二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 62章 リオvsカミツレ② ( No.126 )
- 日時: 2018/02/13 21:45
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「もう1度お願いね、エモンガ!」
カミツレは最初に出したエモンガを繰り出す。
リオはカミツレの肩に乗ったエモンガをじっと見つめる。
(…こっちの作戦を話せば、カミツレさんは警戒してエモンガじゃない、別のポケモンを出す。
そしたらそのポケモンの力をしっかり見極めて作戦を立てようと思ったんだけど…勘が外れちゃった。
でも、油断は禁物よね)
「行くわよバルチャイ!騙し討ち!」
バルチャイはカミツレの肩を離れ宙に浮いたエモンガに真正面から突っ込む。
しかし衝突するとエモンガが受け身の体制を取った瞬間に、視界からバルチャイが消えた。
『?』
「下よ!」
カミツレの声も虚しく、エモンガはバルチャイの攻撃を下からまともに受けた。
「エモンガ、メロメロよ」
『エモッ☆』
攻撃を喰らったエモンガも負けてはいない。
上に飛んだ体勢を宙返りする事で整えると、エモンガはバルチャイに向かってウインクする。
瞑った目から出現したピンク色のキラキラしたハートはバルチャイを囲み、そのまま命中した。
「?何も起こらない…?」
リオは技が命中したのを確かにこの目で確認した。
しかしダメージや状態異常を受けた様子は見られない。
カミツレの様子を盗み見ても綺麗な笑みを浮かべているだけで、技のヒントは得られない。
(1度バルチャイをボールに戻す…?でも交代を読まれて、次に出した子にも今の技を出されたら意味が無い。
無意味にこっちの手持ちを晒すより、一か八か──指示を出して技の効果を知る!)
「バルチャイ乱れ突き!」
リオはバルチャイに攻撃の指示を出した────が。
『…チャイVv』
「バルチャイ…?」
聞こえなかったのか、バルチャイはその場から動かずエモンガを見つめている。
「乱れ突き!」
再び指示を出すが、結果は同じでバルチャイは動かない。
変だと思ったリオはスポットライトの光に目を細めながら、上空のバルチャイを見る。
すると、バルチャイの目がハートになっている事に気付いた。
「アレは状態異常?でも、私が知ってる物と違う…!」
リオが知る状態異常は麻痺や火傷、毒・猛毒、氷に眠り…混乱と怯みの8種類。
8種類それぞれの効果は覚えているが今のバルチャイにはどの状態も当て嵌まらず、
内心動揺が隠しきれないリオ。
そんなリオに、今度はカミツレが口を開く番だった。
「このエモンガ、可愛い顔をしてるけど実は♂なの。《メロメロ》は♂なら♀を、♀なら♂を誘惑して
名前の通りメロメロにしちゃうの。この技を受けた相手は普段より技を出し難くなるわ。
その子も、エモンガの可愛さの中にある男らしさにすっかり夢中みたいね」
「くっ…!」
艶笑するカミツレにリオは唇を噛む。
《メロメロ》の効果は分かったが、同時に厄介な技というのを思い知らされたからだ。
「技の説明も終わった所でフィニッシュよ。エモンガ、スパーク!」
エモンガは頬の電気袋から放電すると、その電気を自身に纏いバルチャイに向かって滑空する。
「躱して!!」
リオは回避を命ずるが、やはりバルチャイの目はハートのまま。
遂には効果抜群の技を受けてしまい、フィールドに叩き付けられた。
ハートだった目は、今はグルグルと回っている。
「バルチャイ、戦闘不能。エモンガの勝ち!」
「…ありがとうバルチャイ。ご苦労様、ゆっくり休んで」
リオは気絶したバルチャイを戻し、嬉しそうにカミツレの周りを飛んでいるエモンガを見た後、
天井を見上げる。
「さぁ、次は誰で来るのかしら?」
カミツレの声にリオは天井を見るのを止め、ふっと笑う。
「私の2番手はこの子です!」
そう言ってリオが次に繰り出したのは、フサフサした尻尾が自慢のチラーミィだ。
フィールドに立ったチラーミィにカミツレは顔を綻ばせる。
「綺麗な毛並みをしているわね、そのチラーミィ。とても大切にされているのね」
「ありがとうございます!」
「その綺麗な毛並みを乱してしまうけど…許してね。エモンガ、スパーク!」
『エモ!』
エモンガは再び電気を纏ってチラーミィに接近する。
「チラーミィ、ジェットコースターに乗って!」
チラーミィは頷くと、オレンジ色のレールを走るジェットコースターに飛び乗って
滑空して来たエモンガの攻撃を躱す。
チラーミィの跡を追う様にリオもまた、空いているジェットコースターに乗車する。
「逃がしちゃ駄目。追い掛けて、燕返し!」
「させません!アンコール!」
チラーミィは素早く拍手する。
すると高く上昇して《燕返し》の構えをしていたエモンガは下降し、電気袋から電気を放ち始める。
その様子を見たカミツレは、初めて困った笑みを浮かべた。
「必中技である《燕返し》と相手の戦略を乱す《ボルトチェンジ》、更には《メロメロ》まで
封じちゃうなんて…意地悪ね」
「これも戦略のうちです!」
すっかり遠くなったカミツレに聞こえる様に、リオは大きな声で叫ぶ。
「…そうね。この状態も少し経てば解けるし、暫くこの技を貫きましょう!スパーク!!」
ジェットコースターが1つ目の透明なトンネルを抜けるのを確認して、電気を纏ったエモンガは
チラーミィに思い切りぶつかる。
タイミング良く、ジェットコースターは足場の前で1度停まった。
「負けないでチラーミィ!スイープビンタ!」
リオはそこで降りて、攻撃を喰らっているチラーミィに指示を出す。
チラーミィはエモンガが逃げない様にマントを掴むと、尻尾を硬化させて数回叩く。
『エモー!!』
チラーミィの手を振り払い、上昇して電気袋からバチバチと電気を出すエモンガ。
そんなエモンガを凛とした声が制した──声の持ち主はカミツレだ。
「落ち着いてエモンガ。冷静さを欠いたら、貴方本来の戦いは出来ないわ。
2つ目のトンネルを抜けた時が勝負所よ」
『!…モンガ』
エモンガはカミツレの言葉にハッと目を見開くと、大きく深呼吸して頷いた。
(流石カミツレさんだな。自分は動けない、戦況が分かり難い、1つの技しか出せない…そんな圧倒的に
不利な状況でも焦りが殆ど感じられねぇ。…もう1つの職業のお蔭だな)
ずっと黙っていたアキラはカミツレの背中を見る。
その背中は直視出来ないくらい眩しく、光っている様に見える。
(俺は何度もこのカリスマ性に呑まれそうになったけど…)
「大丈夫だよ、お前なら」
聞こえなくても良い…アキラは遠くで拳を握っている金髪の少女に、小さなエールを送った。
ジェットコースターは、再び動き始める。