二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 9章 リオvsコーン ( No.21 )
- 日時: 2020/06/24 13:19
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
「……うーん。どうしてもダンスのタイミングがずれるんです。嗚呼そうですよね、
君とポケモン勝負してみたかったです」
「何だよーッ!オレ、暴れたかったのになー!!」
リオとコーンを交互に見て眉尻を下げるデントと地団駄を踏むポッド。
コーンはそんな2人に微笑し、リオには不敵な笑みを向けた。
「良かったね!3人のトップと戦う事が出来て」
「そうですね。最初のジムで1番強い人と戦えるなんてラッキーです」
「中々言いますね。ではバトルを始める前に……ミキヤさん、審判をお願い出来ますか?」
「畏まりました。では審判は私ウエーターのミキヤが務めさせていただきます」
お皿を持ったウェイター姿の男性がコーンとリオに深々とお辞儀をする。
それにコーンは頷き返し、リオはウエーターと同じ様に深々とお辞儀をしてバトルフィールドの
トレーナー専用の立ち位置に移動する。
向かい合う2人を見て、審判を任されたミキヤが口を開いた。
「只今よりサンヨウジム、ジムリーダーのコーンと挑戦者リオ様によるジムバトルを開始致します。
使用ポケモンは2体、先に2体共戦闘不能になった方の負けです。尚ポケモンの交代は
挑戦者様のみ認められます。では両者、ポケモンを!」
「出て来て下さい、ヨーテリー!」
コーンが繰り出したのは子犬ポケモンのヨーテリーだ。
可愛らしい容姿のポケモンだが、油断は禁物だ。
「じゃあこっちは……お願い、ヒトモシ!」
対するリオはパートナーであるヒトモシを繰り出す。
「それでは、バトル開始!」
「ヒトモシ!《弾ける炎》よ!」
最初に攻撃を仕掛けたのはリオだった。
ヒトモシは一回転すると、火花を帯びた紫色の炎をヨーテリーへと放つ。
「躱して下さい!」
ヨーテリーは飛んで来た炎をジャンプして躱し、そのままヒトモシの真上を取る。
「そのまま《噛み付く》!」
「やばっ……!ヒトモシ、後ろへ飛んで!」
《噛み付く》は、悪タイプの技。ゴーストタイプを持つヒトモシには効果は抜群だ。
落下しながら牙を剥き出したヨーテリーを見て、直感的に「まずい」と感じたリオは
瞬時にヒトモシに指示を出す。
ヒトモシもすぐその指示に応えて後ろに跳躍する——と同時に、さっきまでヒトモシが居た場所に
ヨーテリーの牙が襲い掛かった。
落下の勢いも加わって、地面には亀裂が入っていた。
「……お見事です。ヨーテリーの攻撃を躱すなんて」
ヨーテリーはヒトモシが苦手な悪タイプの技を持っている。
《弾ける炎》を軽々と避けたあの身軽さも手伝って、このバトルはコーンの方が有利だ。
それなのにヒトモシが1度《噛み付く》を躱しただけで、コーンはかなり驚いていた。
(私のヒトモシはそんなに鈍間に見えたのかしら)
もしそうなら心外だと思ったリオは、ムッとして未だに呆けているコーンを見る。
コーンはそんなリオに気が付くと、小さく笑う。
「今までコーンと戦った人達は今の状況になると、皆さん攻撃を指示したんですよ。
攻撃を必ず当てられる絶好のチャンスですからね。しかしトレーナーの指示に
ポケモンはすぐに対応出来ず、結局ヨーテリーの《噛み付く》を喰らい、倒れていきました……
一瞬見えただけの勝利に目が眩み、トレーナーが誤った判断をした結果です」
言い終わり、コーンはリオを、ヨーテリーはヒトモシを見る。
「判断を見誤らずに回避を命じたトレーナーと、ここまで素早くトレーナーに応えたポケモンは
貴女方が初めてです。今こうして貴女方と戦える事を、光栄に思います」
「そ、そうだったんだ。ありがとうございます」
『モシシ〜……』
穏やかな笑顔で称賛され、リオはヒトモシをべた褒めされた事が嬉しくて頬を緩める。
ヒトモシは褒められて恥ずかしいのか、頭の炎が小さくなったり大きくなったりしている。
そんなリオとヒトモシをニコニコと見つめるコーンとヨーテリー、そしてデント。
なんとも微笑ましい光景だが、そんな穏やかなムードをぶち壊す猛者が居た。
「だーッ!!何やってんだよコーン!今はバトル中だろッ!?」
「……そうだったね。では、バトルを再開しましょうか」
「はい!」
沸騰したヤカンの様に湯気を出して怒るポッドに、コーンは顔を引き締める。
リオとヒトモシも両頬を手で叩いて頷き、バトルに集中する。
「ヒトモシ《スモッグ》!」
ヒトモシは口から黒い煙を出してフィールドを煙で埋め尽くす。
「《奮い立てる》!」
コーンが指示を出すが、煙で視界が悪い為ヨーテリーの姿は見えない。
しかし何も仕掛けて来ない事から変化技と判断したリオは、続けてヒトモシに指示を出す。
「《鬼火》!」
ヒトモシは頭の炎から紫色の火の玉を数個生み出すと、そのまま煙の中に飛ばす。
ヒトモシは生命エネルギーが見えるのでヨーテリーの居場所が分かる。
《鬼火》は当たったはず——そうリオが思った時、
「ヨーテリー!《噛み付く》!」
ヨーテリーが突然煙の中から牙を剥き出して現れ、ヒトモシの体に噛み付いた。
「!?《弾ける炎》で引き剥がして!」
ヒトモシは頭の炎を弾けさせ、ヨーテリーを引き剥がす。
「何でっ……」
「貴女のヒトモシが生命エネルギーで相手の居場所を感知出来る様に、僕のヨーテリーにも
それが出来るんですよ」
後ろの方でポッドが「全てのヨーテリーが出来る事だろ」と言っているが、コーンは無視して言葉を続ける。
「ヨーテリーの顔を覆う長い毛は優れたレーダーの役割を果たしていて、
周囲の様子を敏感に察知出来るんです。当然、ヒトモシの居場所だって分かります」
(そう簡単に攻撃を当てさせてくれないって事ね)
【夢の跡地】で修行していた時にリオはヨーテリーを持つトレーナーと戦った。
しかしそのトレーナーはコーンの様な戦い方を一切しなかった。
「流石ジムリーダーのポケモンだわ。それにしても、さっき見た《噛み付く》より随分と
パワーが上がって、……!」
言い掛けてリオはハッとする。
あの時、コーンが指示した《奮い立てる》という技。
それがもし、変化技…しかも能力を上げる技だったとしたら——?
「お察しが良いですね。そう、《奮い立てる》は自分を奮い立てて、攻撃と特攻を上げる技なんですよ。
強い相手にも勇敢に立ち向かうヨーテリーにピッタリな技だと思いませんか?」
笑顔で言うコーンだが、リオは辛うじて立っているヒトモシの背中を見て、ボールを取り出していた。
(今のヨーテリーは、さっきよりパワーアップしてる……ここは1度、)
『モシ!』
ヒトモシの声に顔を上げると、何時の間にかヒトモシはこちらに向き直っていた。
その顔は珍しく怒っていて、リオは呆気に取られる。
しかしヒトモシが自分の胸を叩いたのを見て、リオの口角が上がった。
(『戻さないで、自分に任せて!』って言ってるのかな。もしそうならその気持ち、
無駄に出来ないわよね!)
「……降参ですか?」
「いいえ!強い相手に立ち向かうのは、私のヒトモシだって同じです!絶対諦めません!」
「ふふ、やっぱり貴女と戦うのは楽しいですね。——ですが、これで終わりにしましょう!
ヨーテリー、とどめの《噛み付く》!」
ヨーテリーが助走をつけて牙を剥く。
「行くわよヒトモシ!《目覚めるパワー》!!」
ヒトモシは水色の球体を数個浮かび上がらせ、そのまま放つ。
「当たりませ、『キャンッ!』な、ヨーテリー!?」
ヨーテリーの叫びにコーンは閉じた目を開け、フィールドを見る。
コーンの目に飛び込んで来たのは銀世界……ではなく、凍ったフィールドと、転んでいるヨーテリーの姿。
コーンが目を凝らしてヒトモシの周りをふわふわと漂っている1個の水色の球体を観察すると、
冷気を帯びている事が確認出来た。
「……ヒトモシの《目覚めるパワー》の力ですか」
「はい。ヨーテリーの動きを封じるには、この方法しか無いって思いました。覚えたての技で
まだ精密さに欠けるので、本当に一か八かの賭けでした」
水色の球体がヒトモシの炎の熱でポンッと音を立てて割れ、中の冷気が放出されるのを見て
リオは言葉を止める。
「ヒトモシ!《弾ける炎》!!」
ヒトモシは力を振り絞り、火花を帯びた紫色の炎をヨーテリーへと放つ。
その炎はまるで業火のように巨大で、ヨーテリーとの距離を詰める。
「……っ、ヨーテリー!避けて下さい!!」
しかしヨーテリーは、滑ってその場から動けない。
フィールドの氷が溶け始め、漸く起き上がれたと同時に、紫色の炎がヨーテリーを包み込んだ。
そして炎が消えてそこに居たのは、目を回したヨーテリーだった。