二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 79章 修行開始 ( No.152 )
- 日時: 2014/04/19 10:40
- 名前: 霧火 (ID: SjhcWjI.)
そんなやり取りがあって、前回の冒頭に至る。
無意識に寄せていた眉間の皺を伸ばし、リオは開口した。
「お母さん…いくら何でもソレは無いんじゃない?」
「?無いって何が?」
自分の発言におかしな所などあっただろうか──そう言わんばかりに目を瞬かせたリマに、リオは脱力する。
「手持ちのポケモン全て使って良いって事よ。…ハンデも度が過ぎれば、その人に対する侮辱になると思うわ」
「…ごめんね、そんなつもりで言った訳じゃないんだけど……」
「うん、分かってる。ちょっと意地悪したくなっただけだから、そんな落ち込まないでよ」
眉をハの字にした母親を慰めてからリオは辺りを見渡した。
「それで、お母さんが使うポケモンは?」
「待っててね。今呼ぶわ〜」
気を取り直したリマは煤けた笛を取り出すと、静かな音色を奏でた。
暫くすると草木を掻き分け、1匹のポケモンが姿を現した。
リオはその姿を確認して思わず苦笑した。
「…この子が相手?」
自分の前に立ちはだかったポケモン──カビゴンを見てからリマに問い掛けた。
「本格的な修行に入る前に、まずはリオのポケモン達の力をざっと見ておきたいからね〜♪そう考えたらこの子が
適任だったの〜」
確かにカビゴンは弱点も少ないし体力もあるので、リオのポケモンを纏めて相手に出来るだろう。
リマの言う事は一理ある…しかしこのカビゴンは寝てばかりで、激しい動きをしている所など見た事が無かった。
(戦いとは無縁だと思ってたカビゴンと戦う事になるなんてね)
心の中で苦笑するが、相手は母のポケモンなので気持ちを切り替える。
葉っぱが地面に落ちるのを合図にリオは持っていたボールを投げた。
「まずはこの子が相手になるわ」
「先鋒はシビシラスか〜…よろしくね〜♪」
モンスターボールの光が止み、現れたのはシビシラスだ。
シビシラスは静かにカビゴンを見上げる。
「まずはカビゴンの動きを止めるわよ。電磁波!」
シビシラスは身体を小刻みに震わせて微弱な電気をカビゴンへと放つ。
何もせず、ボーッとその場に佇んでいたカビゴンは《電磁波》を浴びて麻痺状態になり、その場に座り込む。
「続けて体当たり!」
そこへすかさずシビシラスが渾身の力でぶつかる。
動きが鈍っているカビゴンに攻撃が連続でヒットするが、カビゴンの身体は微動だにしない。
「タイプ一致技じゃないとダメージは雀の涙程度ね…今度はスパーク!」
シビシラスは身体を捻らせると、今度は電気を纏ってカビゴンに突進する。
今まで動かなかったカビゴンの身体が僅かに揺れた──
ガシッ
「『!』」
「捕まえた〜そのまま地面にペチン☆」
しかし攻撃が急所に当たったのも束の間、シビシラスはカビゴンの両手に捕らえられ、そのまま地面へと
叩き付けられてしまった。
「シビシラス!」
カビゴンが手を持ち上げると、地面に陥没した状態でシビシラスが目を回していた。
「…戻って、シビシラス。次は貴女よ!」
戦闘不能となったシビシラスを戻し、用意してあった2個目のボールを投げる。
「スイープビンタ!」
地に脚を付けたと同時に、2番手──チラーミィはカビゴンとの間合いを詰めて硬化させた尻尾をカビゴンの額へ素早く数回打ち付けると、バク転でカビゴンから離れて距離を取った。
シビシラスの時とは違うキレのある動きに、尻尾を掴もうと伸ばしたカビゴンの手は空ぶる。
「カビゴン、反撃よ〜のしかかり〜」
「躱して!」
跳ねながら両手を広げて倒れてきたカビゴンを、チラーミィは難なく躱す。
しかし流石は重量級のポケモンといった所か。
カビゴンが倒れただけで大きな地鳴りが発生し、チラーミィは体勢を崩して後ろに転んでしまった。
攻撃を決める絶好の機会にリマの目が光る。
「うふふ。もう1度のしかかり〜」
起き上がり再び倒れてきたカビゴン。
身体の幅がある分、離れていた距離が一気に縮まりカビゴンの身体はチラーミィの真上を取った。
「チラーミィ!アクア、……!」
技の名前を言いかけて止める。
普段のチラーミィならこちらが命令せずとも自ら判断し、動くハズだ。
だけど、ソレをしないのは──
(後ろに倒れたせいで尻尾が圧迫されて動かせないんだわ…!)
チラーミィの技は尻尾を使って出す物が大半で、尻尾を動かせない今《アクアテール》の水の勢いで
危機を脱する事は出来ない。
(このままじゃ押し潰される!)
迫り来る巨体に、リオとチラーミィは歯を食いしばる。
身動きが取れない今、チラーミィは完全に押し潰されるかに思えた。
『…!』
しかし、突然カビゴンが顔を歪めて地面に片手を付いた。
シビシラスの《電磁波》による麻痺が発生したのだ。
「チラーミィ、離れて!」
リオの声にチラーミィは慌てて後退りしてカビゴンの下から脱出した。
ホッとするリオとは対照的に、リマは唇を尖らせる。
「また失敗?痺れて攻撃出来ないのは嫌ね〜」
「スピードスター!」
チラーミィは飛び上がり、尻尾を振って星形の光を放つ。
大きな威力は無いが、確実にカビゴンの体力を削っている。
その証拠にカビゴンの身体のあちこちに、小さな傷が付き始めていた。
「……うん。仕方ないわね、少し早いけど眠るのよ〜」
カビゴンは大きく欠伸して目を閉じると大の字に倒れた。
一見すると試合放棄した様にも見えるが、スヤスヤと寝息をたてるカビゴンの傷は癒え、身体に流れていた微弱な電気も消えた。
そして寝惚けながら首から下げていたカゴの実を食べると、完全に目を覚ました。
「全回復♪カビゴン、「攻撃なんてさせない!チラーミィ、歌う!」…よ〜」
チラーミィは深呼吸して、目を閉じて歌い始めた。
心地良い綺麗な歌声に聞き惚れ、やがて睡魔に襲われたカビゴンは再びその場に倒れた。
「あらあら。チラーミィは《歌う》を覚えていたのね〜」
「お母さんが来る前にね。元々素質があったのか、直ぐに覚えてくれたわ」
軽く返したリオだったが、チラーミィの《歌う》は多くの犠牲を払って完成した。
実はポケモンを受け取ったリオ達が【バトルサブウェイ】前のベンチに座っていたのは、チラーミィが
ミュージカルの歌を口ずさんでいる人の真似をしたら偶然技が完成してしまって、リオとアキラ、ジョーイさんとタブンネ以外の人やポケモンが眠ってしまい、またポケモンを回復する羽目になったジョーイさんに
追い出されたからだったりする。
「お母さんがカビゴンにカゴの実を持たせてるのは知ってたし、その実を持たせてるって事は《眠る》を覚えてる
可能性が大。それなら早めにカビゴンに《眠る》を使ってカゴの実を消費して貰おうと思ってシビシラスに
《電磁波》を指示したのに、中々眠ってくれないんだもん……このまま歌えずに終わるかと思ったけど、」
カビゴンが寝ているのを確認し、リオは言葉を続ける。
「思った以上に麻痺に助けられたわ。結果、カビゴンも眠ってカゴの実を消費してくれたし、これで直ぐに起きる
事は出来ない。…気持ち良く眠ってるトコ悪いけど、攻めさせて貰うわね。アクアテール!!」
リオは不敵な笑みを浮かべ、チラーミィは水を纏わせた尻尾をカビゴンの脳天へ振り下ろした。
暑さのピークが自分の中で越えたので、次の話こそ早くアップ出来そうです。
目標は3日以内!