二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.99 )
- 日時: 2012/11/26 16:17
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 4HUso7p7)
- 参照: 第二篇/Silent Saneness (狂者は嗤い乍ら泣き喚く)
気まずさが狂気を駆逐し始めたとき、不意に、ベストのポケットから怒鳴り声が聞こえた。
「何だァ!?」
それこそ神速でクレイジーが振り向き、私は慌てふためきながらポケットのフラップを開ける。びしょびしょに濡れた銀色の受信機は「いいから早く乾かせよ馬鹿!」とでも叫んでいるかのように、より一層大きな声で存在をがなり立てていた。振って簡単に水を切り、受信画面を開く。二件来ていた。
まず一番上のメールは、件名なし。マスターからのだ。
「ほほーぅ? 兄貴からか。おい貸せ、見せろ」
横合いから覗き見していたクレイジーが、心底面白そうな声を上げて受信機を取り上げた。
「えっ、ちょっ、あたしにも見せてくださいよ。あたしに来たメールですっ」
「シスタァ……やっぱ面白ェ奴だわ。ほらよ」
呆れたような笑い声を上げて、クレイジーは受信機をもつ手を、自分の真正面から少し横にずらす。私はその隣に腰を下ろした。破壊神の横に女子高生が座っているなんて、メンバー、特にマスター辺りが見たら間違いなく顔面蒼白になる光景だろう。でもそんなの関係ねぇ!
さて、マスターのメールに改めて視線を落としてみる。
『今、君は森の奥にいるだろう? 皆心配して探し回っているぞ。
一昨日、昨日、今朝と色々あって疲れているだろうし、人のやることに水を差すのも本当はしたくないのだが、森はあまり奥まで立ち入らないでくれ。此処は慣れた者でも迷い易い上、陽が南中した後は急速に暗くなる。暗くなった森はもっと迷い易い。実際、ファイターが迷い込んで三日出られなくなったこともあった。
とにかく、無事ならば返事が欲しい。なるべく早く、子供勢がパニックにならない内に。
では、頼んだ。』
「なあ」
私が文章に眼を通し終わるのと同時、クレイジーが声を掛けてきた。
「ちょっとからかっても良いか?」
「えっ? で、でもそれっ」
「ちょっとだけだよ。お前の近況はちゃんと伝えてやるし、森抜けるまで送ってもやる」
あっという間にやり込められ、選択肢を失った私は黙り込む。そんな私に眼を細めて笑うと、慣れた手付きで受信機を操作し、まるで唄を綴る詩人のように優雅な所作で、ゆっくりと何かを打ち込み始めた。この破壊神が一体何を書くものかと、横合いから覗いてみることにする。
To be continued...
「完全」防水だから水につけても大丈夫。
マスターの心配性は度が過ぎてます。