二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜参照3000突破!!〜 ( No.477 )
- 日時: 2011/08/02 19:06
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: ナルトの映画、面白かった〜それにしても、綱手さん、ひどい…
28 託された想い
「王、お呼びでしょうか?」
その後、追いついた美麗と鈴そして夏未の三人は、この国の王である嵐のもとにやってきた。「王宮の間」と呼ばれるそこは、すべてが純白な白に統一され、とても広々としている。
頭を下げ、まずはお辞儀をする。当たり前のことだ、相手は国の王なのだから。しかし、この行為は嵐にとってはあまり気持ちのいい事ではない。頭を下げられ、まるで自分が彼女たちを奴隷にしているかのように思ってしまうからだ。
「いい、頭をあげてくれ」
「はっ!」
少女でありながら、普通の成人男性よりも威勢のいい返事を返し、頭をあげた。
「飛火からの情報だ…この近くに例の新種の魔物が出没したらしい」
「新種…ですか?」
鈴が聞き返すと、嵐は小さくうなずいた。その鋭い視線は、わずかな暖かさでさえも、見出せない。
「飛火の腕が怪我をした。傷跡からしても結構図体のでかい相手だろう」
「相手の属性は?」
「地の属性…だから、波風それと飛導。お前たち二人には容易いかと思ってな。行ってくれるか?できれば、すぐに出発してほしい。場所はレクレットだ」
「「はっ!」」
もう一度威勢のいい声をあげた。しかし、夏未はなぜ自分が呼ばれたのか、分かっていない。
「頼んだ。夏未、お前には別の仕事を頼みたい。護衛で忙しいかもしれないが」
「私は大丈夫です。護衛と言っても、守たちがいれば、安心でしょう」
「守」この名前にはいつも反応してしまう。小さいころから冬花と仲良くしているせいか、あまりいい印象はもてない。
「悪い、波風に飛導は下がってくれるか?」
今度は何も言わず、頭を下げて、二人は王宮の間を出た。そこで、タイミングよく、冬花が駆け足で入ってきた。
「姫様、走られては危ないですよ?」
「ごごごごめんなさい。え、えっと、お仕事お疲れ様、鈴ちゃん」
息を切らせ、顔を真っ赤にさせながらも、鈴と美麗にどうにか、頑張って挨拶をした。まるで、小さな子どもを見るような、微笑ましい光景に、辺りは皆、なごむのだ。
「後、美麗ちゃんも」
「冬花、遅い。相変わらずのろまだな」
この一言で、冬花の頭に血が上り、ブゥと顔を膨らませ、嵐に反抗した。
「走ってきたんだもん。遅くなんかない!!」
「お前の走るスピードは、普通の人が歩くのと同じじゃないのか?」
「うぅ〜」
今度は顔を怒りで真っ赤に染め上げ、ドカドカと室内に足を踏み入れた。
嵐はその様子を見て、嫌な笑みを浮かべている。これを見るたびに、冬花はムカついてくる。たまに、自分の兄の足を蹴とばしたりして、戦い(?)に勝利、ということもあるが、最近は免疫力というものだろうか、嵐に避けられることが多くなった。
「ドカドカ歩いて、お前本当に王女か?怪物だったりしてな」
「私は怪物じゃない!!」
「あっ、悪いな、夏未。馬鹿を相手にしてる暇じゃなかった」
「馬鹿じゃない!!」
「フフッ、姫、落ち着いてください。それで、王、話とは…」
夏未の一言で、やっと二人は一応終戦した。冬花はまだ怒っているようだが、嵐はもういじる気はなくなったようだ。気持ちは今、話そうとしている本題に向いている。
「精霊会議のことだ。三週間後…ウィンス、フレイム、アクア…その他いつものメンバーだ」
「明日香ちゃんも来るんだよね?」
「恐らくな。だが、今回ばかりは友の再開を喜んでいる暇はない」
フッとため息をつき。表情を暗くした。さっきまで冬花と遊んでいた人とは思えない。
「なぜですか?」
「これは会議が厳しくなるな…
王国軍が来る」
「お、王国軍!?」
「どういう事ですか!?王!!」
夏未と冬花が驚いたその言葉——王国軍。すべての国を管理している、この魔法界で一番偉いと言っていいほど、大きな権力を持っている。その気があれば、フェアリー王国など一握りで潰せてしまう。ヒロトと玲奈はそこに所属しているが、二人はその上位に立っているはず、どうしてこうなってしまったのだろうか。
「さぁな…もし、ヒロトに考えがあるとすれば、先に俺だけにでも話すはずだ。今、考えられるとすれば、『騙された』かもしれないな…未だに連絡が取れない」
「ヒロトさんはとても騙されるような人ではないと思います。どちらかと言うと、騙す方なのでは?」
「相手が一枚上手(うわて)だったのだろう」
「精霊会議はどうなるの?」
「続行しろ、と命令は来ている。従うしかないな。そこでだ、夏未。お前には精霊会議で冬花の護り役に付いてほしい。何があるか分からないからな。俺は悠也に頼んである」
突然のことで、冬花も戸惑っているのだろうか、冷や汗をかいて、驚愕な表情で俯いている。もちろん、自分もとても冷静でいられるはずがない。ヒロトと玲奈がやられたかもしれないのだ。守や修也だったら、王国軍に乗り込もうとするだろう。
「わかりました。姫の命は保証します」
「頼んだぞ。それで、このことは内密にしておけ、事をあまりでかくしたくないからな…」
「はっ!では失礼します」
一礼をして、後退すると、カッカッと王宮に足音を響かせながら、出て行った。
未だに不安そうな顔を浮かべている冬花は、夏未の姿がとても小さく見える。
「怖いのか?」
「怖くないって言ったら、嘘になっちゃうかな?王国軍だもん。ヒロトさんと玲奈さんは慣れてるけど…」
「もう少しの辛抱だ。お前は今、『自分のやるべきことをやれ』」
「え?」
その言葉を残し、嵐も王宮の間を出た。一人取り残された、冬花はキョトンとして、彼の背後を見つめた。
—昔からそうだった。彼には何か隠しても、必ずバレてしまう。兄妹だからではないだろう。彼が隠し事をしていても、自分は何も気が付かない。
今のは、応援してくれているのだろうか、もう一度この国を離れて、異なる世界に行くことを、賛成してくれているのだろうか。いや、本当は心の中では反対しているだろう。それでも、自分を励ましてくれた。背中を押してくれた。
「ありがとう、兄様…」
だから、今回は必ず成功させる。
———彼の託してくれた想いにも応えるために