二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第零章/The Strongest Fighter? ( No.18 )
日時: 2012/09/09 01:15
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
参照: 第五篇/She is the Strongest Fighter (半径50cmの英雄)

 そこで、私は今までなかったものに気付いた。
 「あの、これ一体?」
 本来は本体に繋ぐケーブルの端、元はUSBケーブルの接続端子みたいなものがついていた所に、鍵のようなものが付いていたのだ。赤い透明ガラスのようなもので出来た、古典風な鍵。
 何処かに刺すんだろうということは分かるんだけど、と言葉を付け加えると、マスターは顔の険を少し緩めて一つうなずき、まだクッキーの奪い合いをしていた子供勢の方に少し目を向けた。視線に残る殺意を敏感に感じ、ガタッと椅子を鳴らして子供勢が身構える。
 「な、何ぃッ!?」
 「いや、お前たちには何もない。用があるのは背後のほうだ」
 「え、ぼく?」
 とぼけたように聞いたのは、ポットから紅茶をお代わりしていた、パルテナ親衛隊長ピット。私の中じゃ二番目によく使うキャラだ。マスターはそう、お前だ、といいつつ、指で私の肩を押した。大人しく行っとけとでも言ってるんだろう。行くしかない。苦し紛れに鍵を引っくり返したり透かしたりしながら、私は彼に近づいた。
 ぐるりと天使の周りを一周。そして、思わず眉間にシワをよせてしまう。
 「なな、な、何かぼくに?」
 今まで気が付かなかったけど、翼の間に、妙なものがある。
 ホンの微か、赤く光る何か。鍵穴のようなもの。何か刺せそうだ。
 「……えいっ」
 こういうのは考え込んだら負けだと思っている。
 鍵を鍵穴に突っ込んでみた。
 「ち、ちょっ、うわッ!」
 で、鍵の形してるくせに刺すだけなのか、力を入れてみたけど回せない。諦めずに何度か挑戦してみたけど、全く動きそうにないので諦める。それから、肝心のピット親衛隊長にどうしましたと問いかけてみると、彼は顔を真っ青にし、今にも泣きそうな声で叫んだ。
 「か、身体が動かないんだッ」
 沈黙。
 メンバーも私も、縋るようにマスターを見た。彼もまた沈黙していた。
 困惑が最後に向かうのは、やはり元凶たる私。私もまた困惑しているが、何時も冷たい頭の片隅は、一つの可能性を示唆して「やれ」と命じている。それに従うのが私。自分の嫌な部分に従うなんていけ好かないが、この冷たさにそむいて良いことが起こるなんてことは、今まで一回もなかった。
 「ちょっ、何をするんだぁ!」
 「あたしはただの女の子なんですよ!」
 言い訳になってないって言うのはなし。
 私は直立不動で動かないピットの肩に手をかけ、手頃なところにあった椅子の座面を使って、肩の上に載った。いわゆる肩車の姿勢だ。コントローラーはきちんと繋がっている。それじゃ、後は実行あるのみ。
 私はゲームの画面を想像しながら、スティックを右に弾いた。
 ぐらっ、と一瞬体制が崩れそうになるのを、堪える。

To be continued...

 今回はワンクッション。
 次回こそ小夜子さんの最強な理由が分かると思ふ。
 ピットは小夜子の二番目の婿。