二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.16 )
日時: 2010/12/16 17:38
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: aMIPEMQ3)

   【 Ⅰ 】


 空は蒼い。文句の言わせようのない快晴だった。風も心地良く、日差しも柔らかい。
こんな天気は滅多にないと、マイレナ・フォーリーは思った。
 珍しい、蒼く艶のある短髪。眸の色も同じ、蒼海の色。十七歳の娘にしては長身である。
 マイレナ、通称マイは、くるくると回ってぴっ、と止まる。
「いい天気だねぇ、リーシャ」
 マイレナは自分の隣にいる、長い黒髪を高い位置で結わえた同い年の娘に言った。
「そうだね。・・・でもマイ、わたしは“リーシャ”ではなく“リーシア”だと何回も言ってるだろ?」
 黒髪のリーシア・レヴィンは、名前を今だ間違える困った娘に言った。
「いーじゃんそっちのほうが言いやすいし。ねっ、リーシャちゃん?」
「っ“ちゃん”を付けるな、わざとか?」
 半ば本気で怒るリーシアに、今日は喧嘩って天気じゃないよ、とマイレナはのんびりと言った。
「ぐ」
 言い返せなくてリーシアは膨れた。


 ——私はマイレナ。親友のリーシャ・・・リーシ、ア、からは、マイって呼ばれてる。
私たちは、三年くらい前に、ある複雑な経緯で出会った。それ以来、二人で、ある目的で旅をしている。
 この世は、魔族の息吹がかかりつつある。
この世界と、異世界——人呼んで『地獄』の世界のどこかに、魔族を束ねるものがいるとか何とか。
・・・当然、私もリーシャ—もう戻っていることに気付いていない—も、
そいつを倒そうなんてことは思ってない(ハズ)。あくまで、“目的”のために旅をするだけだから。
 私の目的とは、今はリーシャについていくことだけ。
三年前の、その“複雑な経緯”で私は故郷を失った。私以外の人は、みんな消えてしまったんだ。跡形も無く。
 リーシャの目的は、何かの“仇”を討つ事。残念ながら、リーシャはこのことを話したがらない。
 だから分からない。そして、リーシャの出生のこ「マイ」・・・リーシ[ア]の出生のことも。・・・ふう。


「今、どこだろ」
 マイレナがぼんやり呟いた。リーシアがポーチからコンパスを出し、手の平に載せる。北北西に向かっていた。
 マイレナは顔をしかめ、溜め息をついてから、
「・・・ったく、何が北に進めだあのオヤジ。何の町も見え——」
 ・・・そして目を高速でしばたたかせ、
「た」
 とだけ言う。
「は?」
 リーシアが目を細める。「町が見えたのか?」
「うん。ほら、あそこ」
「・・・・・・・。いや・・・わたしには見えないが」
 とりあえず目の極端にいいマイが見えたというならあるんだろうと
いまいちいい加減な判断をしたリーシアは、そのまま歩いた。
「ああ・・・見えた」
 そして、しばらくしてそう言った。