二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.104 )
日時: 2012/12/02 03:36
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 4HUso7p7)
参照: 第三篇/Like Wolf or Like Me? (泣き虫の傲慢)

 思考回路は完全にストップ、何を見ても茫漠とした中を歩む内、私は森を抜けていたらしい。
 頬を撫ぜた風の冷たさに、ハッとして我に返ったとき、私の前方には屋敷があった。赤い屋根に風見鶏、煉瓦作り風の、傍目から見たらひたすらでかいだけの五階建て。初めて見た時は生きるか死ぬかの瀬戸際で、周囲に気を配る余裕もなかったから、まじまじと見上げるのはコレが初めてだ。
 「小夜子さん、小夜子さんってば」
 ピットの呼びかけに答える余裕もなく、私はその泰然とした佇まいをただただ呆然と見上げ続ける。
 その均衡が崩れたのは、ほとんど機能を失っていた耳に、ラテン臭い声が届いたお陰だった。
 「あーやややーい……こりゃまたまあ、相当酷い目に遭ったんだね。二人とも大丈夫かい」
 今の今まで、ほとんど姿すら見かけなかった、私の一番の使い手——もとい、配管工の方のマリオ。画面越しにはよくよく見慣れたその姿を目の前にして、硬く硬く閉ざしていた何かが、ほんの少しずつ、崩れだす。
 「森の外れを探していたんじゃなかったの?」
 ピットのやや調子外れな問いに、彼は親指で少し帽子の鍔を押し上げた。口元は小さく笑っている。
 「君のただ事でない声と、クレイジーのただ事でない笑い声を聞いて引き返してきたんだよ。だけどまあ、その様子を見る限り、二人とも特に怪我なんかはしていないようだね。彼女は全身ずぶ濡れになっちゃったようだけど……とにもかくにも、二人とも無事で何よりさ」
 「小夜子さん、あまり大丈夫そうに見えないんだけど……!?」
 私の方を向きかけたピットが、息を呑んだ。
 目の前が霞んでよく見えないけれど、そんなに大げさな動きしなくたって、分かってる。分かってるよ。びっくりしてるんでしょ。ちゃんと分かってる。でも止められない。溢れ出して止まらない。今までずっとずっとずっと、我慢し続けてきた感情が、堰を切って、怒涛のように、押し寄せる。

To be continued...

我等がスマブラファイターズのリーダー、万能配管工ことマリオ。
最後の会話から実に59217文字を経て、ようやく再登場!

そして、この篇は小夜子さんが号泣する貴重な一篇だったりします。普段、小夜子さんは必要以上に感情を表に出さない人なので。