二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 65章 リオvsカミツレ⑤ ( No.130 )
日時: 2018/02/13 22:47
名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)


「あの子が、カミツレさんのエースポケモン……」

リオの小さな呟きが聞こえたのか、ゼブライカは横目でリオを見た。
しかしそれも一瞬で、再び自分を見上げているチラーミィを見下ろす。
鋭く吊り上がった青い瞳がチラーミィを射抜く。

しかし、並のポケモンなら気圧されるであろうその瞳にチラーミィは、


『…ラミィィィ!!』

竦むどころか更に強く睨み返した。
そして立ち上がって自分を奮い立たせるかの様に、大きく叫んだ。


「…っ、」

チラーミィの叫びに、リオは胸の辺りまで挙げていた手を止める。
その手にはチラーミィのボールが握られていた。
リオは静かに、荒い息を繰り返すチラーミィに語りかける。


「…戻って、チラーミィ」

そう言ったリオだったが、ボールの開閉ボタンはそのままだ。
強制的にボールに戻す事も出来る。
でもそれをしないのは、チラーミィの気持ちを尊重したいから。


『ラーミッ!!』

そんなリオの意思に気付いたのか、チラーミィは笑って頭を振った。
素直な性格のチラーミィが初めて見せた我が儘だった。


「…分かったわ、チラーミィ。貴女の気持ちを汲む…けど、これ以上ダメだと思ったらすぐ戻すからね!」

ボールをベルトに戻したリオに、暫く静観していたカミツレが声を掛ける。


「このままチラーミィで続行かしら?」
「はい!」
「それでは、試合再開!」

審判の掛け声の後、直ぐさまカミツレが動いた。


「ゼブライカ、二度蹴り!」

ゼブライカは背を向けると、チラーミィ目掛けて脚を蹴り上げる。


「ゼブライカの足に、スイープビンタ!」

一拍遅れて、チラーミィは硬化させた尻尾をゼブライカの脚に叩き付ける。


(効果抜群の《二度蹴り》を躱す事は出来ないけど、こうして脚に直接攻撃を当てれば
ゼブライカの攻撃を弱める事が出来る。それに身体に直接攻撃されるより、
フサフサの尻尾で攻撃を受けた方がダメージが少なくなる)


リオが考えを巡らせている間にも、チラーミィは身体を捻って攻撃を出し続ける。


(そして技の名前通り2回しか攻撃出来ないゼブライカに対して、チラーミィのこの技には制限が無い。
攻撃が2回で終わってもチラーミィの特性【テクニシャン】で《スイープビンタ》の威力は上がるから、
攻撃力はこっちが上)


『ラーミィッ!』
『!!』

チラーミィの3撃目がゼブライカの顔に命中する。
2発はゼブライカの攻撃で相殺されてしまったが、リオの予想通り後退したのはゼブライカだった。

しかしそれでも、ゼブライカに余程自信があるのか──カミツレは笑みを浮かべたまま。


「上手くダメージを減らしたわね。でもここまでよ」
「…」

リオはチラーミィの身体を見て、指を動かす。


「ゼブライカ、ニトロチャージ!」

その場で足踏みを始めるゼブライカ。
やがてその動きは激しさを増し、ゼブライカの身体から湯気が立ち上がる。
白い湯気が視界を悪くし始めた頃。湯気の中から炎を纏ったゼブライカが飛び出して来た。


(…速い!)


「チラーミィ戻って!!」

リオはその速さに息を呑み、チラーミィをボールに戻す。


「…ご苦労様。ゆっくり休んでね」
「チャレンジャー。そのチラーミィは戦闘不能と見なして宜しいですか?」
「構いません」
「ではこの勝負、ゼブライカの勝ちとします。チャレンジャーは次のポケモンを出して下さい」

審判の言葉に頷き、リオは3個目のボールを手に取り…苦笑した。
アキラはチラーミィの戦いを振り返り「あ、」と声を漏らす。


「そうか…それなら、リオの判断は正しいな。普段のチラーミィなら《アクアテール》をぶつけて
 炎を消すなりして、威力を弱める事だって出来た。でもチラーミィは体力が限界。それに加えて、」
「…まさか、エモンガを倒した直後に特性の【静電気】が発動するなんてね」


エモンガを倒した時には気付かなかったが、ゼブライカが登場して、チラーミィに《スイープビンタ》を
指示した時──その時にリオは気付いてしまった。
チラーミィの尻尾の周りを微弱な電気が走り、そのせいで攻撃が一拍遅れたのを。

体力が限界で、麻痺状態になっているチラーミィがこれ以上戦えないのは明白だった。


「バトルは何が起こるか本当に分からないわね…」


(でも、だからこそ面白い)


「さぁリオちゃん。最後のポケモンは誰?」
「私の最後のポケモンはこの子です!出て来て、ヒトモシ!」


リオが繰り出した3番手は相棒であるヒトモシだ。
チラーミィより更に小さいヒトモシに、ゼブライカは鼻を鳴らす。


「また随分と可愛らしい子が出て来たわね」
「見た目で判断したら火傷しますよ。勝ちに行くわよ…ヒトモシ!」
『モシ!!』

リオとヒトモシの目に、闘志の炎がメラメラと燃える。


その時、ヒトモシの紫色の蝋燭の炎が大きく揺らめき、一瞬オレンジ色に輝いた──





相変わらず亀更新で失礼します…霧火です。
長く粘っていたチラーミィですが、今回遂にダウンしてしまいました。こうして見ると
チラーミィの防御力が長けている様に見えますが、実はそうでもなかったりします。
「なら何故?」と聞かれると、その理由はチラーミィが殆どジェットコースターに乗って
バトルをしていたから。それが答えです。

例えばチラーミィが乗ったジェットコースターが…


==|チラーミィ|→ ←エモンガ

上の様にエモンガに向かっていたら、接近してる分ダメージは大きくなってましたが
チラーミィの乗っていたのは図とは逆、つまり


←|チラーミィ|== ←エモンガ

こんな感じに進むジェットコースターでした。
エモンガの飛行速度は速くないので(※あくまでこの小説では、です)差は開く一方。
特に《スパーク》や《燕返し》と、技構成の半分が物理技の♂のエモンガは相手に
接近しないといけないのに、相手はジェットコースターに乗って移動しています。
…詳しく表記しませんでしたが、速いジェットコースターに追い付いて攻撃を当てた
エモンガの苦労(疲労)は並大抵の物ではありませんでした。
ずっと飛びっぱなしで相手を追い、攻撃しないといけませんから…攻撃を当てるまでに疲れて、
どうしても技の威力が弱まっちゃうんです。なので、あの一回転のレールは本当にエモンガ達にとって
一発逆転出来る、救いのレール…という勝手な設定です←

…すみません、話が逸れました。つまり、そんなワケでチラーミィへのダメージは軽減されました。
説明分かり辛くてごめんなさい(汗)。

後書きが無駄に長くなってしまったので、最後は簡潔に。
次回はエース対決です。それでは、次回もお楽しみに!