二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 94章 答え合わせ ( No.175 )
日時: 2019/04/07 16:49
名前: 霧火 (ID: OQvXdNWS)

「目を瞑っている時、入り口近くで砂が落ちる音がした。…変だと思ったわ。1階はあちこちに流砂が
 発生していたけど入り口に流砂は無かったハズだからね。現に今、ここに流砂は存在しない。
 じゃあ、何で砂が落ちる音がしたのかしら?」

「…Cが階段を駆け下りたから、その振動で天井の砂が落ちた?」

「いいえ。地下への階段は段に砂が積もっていてクッションの役目を果たしていた。
 いくら階段を駆け下りた所で振動で天井の砂が落ちるなんて事は起こらない」

きっぱりと言ってのけたリオにCは表情を変えず頬を膨らませる。


「…結局、何が言いたいのか分からない」
「じゃあストレートに言うわね。貴女は囮で、宝を隠したのはゴチミルなんじゃない?」

表情を変える事なく立っているCにリオの顔が引き攣る。


(肩が跳ねたり息を呑んだり、そういう動揺1つ無いのね…もう少し追及してみようかしら)


「貴女はやけに自分が宝を隠しに行くと強調していた。最初は確認や、目を瞑っている私達が分かる様に
 合図のつもりで言っているんだと思った。でも、そうじゃなかった。宝を隠しに行ったのは貴女だと私達に
 思い込ませるための、演技だったのよ」

リオは粉々に砕かれた鉄球の破片の1つを摘まみ上げる。
破片とはいえ数センチの厚みがあるそれは重量感があり、人差し指と親指だけで持つのが辛くなったリオは
破片をそっと手の平に乗せた。


「こんな重い鉄球を軽々と持ち上げて粉々にした力を見た後に目を開ける気にはなれない。
 貴女はそれを利用して、ゴチミルを見張りではなく宝を隠す役目にした。貴女が宝を隠しに行くフリをして
 地下を走り回っている間に、ゴチミルは《念力》で砂を持ち上げて宝を埋めた。持ち上げた砂は、
 そっくりそのまま戻すとバレちゃうから流砂みたいに時間を掛けて落とす。砂が落ちる音がしている間、
 口を塞がれているのにあの人達が必死に声を出そうとしていたのは、ゴチミルが宝を隠していると
 私達に伝えたかったから…それが理由ね」

全てを話し終えたリオはCの反応を待つ。
彼女もリオの話が終わりだと気付いたのか、小さく口を開いた。


「それが真実かどうか、貴女の目で確かめれば良い」
「ええ。そうするわ」

Cは先程と同様、全く動じていなかった。
しかしリオは自分の考えを信じ、入り口近くに立つゴチミルへと歩み寄る。
そしてゴチミルの前で立ち止まると、ゴチミルは目を閉じて右へ退いた。


「…てっきり邪魔されるかと思った」
「リオの相手はAだもん。Cには戦う気も妨害する気も無い。リオこそ、ゴチミルを攻撃しないの?」
「無抵抗な相手を攻撃しないわよ。悪い事をしたなら考えるけど、そのゴチミルは悪い事してないし」
「…!」

今まで動揺の1つすらしなかったのに、Cはリオの何気ない言葉に目を丸くした。
そんなCに首を傾げつつ、リオは持っていた破片を傍に置いてゴチミルが居た地面を掘り始める。
乾燥した柔らかい砂は掘る事に苦労せず、やがて灰色の塊が出て来た。


(コレが宝?)


持ち上げた灰色の塊は腕の中に納まるくらいに小さかったが、意外と重い。
砂を払って見てみると、甲羅に似た形をしている。
Cが何も言わない為、価値がある物なのかリオにはさっぱり分からない。


(宝と決まったワケじゃないし、念の為に他の階も捜してみよう。でもその前に──)


「気になってたんだけど、何で目隠しはしないで口だけ塞いだの?」
「思い知らせたかったから」
「え?」

「ゴチミルが宝を隠した事を伝えれば自分達は解放される。それなのに口を塞がれているから伝えられない。
 手も足も縛られているから字を書いて教える事も出来ない。真実を知っているのに、ただ待つ事しか出来ない。
 自分達が散々馬鹿にした子供と傷付けたポケモンに運命が左右される…今の状況は自分達が作った物で、
 コレは自業自得なんだって事を思い知らせる為に、わざと目を隠さなかった」

ゴチミルを撫でながらCはリオを見る。


「Aを馬鹿にして、皆を苦しめたんだもん。これくらい苦しんでもらわないと」

同意を求めているのかリオを見つめたまま動かないCに、リオが口を開きかけた…その時。
駆ける音の後に砂を擦る音がしたと思ったら、ベチッと痛そうな音が奥から聞こえた。

音の方に目をやると先程よりは綺麗になったが、相変わらず泥と砂で汚れたAがこちらに向かって歩いて来た。
両膝とおでこは何故か血が滲んでいる。


「ふっふっふ…流砂を落ちに落ち、砂だらけの泥だらけになった末に手に入れたこの宝を見よ!」

痛々しい姿に顔を顰めるリオを余所に自信たっぷりにAが掲げたのは、Aと同じく砂と泥が付いた球体。
しかしその色は砂や泥でくすむ事無く金色に輝いている。
まさにお宝という名に相応しい──神々しささえ感じる輝きにリオは自分の持つ化石を見下ろす。

古ぼけたソレはAの持つ球体の前では一段と霞んで、汚く見えた。


「遺跡の最深部にあったこの宝こそ本物だ!さぁC!勝者発表を!」

持っていた球体をCに渡し、Aは腰に手を当てる。
勝利を確信して興奮しているのか、Aの頬は林檎の様に紅潮している。

Cは頷くと勝者の隣に移動し、その手を持ち上げた。



「勝者は──リオ。今回の宝はポケモンの化石」
「えっ」
「おめでとう」

リオの口から声が漏れた。
Aの物と比べると自分が見付けた物は色も汚くて、明らかに劣って見えたからだ。

そう思ったのは当然Aも同じでCに詰め寄る。


「じゃあ!じゃあAが持って来たのは!?」
「それはCがメグロコに隠す様に渡しておいた、ダミーの【おじさんのきんのたま】だもん」
「「え」」


リオとAの頭にある1つの都市伝説──否、世界伝説と言っても過言では無い人物の名が浮かんだ。



〜 きんのたま おじさん 〜


各地方に現れては1人で旅をする若きトレーナーや大の大人に純金製の玉を渡して(稀に放り投げて)、
去っていく男。

その目的や思考は謎とされていて、男から純金製の玉を渡された者の中には彼の意志を継ぐ様に、
第三者に玉を渡す様になった者も居るという情報も寄せられている。
何故そうなったのか…その答えは解明されておらず、男が幽霊・悪霊の類で玉を通じて
人に呪いを掛けたという説もある。

発言が意味不明で前述の事もあり気味悪がられる一方で、新人トレーナーでこの男から玉を渡された者が
大物になったという記録が何件もあり、彼に会いたいと言う者も少なからず居る。


〜 きんのたま おじさん 紹介終わり 〜



「えーと。あれ?耳に砂でも入ったのかな?嫌な単語が聞こえたぞ…C、もう1度頼んだ」
「おじさんの「はいっ!最初の5文字いらない!!」だも、」

そう叫ぶや否やAはCの手の平で輝く球体を掴むと勢いに任せて外に放り投げた。
プロ顔負けの素晴らしい投擲にリオは、


(良い肩してるわね)


…と現実逃避するのだった。




【一言というか感想】
若干狂気染みて来たAとCのイメージを払拭したいが為に半分冗談、半分本気で
きんのたま話を持って来たら最後の最後で全部持って行かれた感が凄い事に。
でも書いていて1番楽しかったです。…1番くだらない話の筈なんですけどね!←