二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 63章 リオvsカミツレ③ ( No.127 )
日時: 2018/02/13 22:31
名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)


ジェットコースターが2つめのトンネルを通過する。
リオとカミツレが口を開いたのは、ほぼ同時だった。


「スパーク!」
「スピードスターよ!」

エモンガは電気を纏い、チラーミィは尻尾を振って星形の光を放つ。
電気と光が互いの身体に命中し、火花が辺りに飛び散る。
リオは飛んで来た火花を手で払うと攻撃態勢なのか──再び高く上昇したエモンガを見上げる。


(それにしてもあのエモンガ、思っていた以上に手強い…!)


バルチャイとチラーミィの攻撃を何度も受けているのに、防御が長けているのか未だ戦闘不能にならない。
♀の方のエモンガは隙をついてネットに落とす事が出来たが、♂のエモンガにはその隙が見当たらない。


(流石ジムリーダーのポケモン、といった所かしら)


そう思った後、リオはチラーミィに向かって声を張り上げる。


「チラーミィ!」

チラーミィがこちらの姿を見たのを確認するとリオは両手を挙げ、上を見た後に手を下ろす。
リオの摩訶不思議な行動にカミツレとエモンガは怪訝な顔をするが、チラーミィは笑顔で頷いた。
どうやら伝わった様だ。


「…何の相談か分からないけど、早く終わらせましょ。スパーク!」
「迎え撃つわよっ、スイープビンタ!」

滑空して向かって来たエモンガに、今度は硬化させた尻尾を振るう──しかし。


『ラー…ミミッ!?』
「!!」

急に曲がったジェットコースターにバランスを崩し、技は呆気なく避けられた上に、
エモンガの攻撃を喰らってしまった。


「チラーミィ!」
「ふふ、ジェットコースターは今度は私達に味方してくれたみたい」

カミツレの言葉にリオが拳を握り締めた丁度その時、エモンガの電気袋から出ていた電気が
ピタリと止まった。


「!」
「《アンコール》状態が漸く解けたみたいね。エモンガ、メロメロ!」
『エーモッ♪』

エモンガが飛ばしたハートは起き上がったチラーミィの顔に命中した。
少しずつチラーミィの頬が染まり始めた、と思ったら急に尻尾で顔を隠した。
恥ずかし気に尻尾の隙間からチラチラとエモンガの様子を窺う姿は、恋する乙女そのものだ。


『ラーミィ…』
「くっ…チラーミィまで!」

正に形勢逆転とも言える光景にリオは歯噛みする。


(せめて、エモンガともっと距離が空けば…!そうすれば態勢と作戦を立て直せるのに!)


リオの願いが届いたのか、ジェットコースターは徐々に速度を上げ始めた。
進行先には円を画いているレールがある。

お世辞にも速いとは言えないエモンガの飛行速度。
チラーミィの乗るジェットコースターとの距離はどんどん開いていく。


「よし!これなら直ぐに追い付かれない!」


(このチャンス、無駄にはしないわ!)


ほっと胸を撫で下ろしたリオの表情には明るさが戻っていた。
しかしバトルを見学していたアキラは小さく呟いた。


──ダメだ、と。


しかし目の前のバトルに全神経を使っているリオには、そんな小さな呟きに耳を傾けている余裕は無い。
聞こえているのは自分とカミツレさんだけ…頭では理解していても、
アキラは叫ばずにはいられなかった。


「馬鹿!早くチラーミィを 「アキラ君。今、私と戦っているのはリオちゃんよ」 …っ」

カミツレに注意され、アキラは続けようとした言葉を呑み込む。


(早く気付けリオ!そんな距離、何の気休めにもならねぇんだよ…!)


(このジェットコースターを使った皆が思う事は同じ。
「この距離なら攻撃を受けない」「作戦を立て直せる」。目で見える差という物を人は特に気にする。
だからそう思うのは当たり前。…でも、今のスピードならあっという間に一回転のレールに突入する。
スピードを殆ど落とす事なく進むそのコースは、乗っているポケモンの動きを封じる。
振り落とされない様にポケモンは手すりに掴まり、恐怖から目を閉じる。
つまりチャレンジャーのポケモンは手と視覚を封じられる。それに対して私のポケモン達は上空から、
他のレールから…いつでも攻撃する事が出来る。気付いた時には、一回転が終わったと同時にポケモンは
戦闘不能…今までずっとそうだった。私の後ろに居るアキラ君もその1人)


カミツレは目を閉じて、過去に挑戦して来たトレーナー達の姿を思い浮かべる。
驚愕、苦渋、憤怒。
果たして今、自分と戦っている少女はどんな表情を浮かべるのか。


(リオちゃんもその他大勢になるのか、それとも……ふふっ、ゾクゾクしちゃう)


一方、リオは──


(…変だわ)


こちらを見据えたまま、指示を出さないカミツレに疑問を感じていた。
リオは最初、カミツレが何の指示も出さないのはエモンガの攻撃が当たらないと判断したからだと思った。
しかし直ぐにその考えは「有り得ない」と消し去った。
何故ならカミツレはジムリーダーで、このジムを考え設置した人物だから。
ジェットコースターの速度は充分に熟知してる筈だし、こうして差が開いた時の対策もあるだろう。

それなのに指示を出さないという事は…


「考えられるのは、やっぱり1つかな」


「対策を考える必要が無い」──それこそが、リオが行き着いた答えだった。
現にカミツレが指示を出さずに黙っているのに、エモンガは慌てるどころか落ち着いている。


(絶対的な、勝てるという自信の秘密があの一回転のレールに隠されてるって事ね。でも、)


「その自信、私達が崩してみせる!」


リオの声が響き渡る。


ジェットコースターはいよいよ、一回転のレールに突入する。






*あとがき*

文の長さの割に、実は話は進んでないっていう(またか!
でも自分はカミツレさんを喋らせたり、長々と考え事させる事が出来て満足です^^←
今回の「ジェットコースターを使った挑戦者のポケモンは手と視覚が封じられる」という
カミツレさんの発言は、あくまで自分の実体験です。
ジェットコースターって安全バーが付いてるって分かってても、つい手すり(?)に強く掴まっちゃったり
目を閉じたりしちゃうんですよね…手を離せて目を開けてる人を見る度に
「あ な た が 勇 者 か」って思います(真顔

さて、次回はいよいよカミツレさんのエース登場!対するリオのポケモンは…!?
長くなりましたが、それでは次回もお楽しみに!