二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 96章 レイド ( No.177 )
日時: 2016/01/28 20:43
名前: 霧火 (ID: LQdao1mG)

多少時間は掛かってしまったが、リオ達は何とか全員の縄を切り終え、一息ついた。
各々が体を伸ばしたり汗を拭う中、リオは階段から離れた場所で俯いている大柄の男性に気付いた。


「遅くなってすみません。…どうぞ」

男性の前にしゃがんで水の入ったペットボトルを差し出すが、男性は俯いたままで
ペットボトルを受け取ろうとしない。
緊張の糸が切れて脱力しているのか、将又疲れて寝てしまったのか──何れにしても、このまま遺跡に留まるのは良くないだろう。


「それで?これからどうするの」
「…水分補給も大事だけど、まずは全員を安全な場所に避難させた方が良いかも。私達だけじゃ大変だから、
 ジュンサーさんに事情を話して助けてもらいましょう」

今後の事をレイドと話していると、目の前の男性が突然ペットボトルを払い除けた。
すぐ飲める様に蓋を外してあったペットボトルはリオと、その後ろに居たレイドの頭上を越え、空中で中身を
ぶちまけながら流砂に落ちて呑まれていった。


辺りがしん…と静まり返る。


「急にどうしたんですか?」

静寂を破ったのはレイドで、困惑しているリオの前に出て男性を見下ろす。
しかし男性は問い掛けには答えず白衣に付いた砂を落とすと、レイドを押し退けて横を通り過ぎた。
一部始終を見ていた他の大人達は目配せして頷き合うと、白衣をはためかし彼の後を追い始めた。


「ま、待って下さい!」
『モシモシ!?』

リオとヒトモシが声を掛けても誰も立ち止まらない。
駆けて行く大人達を目で追っていると、手を引かれている人物が目に留まった。
口は半開きで目線が定まっておらず、顔を真っ青にしている彼は、1人だけ清掃員の格好をしていた。
擦れ違いざまに目が合い、清掃員が口パクでリオに何かを伝えた。


(……え?)

内容は短くシンプルでリオにも理解出来る物だったが、だからこそリオは首を傾げた。


「…どういう事?」
「そのままの意味でしょ」

リオとレイドは入り口辺りで固まって何かを話し始めた大人達を見つめる。
奥に追いやられたのか、こちらからでは清掃員の姿を確認出来ない。


「でも、こうして全員解放したわよ?」
「解放したけど解放されてないんでしょ。結構アタマ固いよね、君」

回りくどいレイドにリオが物申そうとした時。
レイドはリオをペットボトルが落ちた場所──流砂の方へ突き飛ばした。


刹那、先程まで自分が居た場所が爆発した。


「!?」

その光景を目の当たりにしたリオは、起き上がって砂埃の中に居るであろうレイドの元へ駆け出そうとする。
しかし無情にも流砂は足を呑み込み、起き上がっていたリオの上半身は打ち付ける形で再び地に伏した。


「レイド…!」

倒れたまま、リオは手を伸ばす。レイドの姿は、まだ見えない。


そうしてリオの体は静かに呑まれていった。




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「……まったく。調子が狂う」

砂埃を払いながら出て来た少年に愕然とする。
後ろに居る仲間も皆、同様に目を見開き少年を見据えている。
確かに《種爆弾》は金髪の少女目掛けて飛ばした。
隙をついた寸分の狂いも無い攻撃だったが、こちらを見ていた少年の機転により少女には当てられなかった。


その代わり、邪魔をした少年に全弾命中した。

した、筈なのだ。


なのに──


「無傷だと!?」

少年の体には傷1つ無かった。
モンスターボールの開閉音が聞こえなかった為、攻撃が当たる直前にポケモンを出したとは考え難い。
少年はこちらの場に居る数匹のポケモンと、ナイフやロープを持った仲間を見て目を細めた。


「助けられて改心…とまではいかなくても、少しは懲りたかと思って黙っていたけど恩を仇で返すなんて、
 クズばかりだね」

言葉通り人間を見る目とは思えない程の冷たい目が向けられる。
年上に対する物とは思えない生意気な態度に、額に血管が浮かび上がるのを感じた。
それを察したのか仲間の女が大きく咳払いをした。


「…こちらにはか弱い人質様が居るのよ?言葉遣いには気を付けて欲しいわね」

そう言って女は人質である清掃員の頬を撫でた。
恐怖からか、清掃員は自分のポケモンを持っていて戦う事が出来るにも関わらず、頬を撫でられただけで
ガタガタと震えている。


「そうだ!コイツが傷付くのを見たくなけりゃあ、大人しく──「詰めが甘いね」………は?」
「人質、人数差…目に見える優位さに満足している様じゃ、僕には勝てないよ」
「ハッ!ただ現実逃避してるだけだろ!」
「じゃあ証明してあげるよ」

少年が目を細めて人質の頬を撫でている女を指を指した。
瞬間、女は人質から離れてフラフラと壁に向かって行くと…そのまま勢い良く頭を打ち付けた。
パタリ、と糸が切れた人形の様に後ろへ倒れた女を俺と仲間は凝視する。



「まずは1人、だね」


困惑する俺達の耳に少年の冷たい声が静かに響いた。



【謝罪とどうでも良い話】
何度目か分からないけど更新遅れてすみません!
話の大半は出来上がっていましたが ①リオとレイドが共闘する ②レイドが流砂に落ちリオが戦う
③リオが流砂に落ちレイドが戦う(戦闘描写有り) ④リオが流砂に落ちレイドが戦う(戦闘描写カット)
⑤レイドとリオが流砂に落ちる

…と、こんな感じでバトルの展開をどうしようか、それを考えていたら物凄く時間が掛かってしまいました。その割に出来は悪いですが…