二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: めだかボックス 知られざる悪平等 ( No.34 )
日時: 2012/08/22 23:28
名前: シャオン (ID: Wz7AUOMy)
参照: http://http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode



 第十一話 決着

 夢の中の教室・・・。その中はとても静かだった。いくら無心や世路神があまり話さないキャラだとしても、安心院さんが何ふり構わずぺちゃくちゃ話すのだが、今回は安心院さんも口を開けていた。開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。まぁ、こんな光景を見てしまっては黙りたくなるのも分かる。





 男の抱擁ほうようなんて誰が見たいだろうか。





 世路神があの時、無心にカッターナイフを振り下ろした瞬間、無心はすぐさまに目を開けて、迫り来る世路神のカッターナイフを持った両手首を掴み、自分の方に引き寄せたのだ。世路神は思いもよらない無心の行動に驚き、無心から自分の身体を引き剥がした。世路神はある程度に距離をとって、自分の額から流れる一筋の汗を腕で拭った。


 「驚いたな〜、まさかこの僕に抱擁するなんて・・・」

 世路神は顔では笑っているものの、内心ではかなりの動揺がうかがえている。

 「急に抱きしめて悪かったな〜骸。つい嬉しくなってな・・・」

 無心の表情が柔らかく、そして微笑んでいた。その時、世路神の身体は突如、凄まじく震えだした。表情も強張っていき、カッターナイフを取り出して身構えた。

 「何だお前、ひょっとしてそっち系か?」

 「いや、生憎そっち方面には興味ないな。ただお前と仲良くなりたいだけなんだよ」

 突然口調が変わりだした世路神。無心はそんな世路神にも笑って応えると、静かに足を進めた。

 「来るな・・・来るな・・・」

 世路神は呟くように言った。しかし、世路神の忠告は聞かず、無心は足を進める。

 「来るな・・・来るな・・・!」

 世路神は少しずつ声が大きくなる。だけど、無心は足を止めない。

 「来るなぁーーー!!」

 世路神は自分の持っているカッターナイフを無心へといくつも飛ばした。しかし、無心はそれを無駄な動きをせずに最小限に左や右へと顔を動かしてかわして行く。そして、ついに無心は世路神の目の前に立った。

 「俺と友達になっくれませんか?先輩」

 無心は自分の右手を世路神へと差し出した。しかし、世路神は未だに警戒している。

 「ふざけるな、僕が手を出したら絶対に何か仕掛けてくるだろ」

 世路神は目を鋭く、そして殺気を出しながら無心の優しげな目を見た。

 「いいや、俺は純粋にお前と仲良くしたいだけだ」

 ずーと差し出す無心の右手。世路神の心は揺れていた。なんせ、自分には友達と呼べる人物は数少ない。しかも、世路神自身こんなに友達を希望して来た人物は初めてだ。こんな事は滅多にない。

 「友達になってください」

 繰り返し言う無心。それに動かされたのか、世路神は自分の右手を差し出してきた。無心はその手を掴もうとしたその時だった。ぺチンッ・・・と教室に何かを叩いたような音が鳴り響いた。

 「ふざけるな、誰が友達になるかヨ」

 世路神が無心の手を叩いたのだ。

 「あ〜やる気が失せた〜。帰る、じゃあな」

 世路神は頭の後ろで手を組み、背を向けて言った。世路神のその背中はどこか嬉しさがあるように見えた。

 「ラーメンおごれよ?友達になるのはそれからだ」

 まさかの逆転劇。無心は、ああ、と言って了承した。その返事を聞くと世路神はふっ、とその場から一瞬で消えてしまった。


 「びっくりびっくり、君が彼を改心させるなんてねぇ」

 安心院さんがパチパチと拍手を送っている。無心は無表情に戻り、つまらない映画を見るかのように視線を安心院さんの方へとずらした。

 「改心させてないですよ。あっちが勝手に改心しただけです」

 安心院さんは目を閉じて笑った。

 「やっぱりかぁ・・・君、あのスキル使ったろ」

 安心院さんの目がゆっくりと開かれた。彼女は笑う、冷たく笑っている・・・。

 「「勘違い(バグ)」。どんな敵でも、同種か自分と同じ経験をしている者であれば、自然的に共有感をあおり、仲間かつ友達意識を持たせる過負荷」

 無心はそう言いながら、教室の出入り口へと近づく。そんな光景を眺めながら、安心院さんは前の机に足を乗せた。

 「君もひどいねぇ、友達になってください。とか言いながら、結局スキルに頼ってるだもんな〜」

 「別に頼ってませんよ。あのスキルは確かにそう言う効果ですが、あくまでそれはほんのわずかなもの。すぐに無くなってしまいます」

 無心は足を進めながら説明して行く。
 
 「じゃあ、彼は本当は君と仲良くなりたかったと言いたいのかい?」

 「それは俺にも分かりませんが、とにかく・・・友達が欲しかったんだと思います」

 無心はそう言うと、扉の前へと到着した。

 「じゃあ最後の質問。あの時君が見せた笑顔は本物?」

 無心はニコッと笑って応えた。

 「もちろん偽者」

 無心は扉を開け、真っ暗な空間へとダイブしていった。無心が消えた後の教室には安心院さん独りだけになった。

 「本当に感情ってやつはくだらねぇ」

 安心院さんは虫を見るような目で呟いた。静かな静かな教室で安心院さんは天井を見上げて少し表情を変えた。それはまるで、得体の知れないものに遭遇するような感覚・・・。







 「精々頑張ってくれよ?棉柄無心ぼく