメだ、話が通じない。せめてこの姿でも解ければ・・・」

 その刹那。

 後ろから、凍てつくような波動が巻き起こる! 髪が激しくたなびき、旅装もそれに合わせる。
同時に、封じられていた魔力が戻るのを—もっともこれはレイサだけだったが—感じた。
「・・・・・・・・・・・、っえ?」
 波動がおさまる。マイレナと、ティルスと、レイサは、目を開けた。目の前にいたのは、ミミックではない。
赤みがかった茶髪の、長身の若い男である。うつぶせになって気絶していた。
続いて三人はおそるおそる波動の生じた後ろを見ると、両手を前に突き出した状態のリーシアが飄々と立っていた。
「・・・こんなもので、どう?」
「りりりりりりリーシャ・・・?」
「・・・もしかして今の、リーシアが? ・・・つか、魔力、戻ってきたんだけど・・・」
「あれ、戻ったのか?」リーシアはようやく腕をおろす。
 一般的に、凍てつく波動、と呼ばれている特技である。波動を受けたもののすべての状態異常を解く技である。
「・・・そういう使い方もあるんだな。でも残念ながら、わたし自身は波動を受けていないから、
魔力は封じられたままだがな」
「・・・意味ないよ、それ」
 ま、戦いは終わったんだし、ここまで耐えたんだから傷なんかもう気にしないしとリーシアはあっさり言って、
相変わらず身じろぎもしない茶髪の男カレイムの傍らに座り込む。
「どう?」
 先にしゃがみ込んで、カレイムを仰向けにさせ脈拍を確かめていたティルスに問う。
「・・・大丈夫だ。気絶しているだけで、異常はない・・・っと? 起きたか?」
 カレイムの眉が若干動いたのを見て、ティルスは言った。ぺちペち、と頬を叩いてやる。
う、と一回唸ったかと思うと、カレイムは呆けた表情で目を覚ます。大丈夫ですか、とリーシアは手を差し伸べる。
 が、カレイムはその手を取る前に、はっと身を起こし(座高だけですでにすごい高さである)、
リーシアに尋ねる。
「あ、あなたは・・・?」
「旅人です」
 簡単に言った後、カレイムから視線を外しティルスを指差し、「こちらの方が記憶にあられるのでは?」と紹介する。
 カレイムは言われるままリーシアの指先をたどり、盗賊の身なりの青年をしばらく眺めた。
「オレだ、カレイム。ティルスだ」
「てぃるす・・・」
 復唱してから、はっと顔をあげなおした。「まさか・・・あぁ、ティルス! 久しぶりだ!」
「え、知り合い?」マイレナである。
「あの状態なら、大丈夫そうだな」
 リーシアが肩をすくめた。
「さすが特別親衛隊」
 レイサも頷く。
 カレイムが立ち上がろうとする。が、人間の姿に戻るのは久々なのだろう、バランスが取れない。
少々ばかりふらつき、おっと、と手をついた先が、不運にもティルスの頭だった。ターバンがずるりとずれ、
遂には剥がれ落ちて床に落ちる。





      ・・・かつん。





 その際、何か固いものが床に落ちる音を、マイレナは聞いた。とても小さい音だったが、確かに。
「——ってー・・・何すんだよ・・・」
「ああ失礼」
「わーティルスのターバンなし初めて見たー。禿げてないんだね」
「あぁ、確かに」
「ちょ、あんたら一体何を想像してるんだ!?」
「イヤ髪の毛が乏しいからターバンで隠しているのかと」
「オレはそんな歳じゃねぇっ」
 その小さな音には、マイレナ以外は誰も気付かなかった。
・・・否。彼は、気付いているはずだ。持ち主のティルスは。

 ・・・彼のターバンへの視線が一瞬、後悔の色を見せたのを、マイレナは確かに見たのだから。








              Chess)長いのd(以下略