二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 完結!! 検定実施中! ( No.694 )
- 日時: 2012/08/08 10:37
- 名前: 姫佳 (ID: /LylQYeE)
- 参照: ローゼンメイデンにヤバいほどハマった!!
「…あの、外のお国の方…ですか?」
*瑠璃(ruri)*
茶屋で働く十三の少女。橙色の髪を後ろで結っている。
子供の扱いには慣れているが、時々空気が読めない。
「姉ちゃんっ、剣の相手してくれ!」
*魁太(kaita)*
元気な九つの少年。武士に憧れていて、毎日剣の修業を欠かさない。
瑠璃の弟であり、剣の修行に疲れると姉の髪で遊び、追いかけっこをし、さらに疲労をためるバカである。ちなみに姉は追いかけまわして疲れさせ、早く眠らせるのが目的。←
「…2人共、走り回るな。」
*有(yuu)*
英語が得意な、十四の少年。外国に行った事があり、時々その時の話を瑠璃達に話してくれる。
貿易の手伝いの為江戸を離れる事もあるが、瑠璃曰く「とても優しい方」らしい。
「……どうなってるのよ…」
*ラティア*
江戸の世界で、意味不明な、しかし自分の友人に似た少年少女に出会う。
「おう、それじゃあ俺はまたひとっ走り行ってく…ラティア!?」
*守(mamoru)*
懸命に働く十四の少年。
瑠璃と魁太の2人とはとても仲が良いが、その2人も知らない過去がある
- Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 完結!! 検定実施中! ( No.695 )
- 日時: 2012/08/08 10:37
- 名前: 姫佳 (ID: /LylQYeE)
- 参照: ローゼンメイデンにヤバいほどハマった!!
——かくれんぼの後
「ラティア!」
久し振りに別荘へ足を踏み入れた少女は、自分を呼ぶ声に立ち止まって振り返る。廊下を走って来たのは、見知った少女だった。
「瑠璃花、元気そうね。」
「うん!さっきまで皆でかくれんぼしてて、楽しかったから…」
「ティアラからメールが来たわ、風丸たちがメイド服を着せられた写真と一緒に。」
ラティアは溜息交じりにそう言い、瑠璃花の反応を伺うと、似合ってたよねっ、と彼女は無邪気に笑っていた。
その反応に苦笑いすると、瑠璃花が首をかしげる。ふとラティアが瑠璃花の右手にDVDを見つけた。瑠璃花はラティアの視線に気づき、魁渡が日本の歴史に興味持ったみたいで、とDVDを差し出した。
「江戸時代の映画みたい。この別荘の図書室に有ったから、魁渡に見せたら喜ぶかなぁ、て思って…」
「日本の歴史に興味、って…何があったのかしら、魁渡に。」
「…武士がカッコイイって言ってた。」
ラティアはDVDの裏の説明に目を走らせた。
「一緒に見る?ラティア。」
「魁渡がいたら何か言われるに違いないもの、遠慮するわ。」
DVDは瑠璃花の手に戻った。
ティアラ達はどこにいるか教えてくれる?、と尋ねられて、大部屋と答えるとラティアは礼を言ってからその場を去っていった。
「…後でラティアの部屋に持っていこうかな。」
そう呟いてから、ハッと我に返る。
「…魁渡も大部屋だった!」
このDVDは大部屋にいる皆と見ようと思っていたものだ。
2人の喧嘩は仲裁を遮る勢いがある。つまり病気と同じく予防が大事。このまま接触すると危ないかもしれない…と考え、瑠璃花は駆けだした。あまり考え込んでいなかったはずだが、会議室の前にラティアの姿は無い。
「…もしかして大丈夫だった…?」
「そんなの俺の勝手だろーがっ!!!」
(あ、ダメだったみたい。)
ドアの前で苦笑してから、ノブをひねって部屋へ足を踏み入れた。
***
江戸時代
夕方時…風が吹いた。子供ながら旅をする男子が、店の外で江戸の町並みを眺めている時。
突然の気配に振り返ると、風に揺れる橙色の髪が目に入る。
「はいっ、お団子です。」
「…ありがとう。」
いえいえ、と裏の無い無邪気な笑顔をつくる少女はお盆を胸に、店内に戻る。何か強い者の気配を感じた…彼は杞憂だったと、団子を口に運んだ。口に合う物だったらしく、口元が緩む。
ふと、店のドアが開いて出て来たのは先程の少女だった。
「それでは、失礼します。」
「気をつけて帰ってね!」
はいっ、と答える表情は明るい。男子と少女の目が合うと、ぺこりと頭を下げて少女は走って坂を下って行った。
「危なっかしいなぁ…」
「あの子はああいう子なの、今更きっと転んでるから。」
気をつけて、といった女性の声だった。しかし旅人の目に映ったのは、自分とあまり年の変わらない黒髪の少女。
彼の隣で、心配そうに、しかし若干呆れた表情で立っている。
「でも、今日は大切な人が帰ってくるとか。」
「だからあんなに元気なんですか。」
「そ、今日は特別元気だった。で、君はどこに行くの?」
「基本足の向く方向に…」
ふうん、と彼を見下ろして、少女は珍しい子、と心の中で呟く。
「それが今回は江戸です。」
「このタイミングなのには理由があるのかな?」
「ええ…多分。」
青い瞳は、真っすぐに江戸の町を見つめていた。
- Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 完結!! 検定実施中! ( No.696 )
- 日時: 2012/08/08 10:39
- 名前: 姫佳 (ID: /LylQYeE)
- 参照: ローゼンメイデンにヤバいほどハマった!!
第一章
{協和音と不協和音}
「きゃあああーっ!!!!」
・
・
・
「ん……?」
悲鳴が聞こえた。それも女子の高い声で…。
だんだんとクリアになっていく、少女——ラティアの感覚。冷たい、体が触れているのは石だと分かって混乱しながら目を開ける。耳に聞こえてくるのは川のせせらぎ、そして…何者かが滑り落ちてくる音。
「?!」
「!!あっ、危ない避けてっ!!」
ラティアが倒れていたのは川のそばだった。そこに違和感を感じつつも、優先するべきは土手から滑り落ちてくる少女に手を貸す事。
「!?」
避けてと言ったのに、滑る土の上で自分を止めてくれたラティアに少女は目を見開いた。
ラティアは少女の着物を汚さずに済んだ事に、安堵の息を漏らす。
「あ、ありが………と…、!!!」
「?」
が、少女はラティアを僅かに見上げた直後、体を突き飛ばし…その衝撃でバランスを崩しまた滑る。
「……!?」
ラティアは倒れずに済んだものの、今度は間に合わない、と思った刹那。
突出した石につまづいた少女の体が僅かに浮かび、その拍子に体は空中で回転した。少女は無事に小石の川岸に着地し、ホッとしているように見える。
「…あの身のこなし…」
ラティアは、着物を全く知らない訳ではない。日本の伝統的な衣服で、洋服より動き辛い…しかし、目の前の少女は。
そして、少女は先程自分を突き飛ばした。
心当たりがないラティアは少女に近付き、足を止める。今度は特に警戒する様子を見せず、俯いていた。
「…あの、さっきはありがとうございまし…た、」
「それより、なぜさっき私を突き飛ばしたの?」
率直な疑問を、橙色の髪の着物少女に尋ねる。すると少女はバッと顔を上げ——瑠璃色の瞳がラティアを映した。
「!瑠璃k(「日本語が分かるんですか!!?」
「えっ…?」
瑠璃花、と呼ぼうとしたのはラティアの知る友達だと思ったから。しかし、その少女はまるでラティアを知らない様だ。
その事に困惑していると、相手も戸惑っているらしく、そっとラティアに尋ねる。
「…あの、外のお国の方…ですか?」
*
「……どうなってるのよ…」
瑠璃という少女の予備の着物を着て、ラティアは江戸の町へ向かう事になってしまった。
『これが洋服ですね!私初めて見ました…!!』
『?あの…今西暦は…』
『何言ってるんですか、1863年ですよ?』
「江戸時代…ね…」
瑠璃は外国人を初めて見て、驚きから咄嗟に突き飛ばしてしまったと言い、ごめんなさいと頭を下げた。態度から彼女の言う事を嘘とは思えず、理由は分からないがタイムトリップしてしまったのだと気付く。瑠璃はラティアを貿易の時日本に来たアメリカ人と思ったが、そう尋ねた時の困惑した様子から違うのだと察し、気付いたらここにいたというラティアに頭を悩ませる。
「う〜ん…とりあえず、どうしましょうか?」
「もしかしたら知り合いが来ているかも…。江戸の町をさがしたいわ。」
「お知り合いですか…騒いで捕まっていないと良いのですが…」
ラティアは姉を思い浮かべ、来ていない事を祈る。この時代にはクレープが無いのだ、騒いでも丸く解決できそうにない。
瑠璃の住む長屋は江戸の町の外れにあり、少し行った先から賑わう声がラティアには聞こえてきた。するとただいま、と瑠璃が長屋に入り、彼女に次いでラティアも長屋に足を踏み入れる。
長屋は江戸の木造集合住宅。それぞれ部屋が分けられているが人々の結びつきは強く、瑠璃の挨拶に対しても男が部屋から顔を出して、今日は早かったなと返していた。
ラティアは長屋を進んでいくにつれてはっきりとしてくる嫌な予感に顔をしかめながら、瑠璃の真後ろについて行く。
すると瑠璃が足を止め、あそこが私の住んでる場所です、と振り返った。
「ちょっと騒がしいのがいますが、町の事は結構知ってて、人捜しに役に立つ情報を持っているかもしれないので…」
顔合わせしておきましょう、と瑠璃は言うが、“騒がしいの”という単語に思い当たる人物が浮かびラティアは眉を寄せる。
瑠璃はその様子に気付かず、部屋を開けた。
「ただい(「お帰り姉ちゃん!」
ロケットの如くとび出してきたのは、ラティアとは犬猿の仲である瑠璃花の弟…。
「魁…渡。」
「わっ…魁太!飛びつくのは危ないからやめてって…ラティアさんごめんなさいっ、大丈夫ですか?」
魁太、と呼ばれた少年が飛びついた衝撃で瑠璃はたたらを踏み、ラティアが背中を支えた。
少年は姉の後ろにいる、姉の着物を着た見知らぬ少女を見つけて睨んだ。…瑠璃の腰に抱きついたまま。
「平気よ…」
「ラ…?誰?米人か?」
「うん、帰り道で足踏み外しちゃって土手滑っちゃったんだけど、ラティアさんが助けてくれて。」
「“また”滑り落ちたのか!?」
また、という単語に苦笑いする瑠璃。ラティアはドジではないかという予想が当たり、嬉しいどころか呆れるしかない。
「じゃあ米人さんありがとな、姉ちゃんの着物汚れないで済んだ。」
(魁太がお礼言った…!!)
姉は言葉だけ聞いてそう思ったが。
実際魁太は睨んだままであり、ラティアはその顔が彼女の知る魁渡とそっくりである事に気分を悪くした。
「貴方…姉に抱きつけるからそう言ってるの?」
「え!?」
「………剣の相手してもらう時間が増えるからだ。」
「魁太っ、その間は何!?」
表情は変わらなかったが、妙な間に瑠璃は戸惑う。
魁太は瑠璃から離れ部屋に入る。瑠璃はラティアを手招きして、彼に続いた。
質素な部屋だった。その珍しさにラティアは辺りをきょろきょろと見渡し、不便そう、と心の中で呟く。
「おい、お前!」
「何?…刀?」
魁太の声に振り返ったラティアの目の前にあったのは、鞘に収まった立派な刀だった。
「俺は強い武士になりたいんだ!だけどここは街の外れ、強くなりたくても相手が姉ちゃん位しかいない。なのに姉ちゃんは良く着物を泥まみれにして返ってきたり、忘れ物して帰りが遅((「かっ、魁太!!」
「だから早く帰って来たのが嬉しくて抱きついたって事なのね、ワカッタワ。」
「…姉ちゃん俺この女キライ。」
「まだ私の名前覚えてないの?ラティアよ、ラティア。」
「そっちこそ俺の名前間違えて覚えんじゃねーぞ、魁“太”だからな!」
(…え?この2人こんなに相性悪いの?)
弟が女子に対し優しくないのは分かっていたが、こんなに酷いのは初めてで瑠璃は混乱する。
どうしたら収まるか思考を巡らせていると。
「どうせ貴方剣の腕も大した事無いんでしょう?」
「は!?俺そこらの下級武士より強いんだからな!!相手しろ!」
喧嘩は進んでいて、魁太が投げた刀をラティアが受け取っていた。
「魁太っ、久遠さんに失礼!それに今日はあの方が帰って(「お前くらい倒してやる!」
(ダメだ…全然聞いてない!!!)
久遠、というのは瑠璃が帰って来た時に声をかけてくれた男性で、武士である。
「(あの方…?)…平和的じゃないわね。」
「ラティアさんも魁太の喧嘩に乗らなくても…」
「ここの“魁渡”は一回痛い目見せれば大人しくなるかしら…」
「え!?」
…瑠璃にはこの喧嘩を収める方法が思い浮かばなかった。
武器は、竹刀が少しあるだけ。長屋の住人・久遠という武士は前に魁太が竹刀で勝っていた。…彼は、弱いのである。
誰も止められない…と冷や汗を浮かべた。
(今騒ぎを起こしたら誤魔化せない…あの方が帰って来られるのに!)
それに外国人であるラティアが誤解される可能性はすごく高い。下手したら捕まってしまう…そう考えて、改めて2人を止めようと瑠璃が一歩踏み出した…その時。
「瑠璃ー、魁太ーっ!」
「「「!」」」
長屋の入口から、誰かが2人を呼んだ。
- Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 完結!! 検定実施中! ( No.697 )
- 日時: 2012/08/08 10:39
- 名前: 姫佳 (ID: /LylQYeE)
- 参照: ローゼンメイデンにヤバいほどハマった!!
第二章
{衝撃!宇宙人現る!!}
「良かった…2人共いてくれて…」
「守さんっ!?」
はぁっ、と肩で息をしながら瑠璃と魁太を呼んだのは、守——バンダナをとった円堂そのものだ。2人と守は5日くらい前に出会ったが、明るい性格の守と仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
「どうしたんだ?」
「何かっ…異星人が!」
「「…え?」」
まだ付き合った時間が短いからか、やはり彼の事は良く分からない——と、瑠璃は思う。
「異星人って…そんな冗談やめろよまも(「異星人を名乗ってるんだ!瑠璃達に話があるって…」
「わっ、私達に!?」
守の真剣な眼差しに、嘘を吐いていないと悟るものの、突拍子の無い話に混乱してしまう2人。と、砂を踏みしめる音にその方向を振り返ると、そこにいたのは赤い髪の——。
「やあ、2人共。久し振り。」
「え…」
「…何人?」
青白い顔と赤い髪、瑠璃達には見知らぬ少年だ。
誰だろう、と思考を巡らせると、赤い髪の少年は溜息を吐く。
「…君も僕の事を知らないのかい?守と一緒で。」
「知りません!私は生まれてこのかた、そんな赤い髪の方と知り合った事は無いですっ!」
「橙色の髪の君に言われるなんて心外だなぁ。」
「お前、名前は?」
「僕?グランだよ。」
「「「グラン?」」」
変な名前、と魁太が呟いたが、グランはスルー。
彼はエイリア学園から来たのだと言い、さらなる混乱を招く。
「ええと…グラン様は、何をしにいらしたのですか?」
「ああ、忘れるところだった。僕はね、君の家を壊しに来たんだ。」
「へー、家を壊しに…って…ハ?」
きょとん、と目を丸くする3人。
相変わらず微笑みを浮かべるグランは、パチンと指を鳴らした。
「とある人からの依頼でね…素直にやられてくれると嬉しいな。」
「いや、お前何言って…」
冗談だ…という願いは、彼の隣に現れた水色の髪の少年によって打ち砕かれる。暗い紫色の球体——ボールを持った少年は、ずっと未来にその名を轟かせたエイリア学園最後のチームのキャプテンだった。
ボールを足元に置いて蹴ろうとする姿勢は魁太たちにとっては馴染みの無いもので、首をかしげる。
「よろしく、風丸。」
「ああ。安心しろ、こんな震度5の地震で崩壊しそうな家を一発で壊すのは容易い。」
「風丸さん…?おん(「ああ、俺は男だぞ。」
「姉ちゃん…アイツ、家壊すとか言ってる奴だぞ?そんな性別の問題言ってんじゃねーよ。」
「貴方も、自分の家をそんな風に言われて平気でいられるなんてね。」
はぁ、という溜息とともに姿を現した少女は、エメラルドグリーンの髪をなびかせる。
「結局誰だったの?」
「!えっ…」
グランが、家から現れた少女に目を見張った。
風丸を止めようとした、しかしボールは既に蹴られていて…戸口を狙っている。
「!ラティアさんっ!!!」
「……これくらい、止められるわ。」
反射的にラティアの方へ駆け寄ろうとした瑠璃が見たのは、僅かに上がった口角。
瑠璃の目の前をボールが通り過ぎ、ぶつかると目をつむる——
(平気よ、別に。)
(うん、何となく、そんな気はするけど…)
「何っ!?」
木造の家が崩れる音。
恐る恐る瑠璃が目を開けると、向かいの家が紫色のボールによって破壊され、その直前に外に出てきていたその家の娘が硬直している様子が。
「な…何なんだ、アイツ。」
きょとんとしていると、魁太の震えた声が聞こえて、その視線の先を見てみる。
「! アイツは…」
守は風丸の呟きに、眉をひそめて額に手をやる。
栗色の髪の少年を、ラティアはどこか嬉しそうな表情で見つめていた。
「私の家っ…!」
「…ごめん、でもああするしか、」
「ーっ!///いっ、いえ、事情があったのなら…///」
「?何でそんな簡単に許せるんだ?」
「ん…どうして、なんでしょう?」
2人は、フィディオに謝られ顔を真っ赤にする向かいの家の娘を不思議そうに見ていた。
*
「いやぁ、許してよ円堂君。」
「何言ってんだよヒロト!瑠璃達の家を壊すところだったんだぞ!?」
「円堂君バンダナ取ると、けっこう印象変わるんだね。」
「……ヒロト、話を聞け。」
縄で縛ったグランって奴を見て、守は溜息を1つ。
話を聞けば、守とラティアとヒロトはずっと、何百年も先の未来から1週間くらい前に来たらしい。そう言えば守と会ったのは5日くらい前だったか…で、グランの本名は吉良ヒロト。未来でも異星人を名乗って色々破壊してたらしい。…例えば中学校っていうのは随分大きいみたいだけど、それも破壊したんだと。
「スッゲーな、未来って!」
「今の西洋よりも進んでるなんて…全然想像できません…」
「そうだろうな、特に未来で俺達がやっているサッカーはすごく熱くなれるし、必殺技も迫力がある。」
「ええっ!どんな物なんですか!?」
「!! 円堂君、何で風丸君は縛らないの!?」
「ん?何だろうなぁ…問題無いから?」
「差別!!」
「ところでヒロト君、君はどうしてあの家を壊そうとしていたんだ?」
がぁぁん、とショックを受けるヒロトに話しかけたのは、さっきラティアを守った少年。年は守達と同じくらいか。
「フィディオ!」
「? 君は…どうして俺の名前を?」
「えっ…」
「彼はイタリア人の両親から生まれ、今は日本各地を巡っているただの流浪者…イタリアの白い流星ではないわ。」
「「ラティア!!」」
イタリア人らしい少年の後ろから現れたラティアの言葉に、彼は頷いた。
守はどこかに頭を強打した影響で記憶が飛んでたらしいが、フィディオの場合はそうではないらしい。彼自身がこの時代で生きて来た記憶があって、それは話を聞いたラティアが途中首を傾げるほど…俺も所々分からないほどその土地独特の単語が出てくる。
外国人が作れる話じゃない。奴は本当に流浪人だ。
「それで、君はどうして…」
「家を破壊したら、元の時代に戻してくれるって言われてね。」
「「!!」」
「まあ、そう言われても強制的だったよ…影山はどの時代でもひどい人らしいね。」
「「影山!?」」
- Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 完結!! 検定実施中! ( No.698 )
- 日時: 2012/08/08 10:40
- 名前: 姫佳 (ID: /LylQYeE)
- 参照: ローゼンメイデンにヤバいほどハマった!!
第三章
{ゴーグルマントとビートルズ?}
「「影山!?」」
思わず声を上げる、円堂とラティア。その声に驚いたのか、話をしていた瑠璃と魁太、風丸も振り返る。
「影山…」
「貿易をしてる金持ちで、目が覚めたら影山の家の庭にいて…全く、性格悪かった。」
「お前らに食わせるものはない、と言われた。腹が減ってるなら甲虫でも食ってるがいい、って。」
「…カブトムシって、食べられるのか?」
「食べてみるか、円堂?」
風丸が懐からカブトムシを出し、円堂は両手を振って断る。
「影山さんがどうかされました?」
「! 瑠璃、貴女知ってるの?」
「彼女達は知ってるよ、何せ影山を裏切った少年の義理の家族だからね。」
この時代は、恐ろしい程未来と同じなんだ。
ヒロトのその言葉に、円堂はもしかしてと目を見開く。すると砂を踏みしめる音がして。
「…それは俺の事か。」
赤い瞳の少年は、困惑の表情でそこにいた。
「鬼道!」
「有!!」
嬉しそうに名前を呼んだフィディオに、ラティアが知っているの、と尋ねると、笑みを浮かべて彼は頷く。
「路銀は彼がくれたからね。」
「え…じゃあ貴方の言ってた幼馴染…?」
ラティアはフィディオの話を思い出し、幼い頃よく遊んでいたという幼馴染が彼・有だという事を知り、やっぱり有人はお金持なのねと納得する。ちなみに路銀というのは、旅に必要なお金のことである。
一方、未来人組が有の事を見て想うのは。
(((ゴーグルとマントが無い…)))
当然だが、鬼道有人のトレードマークを身に着けていない。流石に江戸時代の影山は持っていなかったか、と3人が思った時。
カコンッ、と音を鳴らしながら瑠璃が有の目の前に駆けだした。
「有様っ、お帰りなさい!」
「瑠璃、お勝さんの家に何があったんだ。」
「ゆ、有様…?」
「…成程、今日帰ってくるあの方って、有人の事だったのね。」
クエスチョンマークを浮かべる円堂に、影山から事情を聞いたヒロトが昔話を始める。
「実はあの姉弟、父親が武士だったんだけど戦死しちゃってるんだ。」
「「!!」」
「でもこの時代ではよくある事らしい。」
「特に今は混乱しているからね…」
風丸は残酷ではあるが事実を述べ、フィディオも旅をしながら知り得た知識からフォローする。
「母親も過労死、それで預けられたのが茶屋を営む蜜柑の所。でも蜜柑は1人で世話するのが難しい…そしたら常連の彼が引き取っても良いと申し出たんだよ。」
「まあ蜜柑の所よりずっと落ちつけるのは確かだ。」
蜜柑に失礼な事をさらりと言う魁太に、ラティアは顔をしかめる。
「貴方…蜜柑にまで喧嘩売ってたのね?」
「アイツがいると姉ちゃんに剣の相手してもらえないんだ!しかも茶屋の制服に西洋のデザイン取り入れようかとか言いやがって!何だあのヒラヒラ!!」
「それが彼女の趣味なら良いじゃない、貴方が着る訳じゃないんでしょう?」
「店に誰も寄らなくなったら姉ちゃん悲しいだろ!」
「…姉想いだな。」
2人の様子を見ていたフィディオが苦笑しながら言うが、ラティアは。
「そうかもしれないけど…心の狭い餓鬼としか思えないわ。」
「Σ! 勝負だラティア!」
「ようやく名前を覚えたのね。良いわ、その武器を折ってあげ……、フィディオ?」
「幾ら鉄刀相手でも、君の様な女子が刀を手にするものじゃない。」
見えないスピードでフィディオの刀を抜いたラティアの右手を、フィディオはそっと握って制止した。
「フィディオ、俺そいつとは一度決着をガッ!?」
「魁太、ラティアさんに失礼でしょう!」
瑠璃が竹刀で魁太の首を叩いた。
「…瑠璃、フィディオの隣にいる女子は。」
「あ、ラティアさんです。何だか…蜜柑さんとは比べ物にならない程、魁太と仲が悪くて。」
フィディオは有に気付くと頭を下げた。
「有、俺がお勝さんの家壊しちゃったんだ。」
「フィディオが…?お前、旅に出て学んだのは家を壊すという事なのか…?」
「ちっ、違うんです!フィディオさんは何も悪くなくて、ラティアさんを守るためでっ…ええと、」
あの寿命が縮んだ瞬間を思い出して、瑠璃はフィディオを弁護しようと必死に言葉をさがす。しかしヒロト達が悪いとも言えず言葉に詰まっていると、ポン、と頭を軽く叩かれた。
「分かっている、フィディオがそんなくだらない事の為に旅に出るとは思っていない。とりあえず未来から来たとかいう奴らも全員まとめて家に入れろ、詳しい話は中で聞く。」
「承知、」
苦笑しながらフィディオが発した言葉に、ラティアは少し驚いたのか目を丸くしていた。
*
「…成程、影山か。」
事の発端である影山の話を聞き終え、考え込む有。彼は帰国子女であり、また頭脳明晰であることから影山に気に入られ影山の下で貿易の手伝いをしていた。しかし幕府の命で行う正式な貿易の裏で、不法な取引を影山がしている事に気付いた有は、お前も同犯者だと言われながらも、影山をその職から引きずり下ろした。
調べてみれば、有が知らなかっただけで影山は不法な取引を何度も繰り返していた。麻薬と思われるものもあり、それは既に江戸の町に流通しているかもしれないと有は顔を歪めながら言う。
「有も、手伝わされていたという事か。」
「取引を始めるまでの手続きは大方俺がした様なものだ。何をするのかまでは知らなくても良いと影山に言われていたが…」
「なあ、きど…有、俺思ったんだけどさ。」
未来から来たヒロト、風丸、円堂、そしてフィディオ、有の5人は、円をつくって話をしていた。
円堂の言葉に有が彼を見ると、彼はまじめな顔で。
「影山にカブトムシ食わせたい。」
「……」
「賛成だよ、円堂君!」
「ついでに守達の言う必殺技も!」
「一度苦しみを味わえば良い。」
「なぜ甲虫なんだ。」
「いや、それは…」
円堂がヒロト達の話をしようと口を開いた時だった。
「影山に食べられて一生を終える甲虫が可哀想だ。」
「「「「え」」」」
- Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 完結!! ( No.699 )
- 日時: 2012/08/08 17:14
- 名前: 姫佳 (ID: /LylQYeE)
- 参照: ローゼンメイデンにヤバいほどハマった!!
第四章
{彼氏と更なる未来人}
「ようやく寝たわね…」
「はい、ようやくです。」
ラティアが有達の話し合いに参加できなかったのは、魁太が原因である。2人が刃を交える事は無かったが、口論はだんだんヒートアップし、仲裁に入る隙すらなかった。さすがに刀を抜く様な事があれば私が止めます、という言葉でフィディオは参加する事が出来たのである。
「…起きてる時からすれば、可愛いじゃない。」
「本当に申し訳ありませんでした!」
「! 私の方こそ…。どうしても魁渡がチラついて、大人しくさせないと満足できなかったのよ。」
魁太がすやすやと眠る横で、瑠璃は床に着けていた顔を上げた。
「アイツって…魁太に似ているんですか?」
「ええ。」
「…フィディオさんも…ですか?」
ラティアは小さく頷いた。
しばらくの沈黙に、瑠璃は外に出ましょうと立ち上がった。
縁側に座って上を見上げれば、視界いっぱいに飛び込んでくる星達。瑠璃とラティアは、満天の星空にほほを緩めた。
「それにしても、フィディオさんとラティアさんはすごいですね、他人なのに…2人は意思の疎通が出来てる気がしました。」
「そうだとしても、私の彼氏はイタリアの白い流星だけよ。」
瑠璃はきょとんとして瞬きを2回大きくしてから、そうですね、と微笑む。
「誰かの代わりなんて、世界中を捜しても有り得ないんですよね。」
「例え時空中を捜しても…きっと居ないわ。」
「…私も、そう思います。」
「…ところで瑠璃、」
ラティアが部屋の中に置かれた、有の荷物を見て問いかけた。
「貴女、有が好きなのね?」
「っ!?」
視線を瑠璃に戻すと、彼女の顔が赤くなるのが、ぼんやりとした部屋の蝋燭の炎だけでも分かる。
…図星なのね。
「ですが、有様に相応しい方は他にいらっしゃいます…」
私なんか、と呟いて瑠璃は立ち上がった。
ラティアは、有の荷物を整理し始めた瑠璃の背中を見つめる。
「…分かりやすい子ね。」
ティアラほど恋愛に敏感ではないラティアにも分かるのだ、相当分かりやすい。←
「…え?」
ふと瑠璃の動きが止まり、不思議に思ったラティアが駆け寄ると、彼女は小さな木箱をじっと見つめていた。そして、慎重に、木箱のふたを開ける———現れた物に、瑠璃は目を見開いて。
「……かん、ざし…?」
「?」
「かんざしは、男が女に贈るんだ。婚姻の証として。」
「フィディオ…」
話し合いが終わったのか、フィディオや円堂達が部屋に戻って来た。未来人達はその言葉に、若干驚きながらかんざしとフィディオを見つめる。瑠璃は顔を上げなかった。…有が彼女に気付くまで。
「瑠璃…。」
「! 申し訳ありませんっ、あの…今すぐ蓋し直します、から…」
段々と声は小さくなっていき、最後にはまた俯いてしまった。
運悪く大勢が居合わせる場…しかし有は別段緊張したりという様子も見せず。そして次の言葉に、瑠璃は驚きに目を見開く。
「受け取ってくれるか?」
瑠璃の髪を簡単に結いあげてかんざしを挿すと、彼女は緊張や嬉しさから泣き崩れ、有にしばらく抱きしめられていた。
「…良かったじゃない。」
そっと外に出るラティアに気付いたのは、フィディオだけだった。
*
「何、してるんだ?」
「…空を見てただけよ。」
良く見えるから、と付けたすと、フィディオは隣に来て同じように空を見上げる。その彼の横顔は本当に瓜二つで、この世界の異常さに小さく息を吐く。元の時代のフィディオが和服を着ている、そんな風にしか見えないわ…。
「どうかしたのかい?」
「元の時代を思い出してたの…言ったでしょう、貴方にそっくりな人がいるって。」
「元の時代…ラティア、君の祖国の話も聞かせてよ!」
急に手を握って来て、心拍数が若干上がった気がするけど…当たり前ね、白い流星が目を輝かせてこんなにテンション高く私の手を取った事があったかしら。
私は彼の話を聞いたのだから、私の事も話すのが公平と思って頷こうとした、瞬間。
「失礼しま〜すっ!」
「「!」」
「こ〜んな所にいらしたんですかぁ…もっと分かりやすい所にいてくれません?」
……誰?
笠の下から見える水色の髪と紫色の目…作り笑いと視線は私に向いている…けれど、私は彼女の事を知らない。
「君は…?」
「ごめんなさい、私貴方に興味無いの♪」
「え。」
フィディオが…振られてるわ。←
「どうしたんだ、ラティア?」
「守…」
「!」
最初の彼女の声が大きかったのか外に出て来た守達も、彼女の姿に首を傾げる。すると彼女はまた作り笑いを浮かべた。
「皆様お揃いですね、それではゲームを始めます。」
…ゲーム?
この雰囲気…言動からして、敵と見て間違いなさそうだわ…。
「…そもそも、お前誰だ?」
「あら、イナズマジャパンの女子選手さ(「俺は男だぁっ!!」
守になだめられる彼を見ても、相変わらずの笑顔で。
「御挨拶遅れて申し訳ありません、私…ベータ、と申します。」
……女性選手発言、彼女訂正しなかったわ。
「我々は未来から来た、貴様達の元の時代より210年先からな。」
「あら、エイナム。」
200年以上未来から…疑う余地は無いわ。
それにしても科学は発達したのね、簡単に過去と未来を行き来できるまでに。
「もしかして、貴女達が私達をこの時代に飛ばした張本人?」
「ご名答です…もぉ本当ごめんなさい、飛ばすつもりは全然なかったのに、間違えちゃいました。」
…そのポーズ、どこかで見た事があるわ…てへ何とか。興味無いからティアラの言った事聞き流してたのよね…。
「じゃあ、守達は帰れるのか!?」
「もちろんです…、た・だ・し!プロトコルオメガ2.0を、全員倒せたら…の話です。」
「なっ…!!」
エイナムという少年…(多分少年ね)を筆頭に手に武器を所持した少年達が襲いかかってくる。これがゲーム?
「彼等を切り抜けて私の後ろにあるタイムホールまで来れた方は、元の時代に帰る事が出来ます♪」
和服姿の10人…ベータを入れれば11人、何よ、エイリアの時みたいにサッカー勝負かと思っていたら…
「汚ねーぞっ、お前ら!!」
「! 魁太!?」
真剣を手にしたエイナムが守に斬りかかろうとした瞬間、魁太が鉄刀でその剣を受け止めた。エイナムは止められた事に驚いた様子…そんな隙を見せていたら、魁太は容赦しないはず。
直後、予想通り魁太がエイナムを蹴り飛ばした。
「他人の心配してる暇あんのか?」
「!」
目の前に迫っていたのは、光る——。
「「ラティアっ!!」」
光る、刀だった。
- Re: イナズマ 海の悪魔姫と太陽の天使姫 完結!! ( No.700 )
- 日時: 2012/08/08 17:15
- 名前: 姫佳 (ID: /LylQYeE)
- 参照: ローゼンメイデンにヤバいほどハマった!!
最終章
{江戸の武士は未来より…!?}
「「ラティアっ!!」」
刀を向けられると、ボールと違う鋭利さに足がすくんでしまう。
何で、逃げられな——
「ぐぁっ!」
「———戦場で、素人には負ける気がしないんだ…」
刀の柄で、フィディオは私に刀を向けていた人を突き飛ばした。
「魁太っ、急いで片付けるぞ!」
「おおっ!!」
フィディオは私の方を向いて一瞬微笑んでから、少し怯んでいる相手に刀を向ける。守も竹刀を手に応戦している姿が見えた。
「ラティアさんっ、怪我ありませんか?」
「ええ…大丈夫よ。」
「…もう少しで、ラティアさん帰れるんですね。」
少し寂しそうな笑顔で私の隣に座る瑠璃の背後で、フィディオが手刀で相手を気絶させている様子が見えた。
「魁太もフィディオさんも、負けないですから。」
「…やっぱり、魁太強かったのね。」
「え?」
「そんな気はしてたのよ。」
魁太の方を見ると、鉄刀を相手の腹に打ち込んでいるところ。また1人、低空飛行。
「ラティアさん…」
「魁太は清々するでしょうね。」
「え;;」
嬉しそうな表情の瑠璃に、微笑んで返す。
魁渡と同じだったんだもの、雰囲気と…私に口げんかで負ける所もね。
「あ、もう片付いたみたいです。」
瑠璃の視線を追うと、立っていた敵はベータのみ。2人に怪我は見られない…圧勝だったようね。
「…なめてました、2人の事。」
「Σ!!」
「か、魁太…堪えてっ…」
「相変わらず、女子相手には敏感なようね…」
「! そうだっ、この隙に行きましょう!」
走り出した瑠璃に引っ張られる。彼女の頭に、かんざしが見えて思わず笑みがこぼれ…
「スリーッ、」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
急に声を上げたベータの顔は、楽しむ様な笑み——。
「! 皆っ、急げっ!!」
「ツー、」
「フフ…これは、タイムリミットだ…」
「もうじきタイムホールは閉じる!」
プロトコルオメガの倒された少年達が、口々にそう言っているのが聞こえっ…待って、守が…!!!
「守さんっ!!!」
瑠璃が左手を伸ばした、それに竹刀を置いて全力で駆けて来た守が手を伸ばす。
「ワンッ…」
「…っあ!」
「「「「!!」」」」
「タイムジャンプ、行ってらっしゃい♪」
穴が閉じていく直前、振り返って微笑んだベータの後ろに見えたのは。
驚いた表情の、フィディオと魁太、そして有。
「姉ちゃん!?」
「っ、瑠璃!!」
「ひゃぁぁーっ!?」
後ろに引っ張られていく感覚の中目を開けてみると、守の右手は瑠璃の左手を掴んでいた。
*
——現代
鳥のさえずりに、重たい瞼をそっと開ける。すると視界に飛び込んできたのは———虫。
「!?」
とっさに横にかわすと、頭を支えていた木の幹から外れてバランスを崩してしまって…突進してくるような虫がいたのね。
ふう、とため息を吐く。
「…ラティア!?」
似たような声は聞いていたはずなのに、とても懐かしい気がした…振り返ると、やっぱり、江戸の彼とは別人。
「ティアラからラティアと守達が急に居なくなった、って連絡が来て!急いで別荘に…ラティア?」
「…守達なら、多分帰って来たわ…」
「……何か、あった?」
私は帰って来られた、なら守達も帰って来ているはず。
彼の問いかけに、ええ、と返してもフィディオは何も言わない。抱きしめる腕に力を入れてくれる。
江戸時代に行ってしまってから1日も離れてなかったはずなのに、懐かしくて、溢れてくる感情。
「フィディオ…大好き。」
「…ラティアがそんな事言うなんて、明日は槍でも降りそうだ。」
「槍が降っても良いじゃない。」
「……俺も大好きだよ。」
ただいま、フィディオ・アルデナ。
*
「ラティアっ!!」
「ヒロト、貴方どうしてここに…!」
「!……この時代のフィディオか…そうだよね。」
「…この時代?」
「話すと長くなるわ、それよりどうしたの?」
別荘の中に入ると、ヒロトがさっきの虫如く突進して…でもさすが人ね、私の前でブレーキをかけた。
「そうだっ、大変な事になったんだ、早く来てほしい!」
「…分かったわ、案内して。」
何となく、分かる気がするわ…彼の言う大変な事。
隣のフィディオもヒロトの真剣な表情に何かを察したのか、ゆっくり頷く。
エレベーターに乗る時以外は走ってヒロトについて行く。そしてある部屋を通り過ぎようとした時、彼は急にドアを開けた。
「連れて来たよッ!」
そこにいたのは、
「……え?」
「やっぱりそうだったのね…」
はぁ、と無意識の内にため息が漏れた。
「ラティア!大変だっ…」
部屋の中に居た守が立ち上がる。分かってるわよ、見れば重大さが分かるわ…。
「ラティア、さん…?」
「全く、どうすればいいのよ…いくらクラリス家でもタイムマシンは無理よ?」
着物姿の瑠璃は、泣いていた様子。
*
「ごめんっ、瑠璃本当にごめん!!」
「しかしやってくれたな…あそこでつまづくとは。」
「いえ…私があの場ですぐ離れなかったのがいけないんです…」
「ラティア、彼女は…?」
傍観するラティアに問いかけると、江戸時代の娘よ、って。へえ、エド…江戸時代?
「信じてくれなくても良いわ、でも私は江戸時代に行って瑠璃に会った、そして同じくタイムスリップした守達にも…」
「…守が戻れるチャンスの時に躓いて、彼女も誤って来てしまった…?」
「そうよ。彼女は有人に似た少年と、魁渡に似た弟と一緒に暮らしていたのだけれど…」
「どうしよう…今頃、有と魁太が心配して(「円堂!!」
ま、守、もしかしてその2人は同居人の名前…
「ゆ…様っ、ふぇっ…」
「ななな泣くな!絶対戻れるから!!」
「ご、め…うぇぇっ…」
「……はぁ。」
2人の姿を思い出したみたいだ…止まっていた涙がまた溢れて、守は慌てだす。…ラティアの溜息は仕方ない。
と、その時。
{がちゃっ}
「ラティアっ、どうしようキャプテン達…が、」
……沈黙、の中で瑠璃の鳴き声だけが響く。入って来たのは、橙色の髪の…瑠璃花。
「………私?」
ラティアの部屋で、重たい沈黙は続く。
…物語は終わる、みたいだ。
*END*
(瑠璃姉っ、キャプテン達は…)
((え?))
(…瑠璃姉が2人居る!!!)