二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【フリーダム】ボカロ曲短篇集【解釈】 ( No.2 )
日時: 2012/03/07 20:36
名前: 悠 ◆D0A7OQqR9g (ID: w0.JbTZT)

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  カゲロウデイズ 1
 「だから夏は嫌いなんだ」





 携帯を見れば、デシタル式の時計がでかでかと日付と時間を主張していた。
8月15日12時28分、とても暑い日だった。
病気になりそうなくらい、太陽がアスファルトと俺を照らしつけて、「あちー」そう呟いた。
何時もの公園にて、することもない暇な俺と彼女は、意味も無く駄弁っていた。


「でもまぁ、夏は嫌いかな」
「そうなの?まあ、俺もだけどさ。なんで?」
「んー、やっぱり暑いし?」


 そういいながらも見るからに暑苦しい猫をふわりと撫で付けながら彼女はふてぶてしく呟いた。
俺はそんな彼女の腕に抱えられてる猫をちらり、見ると、その瞬間鈴がちりんと鳴って彼女の手から猫が逃げ出した。


「あっ…!ちょっと待って!!」


 逃げ出した猫のあとを追いかけて彼女は走り出す。
そんな彼女の足が横断歩道に差し掛かったとき、俺は思わず手を伸ばして、彼女の名前を叫んだ。
——信号機が、赤に変わった。
気づいたときにはもう遅くて、クラクションをけたたましく鳴らしながら横断歩道にトラックは突っ込んでいった。

バッと通ったトラックが彼女を轢きずったまま暫く走って何メートルかのところで止まった。
血飛沫が俺の頬をそめて、その鉄の臭いが嗅ぎなれた彼女の香りと混ざった。
とたんにむせ返る。気持ち悪い。

目の前には、血の海の中で倒れる彼女がいた。
彼女は固く目を閉じていて、手はだらりと力なく下がっている。


見るからに、全ては事切れていた。
「——嘘だろ」

目を疑う。息が出来なくなって苦しくなる。
どうして、どうして。

その刹那、急に後ろから気配がして後ろを振り向く。


「嘘じゃないぞ」——陽炎が嗤う。
俺の容姿とそっくりな陽炎が口元を歪めてくつくつ嗤う。
それがとんでもなく不愉快で、声にならない叫び声を搾り出す。


ふと空を見上げれば、にくいほどに青い空。
アスファルトの上に咲く紅い花とは対照の色。
蝉の音が俺の耳を支配する、かき回す。すべて眩んで、見えなくなった。


(嘘だといってくれよ)



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