二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ”絶望”と”希望”交わる世界で。 魔法・アンケ募集! ( No.110 )
- 日時: 2011/07/09 13:39
- 名前: 藍蝶 (ID: fjkP5x2w)
- 参照: 雛が……死んじゃった……
第9話 「封印されし魔具」
「いっちゃいましたね。あの二人」
苦笑いで言う由梨菜。その顔には関心と呆れの二つの意味があった。
「う〜ん……彩染……さんの事は分からないが、王女はああいう人だからな」
「最近俺も分かってきたような気がします……それ」
近くの岩に腰掛ける拓人と光流。
この3人は目立った事はしないが、内心かなりの苦労者なのではないだろうか。
「あっ!」
黙っていた優乃が驚いた様な言葉を発した。何があったというのだろう。
スッと優乃が指差した先に、他の3人も目を向ける。
そこには、蒼き炎を纏った巨大な龍がゆうゆうと泳いでいた。
「何ですか、アレ……」
少しずつ青褪めていく由梨菜。普通の反応はそうだ。
「炎を纏ってますけど、蒼いし……水系なんですよね?」
「……断定は、出来な……」
「出来る」
拓人の言葉を優乃が渡った。
「アレは、”スモディオ・ガーレンクス”。……此処の、ボス」
「「「え!?」」」
3人は”ボス”という言葉に驚きを隠せない。目の前を優雅に舞うあの無駄に大きい龍が、
刹那曰く「恐ろしい道」の主だとは。
「……あ、レ?」
優乃が、疑問符を浮かべた。何かあったのだろうか。
「何であたし……あんな奴の事知ってんの?見た事も、聞いた事も無いのに……?」
信じられないという目で優乃はただただ立ちつくす。
「と……とりあえず、ここのボスだというのなら尚更逃げましょう。無鉄砲に突っ込むより身の安全を優先しなくてはなりませんし」
光流の言葉で我に返ったらしく、そうね、といつもの口調で隠れ場を見つける為、辺りを見回し始めた。
「あ、あそこ!!」
そう言って由梨菜が示した先には、小さな穴が空いている大きな岩が。
「早くッ!」
急いで其処へ急降下。というか潜水。
穴の中は意外と広く、まぁ、いわゆる洞窟。
でも、この世界とは明らかに違う特徴が雑把に言って2つ。
まず、此処は海の中ではなかった。
普通の洞窟。先程まであの海水の中泳いでいたにも関わらず、それは何か特殊なバリアで守られているような感じ。
とりあえず、一切海水は侵入してこない。
そして2つ目。この世界では……ありえない事。
”火”が点いていた。
刹那によると「ここはヒトに対応した酸素しかない空間」。火が点くなんて、普通にあり得ない。
大体この世界で火を見た事のあるヒトはほとんどいないだろう。
そんな不気味な空間の中歩いてると(先頭は優乃と光流である)、一人の老人が焚火の前で石に腰掛け、佇んでいた。
「……珍しいねぇ、ここにヒトがやってくるとは。海の血を受け継いだ純粋な者ではない、という事か……」
その老人は、白くて長い髪と、顎からの髭を伸ばし、白淵の眼鏡を掛けてニコッと微笑んだ。
口調からして、優しそうな老人である。
「あの、俺達モンスターから逃げて来たんですけど……ここは、一体どうなっているんですか?」
光流の言葉である。老人は所々色んな色に光る岩の壁に手を伸ばした。
「ここは……一つの世界に一つしかない”凛殿郷(りんでんきょう)、翡翠葛(ひすいかずら)”じゃ」
「凛殿郷……翡翠葛?」
全員が疑問符を浮かべる。
「そう、凛殿郷。意味は知らなくて良い。それよりももっと面白い話はあるぞ」
「面白い……話?」
「そうじゃ」
由梨菜の問いに、老人は優しく頷く。
「7つに分けられたこの世界には、7つの”魔具”が存在しておる。伝説と言われた、な」
「「「「伝説ッ!?」」」」
そりゃあ、いきなり伝説と言われれば驚くだろう。
4人は口を開いたまま硬直。無理もない。
老人は続ける。
「そう、伝説じゃ。世界にいる一匹の精霊が持っておる。神を倒す唯一の武器としてな」
「神を……倒す!?その精霊はどこに居るんですか!?教えてくださいっ!」
光流は老人に深く頭を下げる。
リン曰く「カケラは確か神が守ってるのよねぇ」との事だからである。
でも、老人は中々首を縦に振らない。横に振ってばかりだ。
「それはいけない。精霊は、神にはかなわぬが相当な実力を持つ。今のお前らでは、まず敵う事はないだろう」
「ですが……」
「魔具が欲しい理由は分かっておる。カケラ集めでもしておるのじゃろう?だが、散歩も終わりだ。早く生まれ故郷へお帰り」
全員が黙ってしまった。
一つ目の理由は、「カケラ集め」という事を見透かされていた事。
二つ目は「散歩」という言葉。それは4人に深く傷を負わせることになった。
「ですけどッ!」
優乃が、口を開いた。
「あたし達は光の姫君を主君とし、この世界を救う為に旅を始めました。それを辞めろとは言語道断。精霊の場所を教えろッ!!」
そう言った優乃の眼は、赤みを帯びたものへとなっていた。
怒りも勿論理由に入るが、彼女には”他の目的”があるのだ。
しばらくして、老人はフッと鼻で笑った。
「これはこれは元気なお嬢さんじゃ。……分かったよ、教えよう。若者にはかなわない」
「「「えぇっ!」」」
再び驚き。横にしか振らなかった首も、縦に振った。
「ふふふ、若者はいいのう。……精霊の居場所は、この国の……王宮じゃ」
「王宮……」
由梨菜が洞窟の光が指す方向に顔を向けた。その表情は若干曇っていた。
「俺達が攻め落とす予定の城ですか」
同じく曇った表情の光流。
その言動に、老人は目を丸くした。
「何と!あの城を攻め落とすつもりなのかい!?言っておくがもうあの村には常人など一人も住んでおらぬぞ!?」
「それは承知の上ですよ」
苦笑いを浮かべる光流。
「そう、か。お前らは本当に行くのじゃな?」
コクン、とその場にいる4人が力強く頷いた。
「気をつけろ。これがお前らに送る言葉じゃ」
切なそうに微笑む老人。
それは、4人が実際に見た事のある”あの人”を思い出させるようなものであった。
第9話 終わり