二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.26 )
- 日時: 2012/09/14 21:27
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第七篇/Good Night. (とりあえず、明日へ行こう。)
屋敷の二階、回廊状の廊下の二つ目の曲がり角にあるドクターの部屋は、一目で分かる。
部屋の前に名前のプレートも掛かっているが、何より彼の部屋にだけ厳重そうなロックが掛かっているのだ。一体この中に何があるのだろう。勘ぐりながら、樫の扉をそっと叩く。反応が無かったので、もう少し強く叩いた。
「開けてあるよ。手前に引いて開けな」
すぐに中からドクターのおっとりした声が投げ返される。覚悟を決め、何かあったときはポケットに忍ばせたコントローラーを使うことも自重しない考えを固めて、私はそっとノブに手をかけた。
力を込め、ノブを下に押し下げ、引っ張る。
そして、立ち尽くした。
「ごめんよ、狭くて」
所狭しと並ぶ巨大な棚。そこにぎっしりと詰まれ、床にまで積み上げられた、想像を絶する量の医学書!
かなり奥のほうからドクターの声が聞こえるのだから、本来この部屋は相当広いはずなのに。扉を閉めつつ、呆然として天井を見上げてみると、棚の列がいかに多いかが良く分かった。
自分の身長の二倍もありそうな棚は、それだけで私の蔵書千二百冊近くを全て飲み込みそうなくらいだ。それが二架かける五列、合計十架。そして、床にはざっと見て百冊以上……何千冊が此処に収まっているんだ、一体。そして、それをドクターは全て読みこなしていると?
マスターの話を聞いたときとは別の眩暈を感じて、私は自動でロックの掛かった扉へともたれかかった。そこで、なにやら心配そうな顔をしたドクターが本の間を抜けてこっちまでやって来る。長いこと私が何も言わなかったもんだから、何事かと思ったのだろう。
「あーららら、大丈夫?」
「あはは……ごめんなさい、大丈夫です。いやその、凄い本の量で」
「あ、これ? 僕のだよ」
——全部っ!? あ、ありえん。本格的にこの人どうかしてるんじゃないか。医学書をこんだけそろえようと思ったら、普通の家に庭と屋根つき駐車場がついた物件が丸ごと一軒買えるんだぞ。
もっと頭がくらくらしてきた。床にへたりそうになった所を引っ張り上げられる。
「あーあ、全く……大丈夫かい本当に。とにかく、これは気にしない方向性で頼むよ。変に見られると困るような研究文書も混じってるんだ。……あ、でも貴女は知っているかもしれないなぁ」
「へ?」
思わず声が右上がる。困ったような顔をしてドクターは応じた。
「タブーのことを知ってるなら知ってるだろう、『影虫』って奴。僕は元々そいつの研究をしていたのさ。あれの正体は一体何なのか。その性質は。性質が分かったらその対処法は。応用できる方法は無いのか。……研究するうちに僕等人間には御せないって分かったんで、途中で止めたんだけどさ」
腰の抜けた私を立たせながら言う響きは、さっき聞いたものと寸分違わない、のんびりしたもの。『影虫』の研究とか人間には扱えないとか、何か聞いちゃいけないものを色々聞いたような気がするのだが、本人がどうも気にしていなさそうなので、私も気にしないことにした。
「まあ、今日はゆっくりお休み。ちなみに、アイスクライマーのお二人の試合は午後からしかない」
ポポくんとナナちゃんと約束したことは個人的なもののはずだ。
何で知ってるんだと聞くと、ドクターはキャスケットの鍔を押し下げながら、不敵に笑った。
「僕の耳は、地獄の噂だって聞けるんだぜ」
……嘘には、聞こえなかった。
To be continued...
ふざけているようでも、ドクターは凄いんです。