二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.71 )
日時: 2011/03/12 21:30
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: fckezDFm)

「何だ・・・? 何があったんだ・・・」
 そして、その後——リーシアは、フィルタスを訪れる。爆発音、立ち込める煙に反応して。
(あの音、あの光・・・あれは、 強制移動呪文_バシルーラ_ だ・・・!)
 なまかな者なら、使えるはずもない強い魔法。
(誰も・・・誰もいないのか・・・?)
 リーシアは、誰か残っている人間を探す。それがその呪文を放った者だろう、そう考えながら。
 用心深く村を進む。幸い、風はない。すべての音を探る——


 ・・・人の、息づかいが聞こえた。


「————っそこだ!!」


 リーシアは勢い良く、テントのようなものをめくり上げた。
「ひっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
 リーシアは装着した爪ではなく、腰の 細剣_レイピア_ に手をかけた。だが、その手にかけた力が弱まる。
中にいたのは、蒼い髪の少年——違う。少女だ。
姿は変わっている。だが、それは、紛れもない——
「あんた・・・あのときの」
「リ、リ・・・リーシャ・・・?」
「リーシアだ」そう言うと、リーシアは中に入る。
「こ・・・来ないでよ!?」
「あんた、何か知っているんだろう!? わたしじゃない。一体何があった!?」
 蒼い少女、マイレナはいきなりの展開に震えたまま、リーシアを見た。
真剣この上ない顔つきに、リーシアによるものではない事を理解したらしい。だが、気持ちは乱れたままだった。
「し、知らない・・・分からない!」マイレナは必死に答える。
「何があったの? みんなは何処行ったんだよっ・・・。どこかに隠れてるんでしょ、消えたなんてこと」
「落ち着け! まずは落ち着け」
 リーシアはゆっくり、諭すように言う。「あんたは何故ここにいたんだ? まず、そこから教えてくれ」

 マイレナは経緯を話す。儀式のこと、巫女の使いのこと。儀式に基づき、使者のみがテントに戻ったこと。
大きな音と、その後の静寂・・・
「・・・間違いない。 強制移動呪文_バシルーラ_ だ」
「・・・ばし・・・るーら・・・?」
「呪文・・・魔法だ。かけられた人間は、ここではないどこかに強制的に飛ばされる」
「それじゃあ・・・みんな、生きてるってこと? 会えるってこと・・・?」
 天界か地獄に行っていない限りね。——そう、言おうとしたが、そこまでは言えなかった。
[当時]、天界や地獄は、死した後に行くものだと言われていたから。
「・・・そうだな。いつか」
 リーシアはマイレナの腰に吊ってある護衛用のナイフをちらりと見て、答える。
「・・・あんたが、生きてさえすれば」
「———————————」
 マイレナは顔を曇らせ、うつろな目をして頷いた。そうだよね・・・そう、呟いた。




 フィルタスの村は、今や誰もいない。
 この地に残っていた村人の一人はある旅人共に旅立ち、
もう一人は、どこか遠くへ、邪地へ向かったから。







              【 断章——マイレナ 】 完結。