二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 名探偵コナン —最後の銀弾(シルバーブレッド)— ( No.59 )
- 日時: 2012/08/28 18:37
- 名前: 未熟な探偵シャーリー ◆CwIDAY6e/I (ID: /dOKRqFx)
File10 命からがら逃亡
言われたとおり、アリスは堂々と歩いてアルフィオの後についていった。
階段を下ろうとしたその時、誰かに呼び止められアルフィオもアリスも心臓が飛び出そうになった。
アルフィオとアリスが振り返ると、そこにはジンと呼ばれた長髪の男とウォッカと呼ばれた体格のいい男がいた。
『リキュール』
『何だ、ジン?』
目は口ほどにものを言うということわざがあるが、ジンの目は正にそうだった。
冷酷さ、残虐さ、冷血さ……人の命などなんとも思わないような冷たい目にアリスはキツネにつままれたような気持ちになった。
『その女、見かねえ顔だが』
『あー、さっき本部のほうからきた新しい助手ですよ。コードネームはアクアビットですよ』
その時、アルフィオは後ろにあった窓の鍵を音も立てず外した。
『ほう……。嘘をついてるならすぐにわかる』
『ハハハ、拳銃まで突きつけて、発砲して無関係な人がきたらどうするつもりですか?』
よくよく見れば、ジンのポケットに拳銃らしき形が浮き出ていてアルフィオに突きつけていた。
『だったら、そのアクアビットとかいう女と一緒に来てもらおうか』
『それなら、僕だけで充分ですよ!』
突然アルフィオは後ろの窓を全開にしてアリスを押し倒した。
アリスの身体は宙に浮き、アルフィオとジンとウォッカの顔が遠のいていった。
『うっ、あぁ!!』
うめき声をあげて地面に強く叩きつけられてアリスはうまく立ちあがれなかった。
落下防止の策を越えてしまっていて、足場がかなり悪い。
『逃げろ!!全速力だ!!』
その時、その窓から銃声が聞こえた。
『やめて!!』
直後に銃声が再び聞こえて、アリスの右肩に激痛が走った。
アリスは体制を思いっきり崩してしまい、そのままどんどん下に転げ落ちてしまった。
遠のくビルの屋上には2人のスナイパーがいるのを視界に捉えた。
石や木にぶつかって、あちこちに痛みが広がる。
『コルン何やってんのさ!肩をかすめて馬鹿なんじゃないの!』
『木、邪魔。見えない』
屋上には男女のスナイパーがおり、ショートカットの女は片方の男のスナイパーに怒りをぶつけた。
コルンと呼ばれた男はそれに対して怒る様子も無く、淡々と告げた。
『チッ。次はアタイが撃ってやるからね。コルンは頭を狙って。アタイはドクドク打ってる心臓を撃つからさ』
キャンティの独断にコルンは何も答えず、スコープ越しに転げ落ちるアリスを追った。
しかし、アリスの全身が見えることはほぼ無く、木の葉が邪魔していた。
『ああもう!ジン!木が邪魔で確実に撃てないよ!適当にぶっぱなしていいかい?』
『……いいだろう』
いつの間にか屋上にジンが幽霊のように立っていた。
キャンティとコルンは油に火が放たれたように、すごい勢いで弾を撃ち始めた。
アリスは土手を転げ落ちながら、身をなんとかして守ろうと必死になった。
しかし、体はとまってくれずどんどん石や木に思いっきりぶつかる。
痛みを堪えていると、激しい痛みと共に体は止まった。
キャンティ達には急にアリスの姿が見えなくなったのに、動揺した。
『消えちまったよ!追うかい?ジン?』
『それは下っ端共に任せよう。お前達にはこの為に来て貰ったんじゃない』
『俺、殺したかった』
『我慢しろ、コルン。もしかしたら、近いうちに沢山殺せる。お前の自慢のショットガンでな』
こうして、三人は引き上げていった。
アリスは目を開けると、落とし穴のような所に落ちたことがわかった。
人の手で作られたのではなくて、自然と出来たような穴だ。
アリスはズキズキと痛む体を持ち上げて、上からじゃ見えない位置に身をおいた。
上を見れば大木が倒れこんでいて、まるでアリスを守っているかのようだった。
これではなかなか見つけられまい。
アリスは偶然にも隙間に落ちたのだ。
一息ついて、アリスはジーンズのポケットに手を伸ばした。
アルフィオから貰った白と赤の薬。
危険な目にあえば、飲み込めといわれて渡された薬。
そしてこれをくれた兄は……。
アリスは声を押し殺して静かに涙を流し、薬を口の中に放り込んだ。
今はまだ死ねない。
アルを殺したジンとかいう人がいる組織を追って、絶対に仇をとってやる。
その時、激しく心臓がドクンと打った。
息がつまりそうな程、アリスの体に異変が起きた。
声を上げずにはいられない。
アリスは土に顔をうずめて、呻いた。
体中が熱い。骨が溶けて行くようだ。何もかもが溶けて行く……。
くそ、この薬は殺人用の薬なのか。
飲んだ事を深く後悔して、アリスの意識は地中深く吸い込まれていった。