二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.528 )
- 日時: 2011/08/24 19:48
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: バトン完成です!
37 囚われの身
「ひ、ヒロトが!?」
「嘘…よね……?」
二人が驚愕な表情と声を上げるのは当たり前だ。同じ反応をしない方がおかしいだろう。なぜなら、ヒロトのあの強さは半端ない。夏未も一度は挑んだことはあるが、一瞬にして決着がついてしまうほど。つまり、鈴や月実よりも遥かに強い。
王の嵐や神官の悠也も彼の実力を認めている。でなければ、国はヒロトを王国軍に入れたりなどしない。ただ、外見からして、頼りなさそうだが。
「はい。二日前、罠にかけられ、今は王国軍の基地の地下で監禁されています。助けようと試みましたが、私の力ではどうにもできません…」
唇を噛み、両手を握りしめた。自分の力ではどうにもならないことが、とても悔しいのだろう。
「とにかく今は急ぎましょ。ヒロトたちを助けられるかもしれないわ」
すでに太陽は沈み、代わって満月が昇りはじめ、空が暗くなってきた。そろそろ帰らなければ、魔物たちの行動がますます活発になってくる。
「うん。でも、この熊は連れて行った方がいいよね?どうする?」
「私がリトルポーションを持っています」
リトルポーション—その名の通り、この薬を飲ませれば、体を小さくすることができる。もちろん、人間にも有効であるが、人によって効いている時間が異なっている。短くて3時間、長くて5時間。大体の魔物は短くて1.5日、長くて4日、と言ったところだ。
月実は腰に下げてある小さな袋から、赤い液体を取り出すと、そっと倒れている熊に近づき、開いている大きな口に瓶ごと放り投げた。すると、熊はどんどん小さくなり、最終的には手のひらサイズにまでなった。
「こうして見ると、かわいいのにね」
「無駄話は後回しにしましょう…急がねば…」
月実の表情にも焦りの色が見られてきた。鈴も美麗も互いの顔を見つめ、強くうなずくと、彼女の後を追って、駆け出した。
「完全にこっちの戦力負けだね…」
牢屋のような場所に荒々しく突っ込まれたのは、大体二日前だろうか。二人の少年と少女がそこで座っていた。抵抗する様子は全くないようだ。
そのうちの少年—赤色の髪が外にはねていて、小さな窓から差し込んだ月明かりが、彼の真っ白な肌を照らしている。基山ヒロトと同じ、彼もヒロト。この魔法界において、最年少でトップクラスに進級した少年だ。
しかし、今はただの牢屋につかまれた囚人でしかない。武器ももちろん没収され、移動用の道具も全て取られてしまった。その上、この牢屋はただの牢屋ではない。魔力が完全に抑えられ、魔法が使えないのだ。抵抗するだけ無駄なことだ。
「私があの時、ヒロトを助けていなければ、こんなことには…」
「ねぇ、今、結構酷い発言したよね?」
「いや、そういう意味ではない…私はお前を助けようとしたのではなくて、相手の魔法で騙されて、分身を助けようとした」
「あっ、そういうこと」
もう一人、一緒にいるのは、青く肩まである髪が耳の付近では白色になっている。八神玲奈—ヒロトの補佐役だ。彼女も同じ、王国軍に入っていたが。
「完全に騙されたな。あの組織はもとから王国軍などではなかったな」
「あぁ…」
暗い表情でヒロトは答えた。嵐からの期待もあり、今回の事件は彼への裏切り行為だ、と心の中で勝手に決めつけていた。
玲奈も彼の表情にはため息をつくしかなかった。どう励ましても、立ち直れなさそうだ。逆に言葉をかければ、彼の首を絞めつけることになるだろう。
「助けを待つとしてもな…もう遅いだろうな」
「あぁ、狙いが円堂くんだとすれば、本当ははやく国に帰りたいんだけどね…全部『アルティス』の仕業だったとはね…」
王国軍を影から操っていたのは、アルティスの仕業だった。そして、王国軍を立ち上げた理由が、全て円堂を自分の物にするための策略だった。それに気づいたヒロトと玲奈はアルティスに捕まったのだ。今の状況では、いつ処刑されてもおかしくないだろう。
「月実ちゃん…大丈夫かな」
「月夜の舞姫と謳われているんだ、心配はいらないだろう。あいつの強さはお前も知らない訳ではないだろう?」
いつもなら玲奈の問いかけに迷いなくうなずける。彼女の強さは夏未と同等だ。そう簡単には倒されない。しかし、この状況だ、ヒロト自身としては不安ばかりが募る。自分が殺されても別にかまわない。だが、自分のせいで玲奈や月実も道連れにされては、死んでも死にきれない。
「王がすぐに行動を起こすだろう…だが、今は円堂たちが問題だ。あいつ等のことはあまり知らないが、夏未の話が本当だとすると、王の反対を押し切ってまでも、あの世界に行くだろうな」
「あぁ、それをどうしても阻止しないと…でも、今の俺たちじゃあ、どうにもならないことだよ」
「……」
ヒロトの言っていることは事実だ。円堂たちがあの世界に行ったとすれば、それはアルティスの思うつぼ。彼は円堂たちがダークエンペラーズを倒すこと時を待っている。なぜ、それをやる必要があるのかは、分からないが、アルティスのやることだ。いいことは絶対に起きないだろう。それだけは確信できる。
「結構調べられているのですね」
「!?」
そこへ現れたのは、黒衣を着た小さな少女。歳はヒロトと玲奈より3、4歳くらい幼く見える。
「お前……アルティスの手下か?」
「違う…と言ったら嘘になりますが、本当ではありません」
少女は奇妙な言葉を言い放つと、黙ってヒロトと玲奈を閉じ込めている牢屋の檻に手をかざした。