二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 64章 リオvsカミツレ④ ( No.128 )
- 日時: 2018/02/13 22:40
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
乗り物は一定の速度を超えると、人間の体が後ろに引っ張られる感覚に陥る時がある。
今のチラーミィは正にその状態で、後ろに飛ばされない様にと前屈みになって手すりにしがみついている。
そうしている内に、ジェットコースターはレールの半分…円を画いている所に差し掛かった。
そしてジェットコースターが逆さまの状態で止まった時、カミツレは口を開いた。
「これでトドメよ!エモンガ、燕返しっ!」
『エモッ!』
エモンガは先程までの飛行速度からは想像出来ない速さで、ジェットコースターに向かう。
そして無防備な標的──チラーミィに鋭い一撃を放ち、突然の攻撃に体力が尽きたチラーミィは
ネットに落ちる。
…そうなる筈だった。
『…?』
「どうしたの、エモンガ?」
困惑顔のエモンガに疑問を感じたカミツレは、目を凝らして遠く離れたジェットコースターの中を確認する。
そして細めていた目を今度は大きく見開いた。
(さっきまでジェットコースターに乗っていたチラーミィが居ない!)
「アクアテール!」
「『!』」
リオの声がした刹那、エモンガに影が落ちた。
見上げると尻尾に水を渦状に纏ったチラーミィが、こちらに向かって降って来た。
(やった…技を出せた!)
チラーミィの尻尾に纏われた水を見て、リオは無意識に拳を握った。
しかし流石はジムリーダー。カミツレが動揺したのは一瞬で、すぐにエモンガに指示を出すべく口を開く。
「ボルトチェンジで迎え撃つのよ!」
『エモ〜…ン、……エモォッ』
「!」
エモンガは指先から白い電気を作り出す。
…が、スポットライトの強い光で反射した水の眩しさに目を瞑ってしまう。
目を瞑った状態で放たれた球体の電気の軌道は僅かに逸れ、チラーミィの頬を掠めて天井に当たって
霧の様に消えた。
「いっけーー!!」
落下の勢いが加わった《アクアテール》は重い一撃となり、水飛沫が辺りに飛び散る。
「エモンガ!!」
チラーミィが尻尾を退かすと、そこには目を回しているエモンガが居た。
「エモンガ、戦闘不能。チラーミィの勝ち!」
「戻ってエモンガ。…不利な状況でも最後まで戦い抜いた貴方は、とても素敵だったわ」
エモンガをボールに戻し、カミツレはチラーミィを見る。
「よくあのジェットコースターから手を離せたわね。降りる為とはいえ、一歩間違えればネットに落ちる。
そんなリスクが高い賭けに指示も出されてないのに挑んで、それで勝っちゃうなんて…
そのチラーミィ、大物ね」
『ラミ、ラーミィ!』
カミツレの言葉にチラーミィは首を横に振った後、リオを見た。
「?」
「指示なら出してましたよ。《メロメロ》が放たれる前に」
「…あの変な動きか!」
「変な動きってのは余計だけど、アキラ正解。手を挙げたら【手を離す】。上を見たら【ジャンプ】。
手を下ろしたら【攻撃】。あれはその事を伝えるジェスチャーだったんです。
早めに指示を出したのは、覚悟を決める時間が必要だと思ったんで」
リオの解説にカミツレは驚く。
「もしかして最後に《スイープビンタ》でなく《アクアテール》を指示したのも、
こうなると分かってて?」
「スポットライトの光を利用しようって考えはジムに入った時からありましたけど…技の選択は賭けでした。
エモンガが視界に入らなければ《メロメロ》の力は薄まって【手を離す】と【ジャンプ】、
この2つは確実にやってくれると信じてました。でも、攻撃はエモンガを視界に入れて、
至近距離でしないといけない。《メロメロ》で技が出せずに反撃されて終わるか、否か──
どっちに転ぶか私もチラーミィも分からないから、正直…恐くて仕方なかったです」
大きく息を吐いて、ぎこちなく笑ったリオにカミツレは肩を竦める。
「その賭けに結局勝っちゃう貴女達の方がずっと恐いわ」
「あはは…」
「だけどね、それと同じくらい震えるの。強い挑戦者と戦える慶びに!」
両手を広げて告げると、カミツレは手に取ったモンスターボールに優しくキスをする。
「さぁ、もっと楽しみましょう!」
高く投げられたモンスターボールが音を立てて開く。
「スパークよ!」
リオ達が姿を確認する前に、そのポケモンは雷鳴を轟かせてチラーミィに体当たりし、
そのまま横を駆け抜ける。
攻撃を受け、膝をつくチラーミィ。
「チラーミィ!」
『ラ、ミ…』
チラーミィは自分を攻撃した相手を睨む。
そのポケモンもまた、止まってチラーミィを睨みつけた。
「華麗に駆け抜けるわよ……ゼブライカ!」
応える様にカミツレのエースポケモン──ゼブライカは蹄を鳴らした。
後書きと言うか、書いていて思った事→メロメロ+状態異常のコンボの鬼畜さは異常。