二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 43章 どうして ( No.82 )
日時: 2018/02/13 16:38
名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)


「なんつーか…その、久しぶり……だな」
「…久しぶりって言う程、期間空いてないけど」
「そ、そうか?けど…元気そうで良かった」
「……うん。アキラもね」

ピンク色に染まった頬を掻いて視線を下に向けるアキラ。
柄にも無く照れた様子を見せる幼馴染に、リオは顔を綻ばせる。

「初々しい」「孫を見てるようだ」「う、羨ましくなんかないんだからなっ…!」等と人々が微笑ましく
(一部は羨望の眼差しで)2人を見つめる中、1人の女性が動いた。


「ちょっと!まだ話は終わってないよ、アキラ!」

赤茶色の髪を靡かせて足早にやって来たのは、モデルのように背が高い女性。
彼女こそ、先程アキラと口論していた人物だ。

不満を口にして近付いて来た女性に、アキラは眉間を人差し指で押さえる。


「だーかーらー!俺はもう話す事はねぇって言っただろ!?」
「なっ…!?」

アキラの言葉に女性は絶句する──それはリオも同じだった。


(〝あの〟アキラが、女の人にキツく当たるなんて…)


基本、アキラは女性に優しい。
リオの姉…我が儘で女王様気質のマオに対しては苦手意識を持っているが、酷い事を言われても
決して言い返す事は無く、笑って対応する。

…まぁ、笑ってと言っても苦笑いなのだが。

そんなアキラだからこそ、リオはただ呆然と2人を交互に見るしか出来なかった。
しかし女性の方は直ぐに可愛らしい頬を不満げに膨らませる。


「アキラに無くても、こっちにはあるんです!」

女性はビシィッッ!と、効果音がつくくらいの勢いでアキラを指差した。

指を指されたアキラ本人は怠そうに息を吐く。


「本っ当に頑固だよな……」
「私は普通です!頑固なのはアキラの方よ…ちっちゃい頃は、まだ素直だったのに」


(……ん?)


昔からアキラを知っているかのような発言に首を傾げる。
家こそ離れていたものの、リオとアキラは小さい頃から一緒に居る事が多かった。
それこそ、兄妹みたいだと周囲から言われる程に。

ヒトモシと出会ってから一緒に居る機会は減って3年程は会わなかったが、それでも女性関係の話は
アキラは真っ先にリオに報告していた(その度にリオは呆れていたが)。

つまりアキラが知っているのなら、自分もこの女性を知っているはずだ。
しかし、リオには目の前でアキラと再び口論を始めた女性が誰か分からなかった。


分からなかったのだが、


(アキラをよく知っていて、アキラがこんな風に接する女の人…)


そこまで考えて、1人だけ思い当たる人物が居た。
内心「それはない」と思いつつ、リオは恐る恐る女性に声を掛ける。


「あ、あの。もしかして…アヤネさん、ですか?」


リオの質問に


「そうだよ〜アキラのお母さんのアヤネです☆」


女性──アヤネはニッと笑うとVサインをした。
同時に、人々の声が1つに重なった。


「「「「母さんんんん!?」」」」


((おぉう…))


息の合った周りのリアクションに感心するリオとアキラ。
周りの反応にケラケラ笑っているアヤネに、リオは笑顔を崩さず続ける。


「なんというか…前から綺麗だったけど、また一段と綺麗になりましたね」
「や、やだリオちゃん!褒めてもお菓子とジュースしか出ないわよ!」
「菓子と飲み物は出るのか」

赤く染まった頬を隠す母親に、アキラが即座に突っ込む。
それに対しアヤネが慌てて言い訳や反論をし、アキラはそんな母親をからかう。
2人の声をBGMに、足に擦り寄って来たイーブイを抱き上げ、リオは頭の片隅で色んな事を考えていた。


(本当に、最初見た時は誰だか分からなかったわ…アヤネさんって、会う度に若返ってる気がする。
アキラのお姉さんでも通用するわね、今のこの見た目なら…お母さんもアヤネさんも、
一体どんなお手入れしてるのかしら)


何年経っても見た目が変わらない自分の母親と、会う度に若返っている親友の母親。
ある意味ホラーである。


『ブブイ?』
「はっ!」

気が付くとイーブイが大きく、くりっとした目で心配そうに自分を見ていた。
キョロキョロと周りを見渡すと、自分達を囲んでいた野次馬達も居なくなっていた。
ぽけーっとしているリオの鼻を話し合い(?)が終わったアキラが軽く摘む。


「何だ、居眠りか?目の前に恋い焦がれたイケメンの幼馴染が居るってのに」
「恋……え、誰が誰に?それにイケメンって?」
「…真顔で聞き返すな。傷つくから」

鼻を摘んでいた手を離し、アキラはがっくりと項垂れる。
そんなアキラの肩を、神妙な面持ちでアヤネが叩いた。


「そろそろ良いかしら、アキラ」
「ああ。いつでも良いぜ」

アヤネは「そう、」と呟くと大きなドーム状の建物に向かって歩き始めた。
イーブイを肩に乗せてアキラもまた、自分に背を向けて母親の後を追う。


「ちょっと待って!」

リオは慌ててアキラの腕を掴む。
振り返った彼は珍しく思い詰めた表情をしていた。
驚いて、掴んでいた手を離す。


「……どうしたの?」

眉をハの字にしてリオはアキラを見る。
上目遣いで自分を見上げるリオを、アキラは無言で見下ろす。


(少し離れただけで、こんなに身長に差が出たんだな。前は同じくらいだったのに…)


リオの髪に手を伸ばしかけて、やめる。
母の視線を背中で感じた──自分達を待っているのだ。


アキラは小さく笑う。


「母さん、俺に旅を止めろだってさ」


口から出た言葉はあまりに衝撃的で、リオは言葉を失った。


(どうして、無理に笑うの)


そんな一言さえも、言えなかった。



「何でアキラが先にライモンシティに?」…という疑問は次回明らかに!…とか言っといて
明らかにしないですみません!(汗)今度こそ、次回に明らかにしたいと思います。

気付いていた方も居たと思いますが、女性の正体はアキラのお母さんでした。
彼女…アヤネは今まで出た人物の中で、多分1番テンションが高いキャラです。
アキラが押されるくらい高いです、はい←
この先も機会があれば出るかもしれません。元気なキャラは動かしやすいですし(ぁ

次回、アキラの運命を懸けた戦いが始まる!


それでは次回もお楽しみに!