二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ワンピース-王子嫌いな円卓の騎士 ( No.35 )
- 日時: 2012/06/18 22:04
- 名前: 勇騎那 (ID: AZnIL7RT)
その年、フォークスは15歳になった。
ロルシアも15歳になって、フォークスとともに戦闘訓練の学校に入学した。
入学当初から学年を重ねるごとにロルシアは全校生徒からの徹底的ないじめにあうようになった。
父親がいない、というわけのわからない理由でだ。
「なァ、ロルシア」
「何?」
「お前の父さんって、どこにいるんだ?」
「"新世界"」
「"新世界"。偉大なる航路の後半か。それ以上は知らないのか?」
「知ってる。でも言わない。母さんが選んだ人だから絶対にいい男だ」
ロルシアはつくづく愛に包まれた女なんだ。
フォークスは彼女を羨ましく思い、憧れた。
「そうか……。親がいるのって羨ましいな」
「何でそう思うの?」
「オレ、生まれた時から一人だったんだ」
「一人?寂しくなかった?」
「そりゃ寂しかった。でも、タイヨウの海賊団にいたころはそんなことも忘れてた」
フォークスにとって、タイヨウの海賊団は家だった。
親もいない、身内が誰かも知らない。
そもそも、身内がいるのかさえ分からない。
身寄りのない彼にとって海賊船が住まいだった。
「もう二度とあの船に戻ることがなくても、あの船はオレの実家だ」
そしてフォークスははかなげにほほ笑んだ。
ロルシアは宝石のように輝く笑顔を彼に向けた。
「じゃあ、あたしたち一緒に海に出よう!!」
「え?」
フォークスは考えもしなかったことを言われ、胸の内は複雑だった。
そんな彼の心を知ってか知らずか、ロルシアは話し続けた。
「あたし、もっともっと強くなって、いつか海に出る!フォークスと一緒に海に出たい!!」
「そういわれても、オレはもう海賊はやめたんだ」
「またやればいいじゃないか!!」
ロルシアは駄々っ子のようにフォークスに海賊をやろうとねだった。
「お前な、オレが海に出たがらない理由知らないのか?」
「あたしが知るわけないだろう!!」
ロルシアは胸を張ってどーんと言い切った。
ここまではっきり言われたらむしろすがすがしい。
「オレ、天竜人の奴隷だったんだよ」
「……え」
「だから万が一、オレが逃げ出した奴隷だとわかれば、政府が放っておくわけがない」
だからもう、二度と海に出ないと決めたんだ。
海が見える場所で静かに暮らして、静かに生涯を終えたい。
それが今のフォークスが一番に望むことだった。
「ダメだ!!」
ロルシアはそんなフォークスの思いを真っ向から否定した。
「あぁ?」
「そんなのダメだ!!まだ海に出たいって思ってるのに出ないなんてダメだ!!」
「政府に追われる奴の気持ちがわかるのかよ!!」
「追われたこともないのに分かるわけない!!」
「じゃあ放っておけ!!オレはもう、死ぬことばかり考えるあんな場所に連れ戻されたくないんだよ!!」
15歳にもなって子供のように声を荒らげて喧嘩した。
フォークスは二度とあの地獄に戻りたくないのだ。
「海賊をやりたいのに海に出ないなんて、フォークスは馬鹿だ!!」
馬鹿だ!!馬鹿だ!!馬鹿だ!!
ロルシアはフォークスを突き飛ばした。
女にしては低い声がフォークスの耳にへばりついた。
「あたしだっていずれ政府に命を狙われる身なんだ!!」
「……どういうことだ」
「あたしの両親は二人とも海賊王の船員だった。"時渡り"のアマンダ、そして、"赤髪"のシャンクス」
「父親が"四皇"………!!?」
「だからって、そんなことで海賊になることをあきらめたくない!!」
フォークスはショックを受けた。
ロルシアと自分は境遇が似ているのかもしれない。
「フォークスだって、本当は海賊やりたいんだろ!?誰にも支配されない、自由な海に行こう!!」
フォークスは迷った。
目の前に差しのべられた手を拒めば、二度と輝けない。
原石のままで終わってしまう。
だとしたら、答えは最初から決められている。
「分かった。この命、お前にくれてやる」
「よっしゃ—————————!!!」
今まで見たことないようなロルシアの喜びように、久しぶりに心から笑えた。
呆けたようにけたけた笑った。
「よろしく頼むぜ?相棒—ロルシア—」
「フォークスが笑った———————————!!!!」
いつぞやの青春ドラマのようにロルシアは夕日に向かって太陽に負けないくらい眩しい笑顔で叫んだ。
「いつか母さんを越えてやる————————————!!!」
誓いを叫ぶ娘の姿を見かけたアマンダは、海賊の顔で妖艶に笑った。
「時の果てで待ってるわ……」