二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: あの頃の二人には、もう戻れない。【イナGО】 ( No.31 )
- 日時: 2012/02/04 19:52
- 名前: 風見鶏 (ID: nWEjYf1F)
第4話「君が居ないと、」
次の日も、また次の日も、天馬は皆に姿を見せなかった。
「天馬、何処に居るんだよ・・・」
天馬が居ないと上手く感情を整理できない。
剣城は灰色の空を睨み付けた。
「剣城、今は練習に集中しろ。天馬はきっと戻ってくる」
そうキャプテンに言われて少し腹が立ったが、渋々練習を再開した。
「(練習が終わったら天馬の家に行ってみよう)」
そう思ったことで、その時は冷静でいられた。
この後、剣城が死んでしまいそうなほどの後悔に
押しつぶされる事も、まだ誰も知る由も無かっただろう。
「・・・え?」
練習も終わり、剣城は先生に住所を教えてもらい、さっそく
木枯らし壮へと向かった。
だが、木枯らし壮に警察らしき人物が沢山いたのだ。
殺人現場によくある、黄色いテープが張られていた。
剣城の思考が、嫌な方向へと向かっていく。
「剣城君?」
「・・・?」
突然、剣城は若い女の人に話しかけられた。
「剣城君よね?私、木枯らし壮の管理人の木野秋って言うの」
「は・・・はあ・・・」
「・・・剣城君、落ち着いて聞いてくれるかしら?」
急に改まった顔つきになり、剣城は緊張する。
ゆっくりと秋は様子を伺うと、遠慮がちに口を開いた。
「・・・・・・天馬が、行方不明なの」
「行方・・・不明?」
「こっちへ来て」
木枯らし壮に入り、連れて行かれた先は一室の部屋。
「見て」
あまりにも衝撃的な光景に、剣城は声を失う。
家具は乱暴に投げ飛ばされたように倒れていて、
真ん中に、天馬のユニフォームがびりびりに破れて、
そのユニフォームを突き刺す、鋏が不気味に光っていた。
天馬を『倒した』、『殺した』と言っている様だった。
「実はね、私の友達がこういうになったことがあったの・・・」
秋は、部屋の有様を真剣に見下ろすと、そう呟いた。
そして、秋は手を剣城の肩において、まっすぐに剣城の目を見た。
「天馬は、近いうちに現れるわ。その時は・・・
何をするべきかしっかり考えて、天馬を取り戻してちょうだい」
剣城には、まだ秋が何を言っているのかが分からなかった。
今の剣城は、悲しみに浸っていたからだ。
でも、その時秋が言った言葉が天馬を救う鍵になる事は
運命を決める神様しか分からなかっただろう。
====君がいない、サッカーフィールド====