二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 95章 トレジャーバトル終了 ( No.176 )
- 日時: 2018/05/01 21:04
- 名前: 霧火 (ID: fjWEAApA)
「もう!知らない人から物とか貰っちゃダメだって言われたでしょー!?」
「そう思って1度断った。でもムリヤリ渡された」
Cの肩を勢い良く掴んでがくがくと揺らすAと、されるがままのC。
2人の周りをぐるぐる回って止めようとするゴチミル。
リオが少し離れた所で様子見していると、Aが揺さぶるのを止めてCに指を突き付けた。
「そ・も・そ・も!何で下手したら一発で見付けられちゃう1階に宝を隠したのかな!?」
「トレジャーバトルは平等であれ…そう教えてくれたのはA。初心者が辿り着けない所に宝を隠したら、
その教えを破る事になると思った。だから本物は初心者でも見付けられる1階に隠した」
「あ、うん…そういう事なら仕方ないな……」
Aはバツが悪そうに頬を掻いて外方を向いた。
「話は終わった?もうあの人達を解放しても良いわよね?」
リオはゴチミルの《念力》で階段前から左に数歩分離れた場所に移動された大人達を見る。
全員が俯いていて、気力・体力共に限界な事が窺えた。
(早く拘束を解いて水を飲ませて、休める場所に移動させなきゃ…)
勝者には大人達を好きに出来る──リオが出した提案にAもCも乗った。
しかしこちらを見たAの顔は不満げだった。
「ちょーっと待った!勝者のリオがソイツ等を煮ようが焼こうが助けようが文句言わないけど、
自由にするのはAとCがこの遺跡から出てからにしてもらおうか!」
「…言ってるじゃない文句。何もせず黙って貴女達が去るのを見送れって?そんなの聞けないわ」
(2人の場に居るのはゴチミルだけ。バルチャイの《風起こし》で目眩ましを…)
思案しながらバルチャイのボールに触れたリオだったが、ヒトモシにフードを引っ張られた事で思考を中断する。
「ごめんヒトモシ、後にして」
小声で窘めてもヒトモシは手を離す所か更にフードを強く引っ張った。
悪戯好きとは言え控えめで物わかりが良いヒトモシらしからぬ行動にリオが後ろを振り返ると、
大人達が沢山のポケモンに囲まれていた。
皆、この遺跡に住むポケモン達だ。
「何で、」
リオの口から疑問の声が漏れる。
Cの言う通り大人達がポケモン達の住処を荒らしたとしたら、ポケモン達が怒るのも当然だ。
しかし今まで牙を剥かなかったポケモン達が何故今頃──
「AとCが出るの、黙って見てて。そうしたらこの子達も攻撃しない」
「…この子達は皆、貴女のポケモン?それとも顔見知り?」
問われたCは間髪入れずに首を振った。
「どっちも違う。ここの子達とは今日初めて会ったから、最初からこうなる様に仕組んでいた訳じゃないもん」
「じゃあさっき戦っている時に現れたメグロコは?貴女と関係があるんじゃないの?」
(あの時のAは、メグロコが何を言っているのか理解していた。まるでずっと一緒に居るパートナーみたいに)
そう思ったからこそAに質問したリオだったが、予想に反してAもC同様に首を振った。
「…Aはあの子が爪で地面を引っ掻いたのを見て、五月蝿くしたから怒ってると思っただけ。全っ然関係ないよ」
「質問は終わり?じゃあ、もう良いよね。A、帰ろ?」
「そうだね。また遊ぼうリオ!」
Aは投げキッスを飛ばして一足先に遺跡を出たが、Cは足を止めてリオを見た。
「リオはポケモンが困っているのを見たら助ける?」
「勿論」
「………そう」
即答したリオにCは嬉しそうに微笑んだ。
目尻は下がり、頬の筋肉も緩んだその顔はカチカチに固まっていたチョコが蕩けたみたいだと、リオは思った。
「…リオ。信じてるから」
背を向けて一言告げるとCも足早に遺跡を出た。
2人が居なくなるとポケモン達もまた次々に姿を消し始めた。
Cの言った事は本当だったらしく、ポケモン達はこちらが攻撃しない限り何もしないらしい。
その証拠に1分も経たないうちにポケモン達はリオの前から居なくなった。
「ヒトモシはこの人達の傍に居て。すぐ戻るから」
『モッシシ!』
ヒトモシが返事をしたのを確認してリオは外へと飛び出した。
(凄い砂嵐…【古代の城】に入る前より酷くなってるわ)
リオはゴーグルを装着して辺りを見渡したが、とても特定の人物を捜せる環境ではなかった。
これ以上外に居ても何の成果も得られないと悟ったリオは大人達の拘束を解く事にした。
解こうと、したのだが…
「何この縄!?硬く縛りすぎよ…!」
結び目を緩めようとしてもAが縛った縄はびくともしなかった。あの細腕のどこにこんな力があったのだろう。
ラチがあかないと思ったリオはリュックの中からハサミを取り出した。
「ヒトモシ。火で焦げ目を「身動きが取れない相手を火炙りしようだなんて、君がそこまで野蛮だとは
思わなかったよ」!」
(この嫌な物の言い方は…)
ハサミを持ったまま入り口の方を見ると 砂漠だというのに汗1つかかず涼しい顔をしたレイドが立っていた。
リオの視線をどう解釈したのか、レイドは小さく笑う。
「何、僕まで縛るつもり?言っておくけど僕にそういうシュミは無いから、いくら君に懇願されても
叶えてあげられないな」
「火炙りする気も貴方を捕まえる気も無いし、私にだってそんな趣味無いわよ!」
リオは顔を赤くして感情のままにガムテープを剥がした。
「私をからかう為にこの遺跡に入ったの?」
「まさか。君と違って僕は忙しいから、そんな事の為に入らないよ」
「色々引っ掛かる言い方だけどこの際スルーするわ…それなら何が目的で?」
「目的と言う程、大した事じゃないよ。少し気になる事があってね」
「気になる事?」
「まあ、疑問はもう解決されたけど」
中々教えてくれないレイドに、最初から話す気は無いんだと悟ったリオは別の質問をする事にした。
「ココに来る途中に女の子を見なかった?白髪と黒髪の、顔がそっくりな2人組!」
「2人組は見てないな。君が捜してる人か分からないけど、大きなポケモンに乗って飛んで行く白髪の女の子なら
見たよ」
(…多分Aね。追われる事を想定して二手に別れたのかしら?この人達の縄を切ったら
バルチャイに捜してもらおうと思ったけど、チルットの他にも飛行タイプを持っていたなら──)
「もう追い付けないわね」
肩を落とすリオを見て、何気なく視線を下に落としたレイドは目を瞬かせた。
「ハサミを持っているけど…その人達の縄、切るの?」
「そのつもりだけど。何か問題でもあるの?」
「問題って…悪人だから縛ったんでしょ?君ってムダに正義感強いから」
「この人達は別に悪い事なんて、」
否定しようとしたがSの言葉を思い出して口を閉じた。
「どうしたの?」
「…何でもない。私にはこの人達が黒か白か分からないわ。でも仮に黒だったとしても、今にも倒れそうな人を
見捨てる事は出来ない…だから助ける、それだけよ」
リオは真っ直ぐレイドを見た。
無言で見つめ合う両者。
先に目を逸らしたのはレイドだった。
「甘いね。…君がそれで良いなら構わないけど」
レイドはリオの手を持ち上げ、ゆっくりとハサミを引き抜いた。
リオが頭にハテナを浮かべてレイドを見上げると溜め息を吐かれた。
「手伝うよ。君の力じゃ何時間も掛かるだろうしね」
溜め息を吐いた割には、リオを見るレイドの目は優しかった。