二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 89章 飛び込め! ( No.169 )
- 日時: 2018/05/01 20:28
- 名前: 霧火 (ID: fjWEAApA)
リオは途方に暮れていた。
クマシュンにダメージを与え一足先に地下1階に来たまでは良かったが、階段を降りた正面は壁、右に道は無く
左奥に流砂があるだけで他に何も無かったからだ。
隠し扉でもあるのかと正面の壁を叩いてみたが何も起こらず、ならば天井に隠し階段があるのかとバルチャイに
調べてもらったが、こちらも何も無かった。
そしてリオに残された最後の選択肢は──流砂に飛び込む事だった。
しかし落ちた先に何があるか分からない上、流砂自体が危険だ。砂から抜け出せず、そのまま…という可能性も
無いとは言い切れない。
ゲームの主人公なら迷わず飛び込むだろう。しかしコレは現実で、ゲームの様に気軽に流砂に飛び込むなど
自殺行為だ。
「まずはリュックを流砂に落として、安全を確認してから行こう」
他に道は無いのでCがこの流砂を通過したのは間違い無いが、念には念をだ。
バルチャイが頷いたのを確認して、リオはリュックを流砂の穴に落とした。
『「……」』
リュックはグルグルと回転しながら砂に呑まれていき、数秒後〝ボスッ〟という音が穴から聞こえて来た。
「…リュックが落ちたにしては音が軽い気もするけど、何かがクッションの役目を果たしたのかも。何にせよ、
落ちても大丈夫そうね」
バルチャイに声を掛けた時、左側から何かが飛んで来た。
間一髪、飛んで来た物に気付いたリオは地面に伏せた。
リオの頭上を通過して飛んで来たソレは壁に当たり、氷の壁へと変貌させた。
「ココを氷の城に作り替える気なのかしら…」
「ふっふっふ!追い詰めたぞリオ!」
服に付いた砂を落としながら凍った壁を見ていると、Aが降りて来た。
最後の階段を1段飛ばして降りた際、振動でAに抱かれたクマシュンの鼻から新しい鼻水がだらりと垂れた。
「まさかバルチャイじゃなくて私を狙ってくるなんてね」
「ゴメンね!間違えた!」
明るく謝ったAにリオは微妙な顔をする。
間違えで済ますには余りにも危なかったからだ。
そんなリオを見たAは気を取り直す様に咳払いをし、天井を指差す。
「よーし!今度は間違えないぞ。鼻水の一部を上に飛ばして、凍える風!」
クマシュンは地面に降りると命令通りの手順を踏んだ。
すると空中で分解した少量の鼻水は冷気で氷柱へと変わり、バルチャイへと降り注いだ。
背中と翼に氷柱が刺さり、バランスを崩したバルチャイは地面に落ちた。
「バルチャイ!」
「ふっふっふ。見たかクマシュンの疑似《氷柱落とし》!本物はまだ覚えられないけど、今のはグサッと
効果抜群だね!」
得意気に胸を張るAと鼻水を出してボーッとしているクマシュンを見て、リオはバルチャイの怪我を確認する。
(元になった水分が少量だから翼が貫かれる事は無かったけど、このダメージはまずい。回復したいけど、
この階じゃ無理だわ)
回復技はこちらの素早さが高い時、相手と距離が離れている場合で使うのが1番ベストだ。
何故なら回復に専念すると隙が生まれるし、相手に攻撃するチャンスを与えてしまうからだ。
(バルチャイは今の攻撃で翼を痛めてすぐに動けそうにないし、こんな狭い所で回復してもあっという間に距離を
詰められて……やられる)
リオは流砂を見遣る。
周りの砂を呑み込んでいく穴は不気味な程、真っ暗だった。
「トドメだよ!傷口に染みちゃえ!塩水!」
鼻水をすすり口から塩水を噴出したクマシュン。
全身に傷を負っている今、あんな物を喰らったら痛みが増幅するだけでなく細菌が繁殖し、傷の治りが遅くなる。
そうなったら広い場所で《羽休め》をして回復に専念しても、いつも以上に時間が掛かるだろう。
結局、最後に辿り着く結果は同じになってしまう。
(迷ってる場合じゃない、か)
「バルチャイ!!」
リオはバルチャイを抱き上げると流砂に飛び込んだ。
突然のリオの行動に驚いたAとクマシュンの動きが止まる。
瞬きをして再び目を開いた時には、既にリオ達の姿は残っていなかった。