二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ”Despair”と”Hope”交わる世界で。オリキャラ募集 ( No.25 )
日時: 2011/06/17 20:26
名前: 藍蝶 (ID: fjkP5x2w)

第1話 「紅茶は美味し、人使いは荒らし」



今日も太陽の光が絶え間なく窓を通り、部屋に入ってくる。
その部屋には豪華絢爛な装飾品、骨董品、秘薬、毒薬……王女様の趣味が、所狭しと並べられている。


「ギュエール、セインまだなの?遅すぎる」

金と紅で彩られた玉座に座るはこの世界の王女、リン。
肘をつき、退屈そうな顔で黄緑の髪の少女に話しかける。

「いつもの事ですよ、王女様……セインは天国楽園(ヘブンズガーデン)の主なのですから」

あくまでもにこやかに答える少女、ギュエール。
不満そうなリンのなだめ役。

「じゃがの……」

反論しようともボキャブラリーが少ないので、拗ねるように顔をそらした。
同時に、薄黄色の魔法陣が部屋のド真ん中で展開されそこからヒトらしき物が伸びて出てきた。
するとリンはあからさまに嬉しそうな笑顔になり、

「おぉ、セイン!やっと来たか!」

伸びたセインは魔法陣から落ち、うつ伏せのまま引き攣った苦笑いをして

「はい……何の、用でしょうかぁ……」

リンは満面の笑顔で、

「紅茶を淹れろ」

と言った。

「そ、それだけですか……なら、帰……」

と言いかけた途端、セインの首に白い糸が巻き付いた。
王女特製のヨーヨーである。

「紅茶を淹れろ……そう申しておるのじゃぞ?僕の命令に背くなら……」

ヨーヨーの糸を、リンが思いっきり引っ張った。

「ぃだいいだいいだいっ!!分かりましたっ!す、すぐぐぐ……淹れますぅぅ!!」
「そうか、なら良い。早く淹れろ」

パッと糸をセインの首から離す。
薄らと赤い筋が通っていたが、リンは気付かない(フリをしている)。

「全く……なんで僕が……ギュエールが居るってのに……」

ブツブツ文句言いながらも手際よく紅茶を淹れるセイン。手慣れたもののようだ。

「ふん、ギュエールの紅茶は見た目に添わず不味いからな。わざわざお前を呼んでいる」

(何その理屈……)

適当な理屈に呆れながらも、隠し味(らしき物)”ラファエルの右翼”を粉末状にした物を入れる。
ラファエル、という天使から採れる翼は食用にして用いられることがある。
ただしそれは右翼限定の話で、左翼は薬にしか用いられずとてつもなく苦い。

「はぁ。はい、どうぞ」

なるべく音を出さないように紅茶をテーブルの上へ置く。

「うん、良い香り。さすがセイン。雑用係の名は建てじゃないって事?」

ちなみにセイン、王宮内でのあだ名は”雑用係”。言われるのにそうとう慣れてるようで、はいはい……程度の返事しか出さない。

「おかわり」
「何杯飲む気ですか」

一杯飲み終わって数分。軽く10杯程紅茶をおかわりするリン。
セインは突っ込むのに疲れ気味である。

「これで最後ですよー」

棒読みでそう言った後、紅茶を最後の1滴まで入れる。

「これで用は終わりだ。セイン、帰っていいぞ」

そう言っておもむろにセインの首元を鷲掴みにすると、展開した魔法陣に放り投げた。

同時にギュエールが部屋に入ってくる。

「あれ、セイン様は……?あ、王女様、今回の兵士、侍女希望者はこれだけ……でございます」

黒いクリップで留められた書類を丁寧にリンへ渡す。
サッと書類に目を通すと、3人しか希望者が出ていない。

「今回はこれだけか?」
「はい……以前より、かなり少なくなっておりまして……」

申し訳なさそうにギュエールは俯く。

書類に書かれた3人の名前はそれぞれ、
「空雪 優乃」
「神月 由梨菜」
「日聖 光流」
と書かれていた。

(ふぅん、3人共∞レベルか。少なくとも王宮の中では高い方だな。連れていくとしたらこの3人と誰かか……?)

フッと笑うと、開いた窓から見える蒼い空をまた眺めるのであった。


第1話 終わり