二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【短編集】True liar【inzm】オリキャラ募集中! ( No.144 )
- 日時: 2012/06/17 14:45
- 名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)
「Family」
episode 13 「潜入」
マサキが数分店主と話をして、何とか正体を知られることなくカジノの場所を教えてもらえた。羊皮紙の裏に書きなぐられたある店の名前。そこにいる店の店主に合い言葉を伝えればいいらしい。如何せん、秘密基地じみている気がしてならないが、そこは気にしないでおこう。
問題はその合言葉の内容だ。それをマサキから聞いた瞬間、今回のフィロメラの襲撃事件とエレクトラに手紙を送ったやつが同じ奴らであることが明らかになったのだ。
直接手を下す役割を担ったのはバルバラファミリー。そしてそれを指揮したのはレルベットファミリー。そしてそれを束ねていたのはリブッサファミリー。
多分、そんな関係なのだ。
ということは、今回の事件は随分と大掛かりであり、大きな波紋を呼ぶことになるだろう。何せ、7大ファミリーに宣戦布告をしたようなものなのだから。
「この辺りですね」
ランマルはそう言って歩みを止めた。大通りからかなり外れたところ、いわゆる路地裏にいる彼ら。恰好は豪華絢爛なのにいる場所が場所なのでひどく浮いている。とは言っても、誰ひとりとして彼らのそばに人がいないので、気にしなくてもいいのだが。
「こんなところにカジノが?確かに隠すにはもってこいの場所ですけど……」
シレジアの一員、テンマはそう言い淀んだ。
確かに、カジノを隠すにはいい場所だ。でも、ここまで分かりにくい場所だったら、あまり人が来る感じはしない。
「初めから密輸目的なのかも。合言葉も、それなら納得いくよ」
シンスケのその言葉になるほど、とテンマは頷いている。単純な奴なことが見え見えだ。こんな奴で大丈夫だろうか、とヒョウカは先ほどのマサキとは全く違う印象を受ける。だが、このメンバーに選ばれていると言うことはそこそこやる奴なのだろう。
「ボス」
冷静そうな女の声が聞こえた。
その声に振り返ったのはタクトで、彼はどうした、と目の前にいた女にそう返した。そこにいたは、クリスだった。
かなりの腕前のスナイパーだと、ヒョウカは聞いている。確か異名は千里眼のスナイパーだ。それほどの腕前なら、確かにこの作戦に参加していてもおかしくはない。
「向こうにありました。そのカジノがあると言う店」
「流石クリスだな。ありがとう」
あった、と言ったが、クリスが指差した先に看板らしきものは見えない。
「本当にあるのか?」
「間違いないです」
ヒョウカの質問に、冷静に淡々と返してきたクリス。ヒョウカはもう一度クリスが言った場所を見てみる。しかし、やはり看板はおろか、出入りする人すら見えない。
一体どこの事を言っているのだろうか、と不思議でしょうがない。それはフィロメラの面々全員らしく、眉間に皺を寄せながらクリスが指差した方向にある道を見ている。
「ヒョウカさん、クリスは人一倍目がいいんですよ。多分だいぶ先に見えてるんです」
「……そうか」
ヒョウカはその言葉に納得しつつ、クリスを見た。
翡翠色の綺麗な真ん丸の瞳がヒョウカを映している。揺らぐことのない、その瞳の色。冷静さが良く分かる目だった。
「行きましょう」
タクトの声にそうだな、とヒョウカは返しながら、先頭を気歩き出したクリスに、ただただついていくだけだった。
* * *
数分歩いた後、少しずつ見えてきていた看板があった。そこに書かれていたのは店の名前で、マサキが店主からもらったメモに書かれていた店で間違いなかった。クリスの言っていたことは本当だったようだ。
「……ここですね」
全員が、その店の入り口の前に立つ。並んだ誰の顔にも、緊張と覚悟見えていた。
数拍の間の後、先頭を切ったテンマが、ひどく大きく感じてしまう扉をゆっくりと開けた。
扉の先に広がっていたのは、ガランとしたバーだった。
店員は一人。多分こいつが店主なのだろう。
「……下に用かい?」
「……あぁ」
マサキが、そう言うとふうと面倒くさそうな息を吐いて店主がある紙を出してきた。
「……一人でいい。名前を書け」
そう言ってつきだされた何も書かれていない羊皮紙とペン。それを撮ったマサキは、カウンターにそれを置き、無言で名を書き始めた。
「これでいいか?」
「あぁ。出てきたときに、下に入ってからの時間によって金を回収させてもらう。その時名前を言えば払うべき金額をお教えてもらえる」
「何でカジノとは別に金を払わなければならないんだ?」
ランマルの質問に、店主はひどく苦々しい顔をした。
「俺は下で馬鹿みたいなことをやってるやつらの仲間なんかじゃない。だから、俺はこっちのバーを経営する金が必要なんだよ。場所を貸してやってるだけだからな。で、こういうシステムにさせてもらってる。心配すんな。対して金額ではねえよ」
店主はそう吐き捨て、じっとこちらを見た。
その瞳に映っているのは憎悪に似た感情。ひどく嫌な選択を迫られて今につながっているのだろう。それでも、バーを続けているのだから大したものだ。否、続けるしかないのかもしれないが。
「じゃ、教えてもらったろ?合言葉。我らの君主の名は———」
「————ドラティ・ウニタス、ただ一人」
「せいぜい楽しんでくるといい」
店主はそう言うと、奥にあったオーク質の扉を指差した。
その扉を潜った先にあった、階段を下りる。階段の終わりに近づくにつれ、喧騒に似た声が辺りに充満し始めた。
会談の終わった先にあった扉を開けば、酒と煙草の匂いが鼻孔を通過し、豪華絢爛な服を着た人と、美しい装飾を施された光景が広がっていた。