二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 32章 サパスvsリオ ( No.67 )
日時: 2020/08/24 20:03
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「勝負はシンプルに1対1でどうだ?」
「ええ!異論は無いわ」

リオ達が居るのは、ヒウンシティのセントラルエリア。

別名【噴水広場】と呼ばれるこの場所は、中央にある大きな噴水の他に2台の自動販売機と
ベンチがあり、憩いの場として人気がある。
そして、時々ストリートバトルが行われるので広い造りになっている。
正にバトルするのに相応しい場所だ。

「それでは始めるぞ!行くのだ、ドテッコツ!」

サパスが繰り出したのは目付きが鋭い、鉄骨を持ったポケモン。
ドッコラーの進化系──筋骨ポケモンのドテッコツだ。

「ドテッコツ……あの時のドッコラーが進化したのね」

リオ呟きが聞こえたのか、ドテッコツはニヤリと口角を上げた。

(あのドテッコツは、ドッコラーだった時《岩落とし》と《穴を掘る》を覚えていた)

「それなら無難にこの子ね!シビシラス!」

リオはドテッコツに対し、シビシラスを繰り出す。

「先手必勝だ!《目覚ましビンタ》!」

先に動いたのはドテッコツ。
持っていた鉄骨を地面に置き、シビシラスに向かって手を振り上げる。

「シビシラス、上にジャンプ!」

リオは迎え撃とうと身構えていたシビシラスに指示を出す。
シビシラスは頷くと、指示通りに上にジャンプする。
すると攻撃を躱されたドテッコツは躓き、派手に顎を地面に打ち付けた。

「よ、避けられただと……!?」
「《体当たり》!」

狼狽えるサパスに追い打ちをかける様に、シビシラスはドテッコツの背中に一撃を加える。

「《目覚ましビンタ》は相手の頬に強烈なビンタを喰らわせる技。だから、体が小さいシビシラスには
 自然とドテッコツの体はしゃがみ気味になったり、前屈みになる。しかも横に振り被る技だから、
 上にジャンプすれば大抵避けるのは簡単よ。それこそ、縄跳びする感覚で行けばね♪」

悪戯っぽくウインクするリオにサパスは拳を固める。

「しっかりするのだ、ドテッコツ!《岩落とし》!」

ドテッコツは鉄骨で地面を抉ると、コンクリートの塊を投げ付けた。

「これじゃあ《岩落とし》じゃなくて、コンクリート落としね……《チャージビーム》で壊すのよ!」

シビシラスは落ちて来るコンクリートの塊に、蓄電していた電気を帯状にして発射する。
コンクリートは砕け、破片が空から降り注ぐが、大したダメージではない。

「《怪力》だ!!」

ドテッコツは鉄骨を持ち上げ、渾身の力でシビシラスを殴りつけた。
破片のせいで視界が悪くなっていたシビシラスは反応出来ず、ベンチまで吹き飛ばされる。
そのパワーに、大きなベンチが音を立てて倒れた。

「シビシラス!」
「ふははは!油断大敵、我のドテッコツは攻撃力を重点的に上げてあるからな!」
「……やるわね。でも、私のシビシラスの耐久力はその上を行くわ!《スパーク》!」

リオの言葉に応えてシビシラスは電気を纏ってドテッコツに突進する。

「《穴を掘る》!」

ドテッコツは鉄骨を置き、コンクリートを物ともせず地面に潜った。

「ふはは!どこから攻撃が来るか分かるかな?いくら貴様のシビシラスが頑丈でも、
 効果抜群の技には耐えられまい!」
「……」

興奮気味に語るサパスとは対照的に、リオは静かに目を閉じる。
そしてシビシラスの真下のコンクリートが盛り上がり、

「我の勝ちだ!!」

地面から現れたドテッコツが拳を振る──


しかし。


『!?』

ドテッコツの攻撃はあっさりとシビシラスに躱された。
リオは指示を出していない。

「な、何故攻撃が効かない!?シビシラスは電気タイプ、地面タイプの技には弱いはずっ……!」

狼狽えるサパスにリオは目を開け、口を開く。

「確かに電気タイプは地面タイプの技に弱いわ。でも、シビシラスの特性は【浮遊】なの」
「【浮遊】、だと?」
「言葉の通り、浮いてるの。地面に体が触れてないから地面を振動させたり、経由する技は効かないわ」
「な、成る程……って、違う!地面タイプの技は効かないが、こちらが優位なのに変わりは無い!」

リオの説明に感心しかけたサパスだが、直ぐにバトルがまだ続いている事を思い出し、得意そうに胸を張る。
そんなサパスにリオは素直に頷く。

「悔しいけど、否定はしないわ」

(進化前と進化後だと、後者の方が圧倒的に優位。ドテッコツになって体も大きくなったし、
持っている物だって──)

そこでリオの頭に、1つの作戦が浮かんだ。

「ドテッコツ!《岩落とし》だ!」

ドテッコツは再びコンクリートの塊をシビシラス目掛けて投げる。

「《チャージビーム》!」

飛んで来た塊をシビシラスの電撃が砕く。
細かい破片が降り注ぎ、シビシラスの視界が悪くなったのをサパスは見逃さなかった。

「先程と同じく隙だらけだ!ドテッコツ、とどめの《怪力》!」
「シビシラス、噴水の中へ!」

シビシラスは身を翻し、噴水の水の中へ入る。

「馬鹿め、それで隠れたつもりか?袋の鼠だ!!」

鉄骨がシビシラスへと振り下ろされる。

「一か八か!最大パワーで《チャージビーム》!!」

シビシラスは直前まで溜めていた電気を一気に放出する。
四方八方に花火の様に放出された帯状の電撃はドテッコツと、そしてドテッコツの持つ鉄骨に命中した。

「ドテッコツ!!」

地面に背中を打ったが、何とか辛うじて起き上がったドテッコツ。
しかし持っていた鉄骨は粉々に砕け散り、その無惨な姿にドテッコツは冷や汗を垂らした。

「水と鉄は電気を良く通す。《怪力》の時に鉄骨を使ったのが貴方の隙よ……《スパーク》!!」

水の中から飛び上がり電気を纏って急降下して来るシビシラスに、先程の余裕は何処へやら、
サパスはあわあわと手を動かす。

「ド、ドテッコツ!防御だ!!」
『テッコ、』

しかし鉄骨を壊され、防御する術の無いドテッコツはシビシラスの攻撃を喰らい、目を回して
静かに倒れたのだった。


「……約束通り、この骸骨は貴様に返してやる」
「ありがとう。本当に返してくれたわね」

破損が無いか確認しながら呟いたリオに、サパスは不快そうに眉を上げる。

「当然だ。我は素直な所と、諦めの良さが取り柄だからな!」

胸を張るサパスに気付かれぬ様に、リオはリュックからロープを取り出す。

「大人しく捕まり──あぁっ!!」

振り返った時には既にサパスの姿は遥か遠く、走っても追い付けない所に居た。

「ふははは!言い忘れていたが、我は危険察知能力と逃げ足の速さも取り柄なのだ!
 残念だったなぁー!!」

大声で叫びながら、サパスは颯爽と(?)去って行った。