二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ポケモン】漆黒の炎に罪を乗せて ( No.91 )
日時: 2012/07/09 20:31
名前: 愛河 姫奈 (ID: ZUrGQhyc)
参照: http://id37.fm-p.jp/336/8710kuma/

第二十二話





「………此処、は?」

僕が目覚めたときに居た場所はベッドしかない無機質な場所だった。しかも、此処には僕しかいなかった。


「…目を覚ましたか」

リエンがにやり、と言う笑みで僕に歩み寄ってきた。僕は咄嗟にベッドから降りた。僕はとっさに身構えてモンスターボールを探ろうとした。
しかし、どんなにポケットを探ってもボールは見つからない。焦って顔からは冷や汗が流れる。
すると、リエンは楽しそうに僕に歩み寄ってくる。僕は恐怖で足がすくみそうになったが、なんとか耐えた。

ーどうしよう…!

その時、頭上から僕のモンスターボールが六つ落ちてきた。驚いて頭上を見上げても誰もいなかった。
僕はボールを掴んだ。リエンもボールを掴んだ。バトルが始まる。威圧な空間に包まれた。


「君のポケモンの弱点は大体わかってるよ。君は銀と緑のポケモンを好む。だから、鋼と草タイプが必然的に多くなる」

僕がそう告げると、リエンは少し驚いた顔をした。しかし、直ぐにいつものニヤニヤ顔に戻った。
僕は知っている。こいつの手持ちの全てを。何を出すかも、分かっている。これが僕の授かった能力。



「君はフシギバナ、メガニウム、ジュカイン、ルギア、エアームドを手持ちにしている。切り札のルギアはそのうち伝説だね。
 あとの三匹は水。それを補うように技を集めている。そして君は必ずエアームドで毎回、決着をつけている」

「なッ?!」


リエンの、ポーカーフェイスが崩れていく。当然だ。自分の作戦が全て読まれているのだから。

少しずつお兄ちゃんとの思い出が脳裏に流れ込む。懐かしい、悲しい、温かい、苦しい、嬉しい、切ない、悲しい、そんな思い出が。
僕はポケモンの声なんて聞こえない。お兄ちゃんみたいにバケモノ扱いされない。
だけど、それを一度も「よかった」と思った事はなかった。寧ろ「なんで」と思ったことしかない。
どうしてお兄ちゃんばっかり??どうして傷つけられなきゃいけないの・??どうしてどうして???
そんなことを考えて、ポケモンバトルを毎回見続けて…そうして僕は不思議な力を習得した。
ポケモンを見ただけで技・特性が分かる。だけど、僕はその能力を誰にも言わなかったし、見せなかった。
そのせいか僕は日に日に嫌われなくなった。兄はそんな僕の事を遠ざけるようになった。
それが凄く悲しかった。だから僕は兄を拒む人を拒み続けた。そうして一人ぼっちになってお兄ちゃんの傍にずっといた。
だけど、いきなり連れてかれて部屋に閉じ込められた。拉致と軟禁なんて、酷すぎるよ。
毎日が絶望で暗黒に満ちた日々だった。もう、たまに「死んでもいいのかな」なんて思ってしまう事もあった。
だけど、そんな僕を支えてくれたのはやっぱりお兄ちゃんだった、。こっそり会いに来てくれて遊んでくれた。
最初の内はプラズマ団の誰も気にしていなかった。しかし、途中から「もしかして抜け出そうとしてるんじゃあ…?」と言う噂が立ってお兄ちゃんとも会えなくなった。
そしてお兄ちゃんが大きくなった。英雄になってくる。とか厨二みたいな事を言って消えて言った。
だけど、お兄ちゃんが消えるなんて思ってなくて、思いたくなくて「行ってらっしゃい」だけ伝えた。
お兄ちゃんは消えた。僕を置いていった。でも、僕は怒る気はなかった。だって、お兄ちゃんの夢だから。




だから、僕はお兄ちゃんを必ず探さなきゃいけない。そのためにもリエンを倒さなければいけない。
リエン…今まで本気で戦ったことのない相手だ。正直、こいつの相手は面倒くさいからだ。
でも、今はそんなことを言ってられない。倒さなければいけない敵がいる。こいつがそんな敵だ!


リエンのポケモンはジュカイン。
僕は飛行タイプのシリンを出す。



「いでよ、シリン!君の親を救う為にも僕に力を貸してほしい!」


ウォーグルのシリンは大きく唸ってジュカインの前に立つ。ジュカインは一歩下がって身構える。


「ジュカイン、こうそくいどう!」

「シリン、こわいかお!!」

スピードを上げようとするリエンをシリンのこわいかおがとめる。リエンの表情にいら立ちがこみ上げてくる。


「ちッ、いわなだれ!!」

飛行タイプには相性の悪い…僕はいわを取り除く方法を一瞬で思い出す。そして、言う。

「ッ、ふきとばし!いわを相手に吹き飛ばすんだ!」

岩を吹き飛ばしてジュカインに当たったと思った。



しかし、




「ジュカイン。岩ごと打ち抜け。かみなりパンチ」

「ッ、シリン!」


此処は、強行突破だ!




「シリン、渾身の一撃だ!ブレイブバード!!」






ブレイブバードとかみなりパンチがぶつかり合う。
不意に、ジュカインの鳴き声が聞こえる。
しかし、シリンの声は聞こえない…


焦りと心音が静寂の中で響きこむ。






「し、しりんッ!!」



シリンはそこに力強く、堂々と立っていた。
反対にジュカインは倒れていた。




「シリン、頑張ったね!」

シリンはそう言うと、ふいっ、とそっぽを向く。
ちょっと寂しいけど、ありがとう。
そう心の中で呟いて前を向く。





「次のポケモンは何?」

「ふっ、お前が最後の切り札と思っている…こいつだ」

「…エアームドか。そう来るとは思ってたよ」

「何故だ?!」






















「別にいいだろ?さぁ、続きを始めようか」


漆黒の瞳の中には炎のようなものが揺らめいていた。