二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 未来への道標 【学園アリス】 ( No.1 )
- 日時: 2012/11/05 22:56
- 名前: まめしば ◆65Er6PKVLQ (ID: yA6Y/.Us)
その日は晴天で、すっきりとした青空が広がっていた。
第一話 アリス学園
国立アリス研究機関学園本部。通称アリス学園。
そこには生まれつき“アリス”と言う能力を持った人間が集う。
それを人々は天賦の才能とも呼ぶ。
その学園に、女教師——天海早苗はいた。
「早苗先生、ちょっといい?」
「あ、はい。何でしょうか、鳴海先生?」
「ちょっとお話したい事がありまして……」
アリス学園きっての超美人教師である早苗。
肩まであるストレートの黒髪に、エメラルドにも負けない綺麗な碧眼。
桜色の小ぶりな唇にシミひとつない美肌。両耳に赤いピアス。
女性が羨むであろう細いくびれに長い足。おまけに胸は豊かだ。
完璧な容姿を持つ早苗は、同僚である鳴海と会話をしている。
「あのさ……脱走情報の事なんだけど、どう思う?」
「脱走情報……? ああ、あれね? 一応見に行ってみればどう?」
「うーん、やっぱりそうだよねえ……」
「はいはい、面倒くさそうなカオしてないで早く行きましょうね、鳴海先生!」
「はいはーい」
鳴海はだるそうな表情をしながら教員部屋から出ていく。
早苗はそれを静かに見送った後にまた同僚である岬の元へ向かった。
少し捜したところに岬を見つけると、早苗は駆け寄る。
岬も竹刀を持ちながら早苗の方を振り返った。
「ああ、早苗か。……どうした?」
「んー? ナルが外に行っちゃって暇でさあ? で、岬先生のところに来たのさ!」
「俺はお前の暇つぶし相手か……」
「そうとも言う〜」
「お前な……。って、ナルの行先知ってるのか?」
「え? うん、まあ」
「……外にいるのか?」
「どうだろうね。もう収めて戻ってきてるかもしれないし……一緒に捜そうか?」
「助かる。アイツ、またムチ豆勝手に持ち出したみたいでな……」
むんむんと苛々オーラが岬から漂ってきて、早苗は小さく笑った。
ムチ豆とは岬が自らの温室で育てている植物だ。
鳴海はよく温室から勝手に物を盗っていく様子である。
二人はのんびりと鳴海を捜し始めた。
しかし、刻々と時間が過ぎる中で鳴海は一方に見つからない。
「あるぇー? いないねー、ナルー?」
「気が抜けすぎだろ。って……今、その扉の向こうから物音しなかったか?」
「ん……あ、ちょっとした。ナルかもしれないね」
「…………」
「え、ちょっと、岬せんせ——」
まだ鳴海と決まった訳ではないが岬はもう開ける気満々だ。
そんな岬にちょっと焦り、早苗は止めに入る。
が、そのような間さえも与えずに岬は思いっきり扉を開ける。
「鳴海ーーっっ!! 温室から無断で鞭豆盗ったのお前かーーっ!!」
「きゃーーーっ!!」
「ちょ、岬先生!! 女の子ビックリしてるわよ!!」
「……ん? ああ、スマン、驚かせたか」
「にしてもここにナルはいないみたい。お邪魔したね、おじょうちゃん」
「ああ、行くか」
その時ガシッと少女が早苗の服の裾をつかんだ。
ん、と早苗は少女の方を見る。
栗色の髪をツインテールにしたその少女を見て早苗は少し目を細める。
が、すぐに笑顔に戻すと優しく尋ねてやる。
「どうしたの? 何かあった?」
「あ、あの……」
「早苗、俺は先に行くぞ?」
「あ、ええ」
岬が出て行き、早苗と少女は二人きりになる。
そんな時、早苗はソファに寝かされている少年——日向棗に気付いた。
棗は完全に脱力して眠っている。
おそらく……鳴海のフェロモンのアリスにやられたのだろう。
ここにはそういう能力を持つ人間が、たくさんいるのだ。
それが——アリス学園である。