二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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BLEACH 刹那の時間【葵】 第十一話更新 コメ求む!!
日時: 2011/04/11 21:36
名前: 風 (ID: 4.ooa1lg)
参照:  http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=15426

取り合えず新作品です。
此処を覗いて下さった方々感謝です^^
更に書き込みをして下さった心広い方々更に感謝です♪


〜作者状況〜

執筆していない【〇】執筆中【】
申し訳ありませんが執筆中に〇が付いている時は書き込まないで下さい。




&$★更新履歴★$&

>>7 第一章 第一部 第一話更新
>>10 第一章 第一部 第二話更新
>>11 小休止 第一回
>>12 第一章 第一部 第三話更新
>>17 第一章 第一部 最終話更新
>>20 第一章 第二部 第一話更新
>>23 第一章 第二部 第二話更新
>>28 第一章 第二部 第三話更新
>>32 第一章 第二節 第四話更新
>>37 小休止 第二回
>>37 第一章 第二節 最終話更新
>>39 第二章 第一節 第一話&第二章 プロローグ更新
>>39 >>44 小休止 第三回
>>44 第二章 第一節 第二話更新

〜来客して下さった方々〜

天蘭様・ねこうさぎ様・六様・加奈子様・夢様・淡雪様・緋乃椿様・ゆずは様・レッド様・凛寿様

今まで10名のお客様が来客して下さいました。
有難うございます!今後ともご贔屓に♪



=注意=
1.BLEACHが嫌いだと言う方はリターン。
2.オリキャラが多数出ると思います。苦手な方はリターン。
3.私が苦手と言う方はリターン。
4.流血・グロ描写・エロ描写,この掲示板のルールでは禁止されていますが一切手抜きしません。
看過出来ない方はリターン。
5.更新は亀並みかそれ以下(1ヵ月に一回も出来ないかも)です。心の広い方のみどうぞvv

オリキャラ募集要項&オリキャラ作成用紙

〜要項〜
名前【】
性別【】
見た目の年齢【】
身長・体重【】
誕生日【】
血液型【】
容姿【】
性格【】
趣味・特技【】
苦手な物【】
その他備考【】
斬魄刀解号【】(刈れとか射殺せとか)
斬魄刀名【】(漢字と片仮名両方)
斬魄刀能力【】(長くてもOK♪技名とかも出来れば

オリキャラ募集は終了しましたvv
投稿してくださった方々有難う御座います♪

>>主人公データ
名前:榛原翔兵/ハイバラショウヘイ
年齢:26歳
性別:♂
血液型:A型
誕生日:7月22日
身長・体重:186cm
容姿:赤味かかった黒の野性味あるオールバックでサングラス。
グリムジョーの様な美形ヤンキー顔で顔の中心辺りに斜めの切り傷がある。
黒のジャケットを多く着用。
性格:態度が大きく人を馬鹿にした言動が多いが実は情に厚く冷静で仕事が速い。面倒臭がりや。
趣味・特技・好き嫌い:趣味はバスケットやサッカーと言った球技。特技はハッキング(爆
好きな物は辛い物やジャズ音楽等。嫌いな物は甘い物や筋を通さない奴。
その他:死神代行ではないが正規の死神でもない。鬼道の達人だった死神を父に持っていた。
斬魄刀解号:煮え滾れ
〃始解名:劫火
〃卍解名:劫火蒼炎
〃始解能力:自らを中心とした空間に幾つもの炎を灯し爆発させる灯火。
自らの刃に炎を纏わせ戦う蒼舞(ソウブ)等がある。
〃卍解能力:不明


__________プロローグ


何が正義デ何ガ悪か考えレば考えルホどに分ラナい


                    ダから人ハ深ク考えル事ヲ放棄すル___




俺ハ其れヲ憎む……何故なラ____奴等ノ悪意を知ッテいるカら




                          ===奴等ノ名は王属特務===


怨む男は赤味掛かった黒のオールバックが特徴的な端正な面持ちを歪ませ復讐を誓う。



Next⇒第一話「王属特務隊長格」へ

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Re: BLEACH 刹那の時間【葵】 第七話更新! コメ求む! ( No.31 )
日時: 2011/01/17 14:59
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: nWEjYf1F)

どうも、レッドです。

風、久しぶりだね!dグレの小説にコメントを出してくれてありがとう。さっそく読ませていただきました。

後でストーリーを読ませていただきます。

Re: BLEACH 刹那の時間【葵】 第七話更新! コメ求む! ( No.32 )
日時: 2011/03/05 22:29
名前: 風(元;秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: L0.s5zak)

コメント下さった方々有難う御座います。


夢へ
あけおめ^^
バラガンズ…おぉ,何か良いですね!
絶対硬いと思うんですけどね…石類に見えますしね…藍染様座ってるときも全然凹んでないですしね(苦笑
ザエル達の小技は当たらないと意味がない……ですからね結局。
そうですねぇ…実はもっと遅い予定でした(汗



レッドへ
お久し振りですね^^
Dグレ頑張って下さいです!
所でBLEACHは知ってるのかな??


BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第二節
第四話「巨大なる暗雲 Part4」


敗戦し自室へと感情を露にし音を立てながら歩くアーロニーロ。
翔兵の苛立たしい笑みが脳裏に浮かぶ。頭に浮かぶ程怒りが強力に込み上げる。
アーロニーロは突然床を陥没するほど強く蹴り付け立ち止まり雄叫びを上げ壁を攻撃した。
轟音と共に壁が砕け散り抉れ巨大な創痕が刻まれる。


バラバラ___
「フーフー……気に喰わねぇ!」

ドゴォ!
「やれやれ,君と組んだ僕まで下等種族みたいに見えてしまうからそう言う感情表現は止めてくれ」
「煩イ……ドウセ少シ位壊レタッテ是ダケ広インダ!」

「それは否定しないがね?」

「余り口が過ぎるとお前から喰うぞ!!」
「____無理……だろ?」


ドッ!!


パチパチパチパチ…

「いやぁ,愉快愉快♪」

               ____「誰ダ!?いヤこノ嫌味ッタラしい声まさカ?」


一度では気は治まらずアーロニーロの破壊活動は2分以上続いた。
100m位の壁が抉れ崩れている。だが,この広いラス・ノーチェスに置いては些事。
この程度の破壊,幾度起ころうが大したことはない。
ザエルアポロに諌められた彼は足りないとばかりにそれを豪語する。
それに対してこれだから単細胞は困ると技とらしくザエルアポロはよろける。
気の短いアーロニーロがザエルアポロの処理にかかろうとした時だった。
二人の霊圧と霊圧がぶつかり合う戦地で調子外れの拍手が響き渡る。

そして,それと共に二人にとっては聞き覚えの有る声が響く。
だが,彼等はその人物が復活している事を知らず半信半疑だ。
兎に角,その正体を確認しようと声を方向を振り向く。


「ルピ・アンテノール……生き返ってたのか?」
「酷いなぁ?生き返って欲しくなかったのぉ?」

「どうでも良い……てめぇなんて」
「あははは♪ってか君等此処…僕の部屋なんだけどさぁ?」

「何が言いたい?」
「調子乗ってんなよ…」

「何て言った?」

心底生き返って欲しくなかったという風情で目の前の中世的な男ルピを見るザエルアポロ達。
そして,その反応を見たルピは服の裾を口に当て凄みを帯びた表情をして言う。
此処は俺の縄張りだぞと言う様に……
其れに何が何だか分らないという風情で挑発的に言うアーロニーロ達。

「____コーディングとか自分で勝手に遣るから……お前等調子に乗ってるなよ
分際弁えろ!」


ドッ____
「ハッ!片腕のグリムジョーの後番として分不相応の地位に着いた君が分際!?」
「ソレコソ笑い種ダネ…」


「本当に自分達が僕より格上だと思ってんの?めでたいね君達!」


自分の部屋の入り口をズタズタに砕かれた怒りが洩れる。
霊圧がグングンと上がり放流で風圧が発せられる。分を弁えろと言う発言。
それに対してザエルアポロ達は言う。君の生前の地位は単なる時間合せのお飾りだと。
然し,ルピも知っている。藍染と言う男が分不相応の地位に人を置く様な馬鹿ではない事を…
一触即発だった。




                             ズゥン—————



「な?」

走り出したアーロニーロの背中を足に力を入れ跳躍しようとしたザエルアポロの胸スレスレを…
刃幅10㎝は有ろう巨大な長剣が通った。二人はこの長刀の持主を知っている。
新たに現れた巨大な力に2人は動きを止める。
そして,同時に斬りかかっていたルピも動きを止めていた。



ギシギシ…
「東仙統括官長様?」

ドゴォ…
「下らん内輪揉めは此処までだ…」
「お久し振りやなぁルピちゃん♪相変らず可愛いわぁ♪」

「はぁ…ヤレヤレだよ……ギンさん」

自らとザエルアポロ達の前に一瞬にして割って入りルピの全力の一撃を
軽く受け止める東仙がルピの前には居た。
そして,言外に自分で自分の部屋を壊すなと言っている様に聴こえた。
その直ぐ後に頭を冷やせとばかりに蹴り飛ばされたが…
自らの斬魄刀の始解神槍により砕かれた壁の先より現れたギンを見て
十中八九存在には気付いていたもののルピは目を丸くする。
生前2人は仲が良かったのだ。馬が合った…趣味が有ったのだ。
2人は少し余所余所しい雰囲気で久々の会話を交した。


__________

一方,彼等が虚圏のラス・ノーチェスに到着した位の頃。
現世では翔兵と衝突した一護が未だに絶望と悲嘆の淵に沈んでいた。

「翔兵……分らねぇよ何で?」


<一護……一護>
「おっさん?」
<立ち上がれ……何時までも打ちひしがれているのは真の敗北者だ>

そんな一護の横に黒いボロボロの服を着た長身痩躯の黒髪の男が立っている。
一護の良く知る人物だ。否,存在と言った方が良い。
死神の力の象徴斬魄刀には夫々,精霊と言える存在が内在している。
一護の斬月に内在する精霊……斬月である。
彼の斬魄刀の精霊は卍解と始解により姿が異なると言う特徴を持つ。

世界が止まって見える。
是は精霊廷にルキアを助けに潜入して鬼神,剣八に敗北した時にも見た光景だ。
死神の夫々の斬魄刀の持ち霊達は主の時の流れだけを周りと断絶する事が希にある。
一護にとって是はその行為の二度目だった…

「そんな事言われても…俺はアイツと戦う気力が…」
<そんな事は分っている。お前の心の中は今や仲間を失った悲しみと
仲間に裏切られた憎しみで土砂降りだ…だが…だが!立ち上がるのがお前と言う男だ>

「……………」

グッ————一護は自らノ拳ヲ血が出ル程に握ッタ____


その姿を見た斬月は一護の中の闘争本能と彼の根底にある守ると言う本懐が
失われていない事を感じる。それを一頻り感じて一護の内面の世界へと戻っていく。
瞬間,世界の風景が動き始める。人が…雲が……そして,音が響く。
音が響き始めて分る…世界は動き続けていて…然し今此処で起った事は殆どの人は知らない。
知っている……力を持っている者が今起る脅威に立ち向かわず打ちひしがれているのは愚かだと。
だが,彼には多くの修羅場を救ってくれた友を斬る事に成ると言う事に大きな抵抗が有った。


ザッ

「一護」「黒崎!此処に居たのか!!」


そんな打ちひしがれる弱弱しい背中のオレンジ髪の男の後に2人の歴戦の友,
巨躯の虚等という存在とは無縁だった頃からの本当の親友茶渡安寅…
そして,痩躯の細面の切れ長の目を引く美男子クインシー石田雨竜だ。
一護が翔兵の所に向う前に一護は虚の討伐の関係で雨竜と共に居たが巨大な霊圧を感じ,
石田雨竜に親友の茶渡と合流して一緒に来てくれと一護が頼み先に一護が現場に向ったのだ。


「石田…茶渡」
「どうした?随分と元気が無いな……榛原君が矢張り何かしたのか?」

「分ってんだろ?藍染が復活した…」
「ムッ…矢張りあの霊圧は嘘じゃなかったのか……井上は!井上はどうした!?」


ズン!


気付いた一護は茶渡達にノロノロと振り向きやつれた顔を見せる。
そのやつれた顔を忌々しげに見詰めながら石田は厳しい表情で一護に問う。
一護はそんな事は分りきっているだろうと投遣りな回答をして
そして,藍染の出現と十刃達の復活を告げた。瞬間二人の表情が引き攣る。
然し務めて冷静に茶渡は一番気になっていた仲間の安否を問う。

「—————死んだ」
「なっ!?理由は…榛原君が殺したのか!?」


「違う……アイツの表情からすると,誰かに殺されて…それがアイツの行動の引き金になってて」


一護は茶渡の問いに一層沈鬱な表情を浮べ事実を短く伝えた。
二人は一瞬瞠目する。
何故…誰が?捲くし立てる様に問いたかったが一護の今の落ち込み様を見て其れは酷だと感じた。
石田が懸念していた事を問う。自分達を裏切っただけじゃなくて井上織姫まで彼が殺したのか?と…
一護は其れを一瞬の戦いで少々刀を重ねただけだが違うと否定できた。
唯,何も翔兵は応えてくれなかった…だから予想を滔々と述べるのだった。

「兎に角,此処で話していても埒がない。浦原さんの所に集まって話を仰ごう!」
「ムッ!」

ガシッ___
「チャッ茶渡!?」
「今,お前が動けんのなら俺が支えるだけだ…」
「いっ良いって!自分で…」

「無茶はするな……」


少し安心したかのように石田は咳込み浦原商店で会議する事を提案する。
茶渡も賛同し抜け殻の様な一護の体を抱え込む。
どうやら疲れた友人を自ら背負い連れて行く積りのようだ。
一護は反抗するが茶渡は今の一護がどんな状況か知っている。
だから,一護の強がりを無視して抱え込んだ。


下せとジタバタする一護に浦原喜助から拝借した麻酔薬を使い石田が黙らせる。
茶渡は一見すれば変なコスプレをしている石田と隣に居るから周りを気にしながら
人通りの無い道を歩く。石田も自らより機動力の無い茶渡に合せて移動する。
何時もの光景だ。そして,直進と右折左折を繰り返して裏道を通りながら浦原商店へと辿り着く。
其処は,古びれた駄菓子屋だった。

閉店と書いてある看板を無視し店の裏側の店員及び特別来賓客用の扉から石田達は部屋に入る。
すぐさま,異常な光景が目に入る。真っ赤な鼻と鹿の角のオブジェを付けた筋骨隆々の巨漢。
その巨漢と同じ物をつけて更にはソリを引く小さな少女とそのソリの上に乗るサンタ服の悪ガキ。
そのソリの上に乗った子供は少女に鞭を振い楽しそうにしている。
それが目に余り茶渡が少年の振う鞭を鷲掴みしてその行為の間違いを正す。
少年ジン太は茶渡の無言の威圧感にたじろき鞭を投げ捨てる。
其処にカランコロンと音を立て廊下を歩く影。
緑色の甚平を羽織り下駄を履いた無精ひげの古風な男,
浦原商店店主にして元十二番隊隊長及び初代技術開発局局長と言う大層な肩書きの男浦原喜助だ。

「おやおやぁ,井上さんはどうなされました?」
「ム!」

男の態度からは人の悪い笑みながら口調は快活だが心配だと言う本心が見え隠れしている。
ソレに対し仲間が死んだ現実をまだ受け入れ切れていない茶渡りが反応する。
冷静沈着に見えるが熱血漢である茶渡だ。浦原の言葉と表情に腹が立たないはずがなかった。
だが,このままでは話が進まないと悟り石田が体裁に出る。


その石田の言葉に浦原は一瞬瞠目して何時も被っている帽子で目を隠し言う。

「そっスかぁ……そりゃぁ,辛かったっスね」
その口調からは自らも辛いと言う本音が滲み出ていた。
逸早く,彼等の淀んだ霊圧を察知し良からぬ事が起ったと理解し
彼等を励まそうとクリスマスにちなんだ仮想パーティなどしていたが
逆に石田達の気持ちを苛立たせる結果になったと言う事実に彼は反省気味だ。
ガキ大将の様なジン太も浦原商店の名物店員である巨漢鉄斎も…皆が凶報に沈んだ表情だ。
そんな時,麻酔の効果が消え一護が目を覚ます。


「うっ……うぅ,茶渡…俺…は」
「ムッ…起きたか一護,下すぞ…」

「うおぉぉ!?」
ドサッ…

一護の反応を確認して無造作に一護を茶渡が下す。
この辺の気遣いの無さが長年の友と分る所だろう。無論,二人は内面まで深く知る仲だが…
そんな二人の様を見て石田は少し笑みを浮かべる。


『井上さん…井上さんは多分,僕達の笑みが無くなったら悲しむだろうな』

小さく魂すらも無くなったであろう彼女の顔を思い出し石田は思った。
この笑顔を無くしてはいけない。この戦いに結果を…悲しみに終止符を打たなければならないと。

茶渡のゾンザイな置き方に対してコントの様に抗議する一護。
茶渡は無言でソレを受け流す。
数十秒経過して…一護の熱もクールダウンして此処に来た目的を思い出す。

「浦原さん…」
「何スか?」


「教えて欲しい事が有るんだ?」
「教えられる範囲なら幾らでも♪」


一護に教えを請われて浦原は何時もの御茶らけた態度で応対するのだった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

一方,虚圏———

ザエルアポロとアーロニーロそして,ルピの小競り合いの仲裁を終えた二人は一緒に歩いていた。


カツンカツン…

このラス・ノーチェスに住まう人々の数を考えると広過ぎるほど広く長すぎるほど長い廊下
道は閑散としていて音を反射しやすい素材の性か二人の足音が自棄に大きい。


「はぁ,このラス・ノーチェスってなぁ…何時も思うんやけど…広すぎて一人で歩くと怖いわぁ」
「確かにな。バラガンの馬鹿の造った城だ。唯広ければ良いと言うだけなんだろう」

「うわぁ…東仙さん厳しい!」

「事実だ…然し,お前が私と同じ復讐者だったとはな」
「せやなぁ,僕も驚きやわ…」

先ず口を開いたのは市丸。
冷徹で心の奥底が読めない人物に見えがちだが実は孤独を嫌う人物だ。
虚圏では自分と馬の会う者が少なくてお陰で話が合うルピとは
他人とは距離を置くはずの彼にしては相当深い関わりを持てたらしい。
そんな静かさに愚痴を言うと東仙が今度はバラガンに愚痴を言う。
愚痴合戦だ。市丸が流石に厳しくないかと非難した所も事実だとバッサリ切り捨てる。

優しくて真面目な男に見えるが厳しい所は厳しい男だ。
一頻り愚痴の言い合いも終り次の会話に映ろうと東仙は逡巡しながら言葉を紡ぐ。
素直に市丸が思っていた以上に純粋で熱い男だったと言う事実に驚いていたのだ。


「復讐の為に死ねないと……お前はそれだけだったか?」
「乱菊が笑って過ごせる世界が来る事を望んどりました…平和,僕もね」

「……そうか,私は身勝手で腹の其処を見せないお前が苛立たしかった」
「でも,今は見せとりますやろ?」

「あぁ,そうだな…少し……少しだがお前に好感を持てる様になった。
因果な物だな…死んで生き返って…少し理解出来るようになるとは」
「せやなぁ……僕は,東仙さんの死様を見てたから少しは分ってたけど…」

死ぬのが怖い…ソレを前面に出していた二人。
市丸は死んだら人生を楽しめないという理由…
東仙は仲間を悲しませるという理由で死ねない本当の理由を暈していた。
最もその嘘の理由も彼等にとっては事実だから突き通せたのだが…

敵討ちと言う同じ目的で藍染に組した二人。
ギンは乱菊に対しての直接の仇…
仇を追っている間に間にこの男が恐ろしい事をしようとしている事を知ったのも
彼を突き動かした大きな理由だろう。
東仙は愛した女を何も出来ず失った事…
戸魂界の賢者達の私利私欲に塗れた損得勘定で
彼女の命を奪った存在が生延び更には上の地位に付いた男と賢者達の愚かな政治への怒り。
腐った世界を根底から破壊するという正義を掲げた復讐心。


「何や僕等…似てるなぁ」
「あぁ…そして,榛原翔兵と言う男もまた…」

「大切な人ってのは…罪なもんですわ」

カツーン

類似性を認め合いながらそして,また自ら達の上に立つ男が
戸魂界への復讐を誓っている事を解し二人は俯いていた顔を少し上げる。
其の瞬間に紡がれた市丸の言葉が東仙の心に熱く染み込んだ。
復讐の道程は遠く険しい。是だけの戦力が居ても護廷及び零番隊は手強い相手だ。
ソレを危惧しながら…そして,かつての友との戦いを想像しながら二人は無言で歩いた。


**************

そして,現世の浦原商店では一護達が榛原翔兵と言う男の真実を聞いていた。
翔兵の一族は元々瀞霊廷の上級貴族で多くの機密文書を有していた事。
更に禁忌の力と称される力を保有し封印していたという事実。
その禁忌の力が王族の目に止まり百年ほど前に迫害され現世に追い遣られたという事。
そして,何も目立った事もやらずに現世で静かに暮らしていたのにも関わらず
つい数年前に大量虐殺されたという事。
浦原の知りうる限りの全てが話された。


「何だよ…死神に虐殺されたって?」
「その通りの意味っス…彼の一族は皆,霊圧を封じられていたから斬魄刀等は持っていても
何も出来なかったっス…それに元々彼等は武才には秀でていても戦いを好みませんでした」

「ちょっと待て…ならば何故翔兵は霊圧を…あれ程の力を!?」
「…復讐をするとおっしゃっていたんスよね?
霊圧を回復させる利器も彼の一族の所有する物の中には有ったらしいっス」

皆の表情が引き攣る。
無抵抗だったと言う事はその利器の力を翔兵以外の者達は使わなかったと言う事だ。
そんな自らの死すら受け入れる者達の魂が彼の中にも有る筈だ。
それでも耐え切れなかった重圧…痛み,殺さずとも説得して取り払える可能性も有ると甘く見ていた。
一護の手が震える。


「井上…井上はこの事を?」
「はい,貴方達より随分前に彼の事については聞いてきました」

其れを受け入れた上で翔兵と付き合ってきた彼女の遺志を踏み躙ることになるのだろうか…
翔兵の復讐を止めればそう言う事になるのだろうか…そんな葛藤も生まれてきた。
一護は多くの感情が流れる脳内を整理する為にと外へ出る。
怒りとも迷いを振り切る為とも取れる大きな雄叫びを上げ地面を蹴り飛び上がった。


「大丈夫か兄ちゃん?」
「最初から大丈夫じゃないよ……あの人」

「雨…厳しいね?」

其の様を遠くから見るように冷静な奇人でも見るかのような目で見つめる子供二人。
その二人の会話に低いトーンで喜助が冷静に突っ込みを入れた。


その時だった。
夜空が湾曲し突然異次元への扉が開いた。
其処には数人の人影が有った。
黒の長髪の面長の美男子,四大貴族頭首でありルキアの兄である六番隊隊長朽木白哉。
小柄な黒髪の女性・十三番隊隊士朽木ルキア。
奇抜な髪型に鈴をつけた独眼の巨漢・十一番隊隊長更木剣八
及び護廷最単身のピンク髪の同隊副官草鹿やちるであった。

其の姿に一護は呆然としている。
するとこの中で最も一護と深い関係に有るルキアが声をかけてくる。


「どうした!?情けない面をして情けない声を張り上げおって!!」
「なっ何で!?」


「我等,山本総隊長の命によりこの重霊地空座町の守護を任された…」


ルキアの言葉にたじろきながら後に飛び退る一護。
その姿を情けないと思いながら追うルキアの横から低い声が響く。
そして,事態の重さを死神達も受け止めている事を理解する一護だった。


                        ∞END∞



NEXT⇒第一章 第二節 最終話「全てを蹴散らせ!!」へ



Re: BLEACH 刹那の時間【葵】 第九話執筆中 ( No.37 )
日時: 2011/03/21 02:35
名前: 風(元;秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: oq/GQDEH)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

BLEACH 刹那の時間【葵】
小休止:死亡キャラ台詞集 井上織姫編

BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第一節
第三話「榛原翔兵 Part2」

「はい♪」

「もう,四年に成りますね?」

「凄い!其処まで覚えてるんですか!?」

「あっ,ははっ♪じゃぁ,クールな感じの奴頼むよ?」

「くーくー」

「___榛原君」

「____大好キ♪」

「____黒崎君ハ太陽で榛原君は…オアシスかな…」

「______詰リどっチモ一番何だよぉ♪黒崎君はあたシを照ラシてくれる明るイ存在で
榛原君はアタしに新しい風を与エてクれる生キル為の潤いで————結婚すルンなら……やっパり」

「おかえり…今日も一緒して良い?」

「榛原君!?」

「待ってよ!?死神さんの霊圧だよ……雛森ちゃんのだ………なんでそんなに過敏なの!?」

「____何で?え…?」


BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第一節
第四話「榛原翔兵 Part3(嘘吐き」

「あっ,榛……原く…ん?」

「凄い辛そう…あたしが死にそうなのがそんなに悲しい?」

「もう良いよ…有難う……是が榛原君の本心なんだね」

「大丈夫だよ,君には草冠君が居る………あたしね,翔兵君が昔から嘘付いてたの知ってた。」

「「榛原君は優しいからね…いっつも辛い事や大変な事が有ると大丈夫だとか嘘付くの…
でも,分ってたよ…何かを強く憎んでること…そして,確信した。
大きな存在に復讐することを誓っていたんだね…」

「復讐を攻めはしないよ…榛原君の事ちょっと浦原さんから聞いたんだ…
一族を皆殺しにされたのに運良く生き延びたんだって…
あたしだってきっとそんな目にあったら復讐をする…でも,勝てる見込みのない復讐で死んで」

「そう………あたし…死神の人達好きなんだ。そして,大切だって思ってる。
でも,榛原君のことはもっと大切で………だからお願い」

「 ありがとう アリガトウ サヨウナラ_____」


〜あとがき〜
あっさり過ぎて感情移入も出来ない…様な気がする。
もう少し真面目に書くべきだったかなぁ(汗


BLEACH 刹那の時間【葵】
第一章

第二節
最終話「全てを蹴散らせ!!」


虚圏___
ラス・ノーチェスは中央の巨大な円柱状の塔を中心に十刃の手持ちである宮が
等間隔に並んでいる以外と整った造りの城塞だ。
そのラス・ノーチェスの中央塔の地下,翔兵により培養液の入った幾つかの水槽が設置されていた。
死んだ魂の断片を収集し再構築する翔兵の一族の持つ禁忌の力「死狂」を翔兵が応用させた物だ。
幾つかの水槽は硝子が割られ既に何人かの新たなる同士が翔兵の軍門にあることが分る。

そんな中,一人の細面で勝気そうな瞳に妖艶さの漂う容姿端麗な男が顕現していた。
男は見慣れない風景に暫し逡巡するも自由の王たる自分を外界と遮断する鬱陶しい壁の存在に
心底を腹を立て薄い硝子をそれ程の力は必要無いと思えるほどの力で破砕させた。

「ここは———」

地獄で戦いの日々に明け暮れていた性で記憶も薄れているが
見慣れていないだけで確かに見た事は有る風景だった。
彼の居た地獄では魂の大きい者
詰りは霊亜圧が大きい者の慟哭が形となって空に映し出されることが有るのだ。

「虚圏」


男は記憶を手繰り寄せ数秒,黙考しその答えに辿り付く。
詰りは未来永劫の地獄から自らが逃れられたのだと理解する。
瞬間,地獄との永久の契約の証である鎖の有無を確認する。
それらしき物は存在しない。そもそも存在したら彼は直ぐにまた地獄に送られているのだ。
未だに存在できているのが何よりの証拠だ。男は顔を手で覆い
目をギラつかせ残虐な笑みを浮かべながら甘美なる開放感に悶えた。


___地獄
現世でもない戸魂界でもない虚圏でもない…深遠の闇成る者達の強制収容所。
一見,其処は空が灰色で荒涼とした所々意図的に隆起したような丘があるだけの
別段恐ろしい場所に見える要素は無かった。

然し,日夜其処では現世で戸魂界で罪を背負った者達が永劫の苦痛を強いられている。
苦痛と恐怖に怨嗟の喚きを揚げながら生きる気力を失う多くの者達。
クシャナーダという地獄に堕ちた住人達では絶対に勝利できぬ番犬共に日々追われ
完全なる死叶わぬ地獄で死と同等の苦悶を重ね続け続け
気力も体力も疲弊し殆どの者達は動く事も無い。然し中には絶対に勝てぬと分っていても
力が在ればと言う一寸の望みに賭けクシャナーダに体を砕かれる毎に
自らの霊子をより戦闘向けへと特化させて行く者が居る。


その者達の代表格たる黒い先端に凹凸の有る変った形の長刀を使う長身痩躯の男。
今日も自らの進化の限界を感じながら地獄からの脱出を遂げる事の出来ない無念を
半端に力をつけた新参者相手に叩き付ける。新参者はその男の力を理解できず挑発する。
霊圧の大きさも彼の噂も地獄の深遠で肥大した物で表層部に居る小物共は理解する由も無いのだ。

「はっ!そこの美形のアンちゃんよ…」

挑発の台詞を言い終えるより速く男の体には剣戟の後と言うには
可笑しすぎる亀裂が入る。男の黒き刃がその挑発した男の体を一瞬にして真っ二つにした。
そして,真っ二つにされた男の体は見る見る間に腐朽して罅割れて行き男は喘ぐ間もなく砕けた。

「雑魚が」

そう,消え行く男を無感情な瞳で男が一瞥すると同時に圧倒的な力の男の体に異常が発生する。
男の体が少しずつ透けて行くのだ。遠目に見ても刻一刻と透明化して行くのが分る。
とうとう,自分の体も真の限界が来たのかと勘違いしたその白い布を纏った長身痩躯の男は
狂気に歪んだ笑みを見せ自嘲する様に高笑いした。
    

          —————地獄の者達にとって一つの脅威が消えた瞬間だった







数秒が立った。
何かが可笑しい事に男は気付く。自らは散開した霊子。詰りは意思無き存在と化した筈だ。
なのに何故だ。
確かに意識はあり確実に周りには景色が広がる。それも地獄の深遠まで踏破した彼の知らない風景。



『地獄じゃねぇ?』

怪訝そうに眉根を潜めると目の前に待っていたと言う風情で見慣れた男が颯爽と現れた。
自分の事を地獄の王だと心酔し実は自らに利用されていただけの男だ。
朱連と言う。
男は繁々と戸惑う自分を観察する朱連に腹を立て左手で水槽に思い切り拳を叩き付けた。
鈍い振動と共にピシリと巨大な堤防に小さな米粒ほどの穴が開く音がして
其処から少しずつ硝子は砕けて行き終には決壊する。


「君も…か」

繁々とした表情で朱連がコクトーに言う。
それは朱連にとって誰も知る顔の居ない場所で昔馴染みに会った時の様
な安堵感が有ったのかも知れない。
最も常に浮かべるその人を小馬鹿にした表情がそう思わせないのだが。

「どうやら,何かとご利益が有るらしいな」

コクトーはバツの悪い表情であえて朱連から視界を外して言う。


「コクトー,君とご利益が有るとは私達は地獄の王に相応しいと言う事だね?」
「どうだかな?てめぇは唯俺に利用されてただけだ…」

               
朱連はコクトーの言葉に目を見開き自分にも強者の素養が有ると言っているのかと色めき立つ。
元々自意識過剰で自分の強さに惚れている節の有る朱連は自らより上段者である彼を嫌う。
コクトーはと言うと余計な事を言ったという風情で反省しながらあの時の反目しあった日々を
追憶し拡大解釈をするなと言う風情で言い捨てる。
その言葉にやれやれと朱連は肩を竦めるのだった。
さして仲の良いわけでも二人は喋る事も無くなったし是からどうするかと思考しだす。
沈思黙考を繰り広げる二人の静寂の空間に一つの足音が響く。


「誰か居るのか!?」

コクトーは自らの強さに自信が有る故に悠然とし少し劣る朱連は自覚しているのか落ち着きを無くす。
其処に現れたのは朱連もコクトーも知る男だった。


「君か…地獄に始めて来た時の事を覚えているかい?」

「やれやれ,あの時は遠い過去の事だよ朱連?」


現れたのは桃色のウェーブ掛かった髪形の優男,ザエルアポロ・グランツだった。
朱連は自らより格下と見下す男の顔を見て楽しそうに指差し侮辱するのだった。
ザエルアポロはと言うと過去の事実は受け入れているらしく然程怒った様子も無く
唯,悠然と過去の自分とは違うのだと言ってのけた。


______________


一方,現世の浦原商店ではその頃戸魂界から派遣された隊長格達を交え話が展開されていた。
井上織姫の死亡と言う凶報にやちるとルキアは瞠目し
行き場の無い怒りをぶつけていた一護の気持ちも理解せず申し訳ないとルキアが謝る。
決別の悲しみを表には出さないものの白哉や剣八も何か含みの有る表情で思う所が有る様だった。


「許せぬ…翔兵が井上を!?」

「それは考えられねぇと思うぜ?流石に……あんな仲良かったのに…」

「世界はそんあ単純なもんでもねぇよ…俺ぁ,面倒くせぇそう言うのは大嫌いだがな」


暫しの沈黙が走る中ルキアが翔兵に対して怒りを顕にする。
まだ,翔兵が織姫を殺したのかどうかは分らないがそうだとすれば許し難いことだったからだ。
それに対して翔兵の肩を持つようにジン太が介入するがルキアも最初からそんな事は知っていた。
翔兵が織姫に手を掛ける可能性の低さも一護達の話の一部始終からも極めて低い。
そんな中,子供をあやすのは慣れていると言った様子で剣八はジン太に言うのだった。
普段,戦いに飢えた短絡的な狂人と認知されるその男が酷く理知的に見えた。


「剣八…」
「別に同情してる訳じゃねぇぞ?勘違いすんなよ一護…
俺が此処に居るのは現世にもゼッテェ強ぇ奴が来るって確信があるからだ」



何時もの剣八らしからぬ言動に怪訝な顔をして名前を呼ぶ一護。
それに対して面倒そうな態度ではぐらかし言い訳をする剣八が妙に面白かった。
無論,その言い訳が本心が大きく入った物であるのは分るが…
他人の心配をしてくれる様な人間なのだなと少し関心する一護だった。

「分ってるよ」


剣八とは付き合って長い一護だがまだ見た事が無い表情があるのだなという風情で少し笑顔を見せる。


「あ〜っ♪いっちー少し笑ったあぁぁ♪」
「うっうるせぇ!引っ付くな!!」


一方,闊達さの無い一護を何時までも心配そうに見ていたやちるは
その一護の一瞬の表情の変化を見逃さなかった。
空かさず元気付ける好機と一護に抱きつく。
それを一護は全力で振り解こうとするが存外に彼女は怪力で中々剥れてくれない。
先程までの暗い雰囲気が嘘だったように周りを転がり周る大乱闘となり部屋は少し和やかになった。


「全く,君はドタバタするのが性に有っているのか黒崎」
「うるせえぇぇ!助けろ石田あぁぁぁぁぁ!!」


それをニヤニヤと観察していた石田が眼鏡を指で持ち上げ嫌味を言い放つ。
そんな石田に一護は助けを要求するが石田は承諾した様子は無く続ける。

「やれやれ…クインシーが態々死神崩れを助ける義務があるのか?」

自分の宿敵である筈のお前を何故助けると…苦しんでいる姿を見ると気分が良いと。

「なっ!?何だよ…ツンデレか?分った…新手のツンデレだなこの野郎!!」
「………反吐が出る」

それに対して何だかんだ死神の敵だとか良いながら長年つるんだ情で
何時も一護の肩を盛ってくれる石田のツンデレ行為にしか見えないと一護は反論する。
それが余程癪に障ったのか石田は自らの獲物である銀嶺孤雀を冗談交じりに解放するのだった。

『あれ程親しんだ仲間の死っス…立上るには時間が掛かる事でしょう…
でも,この子達なら立上れると信じられるっスね』

そんな石田達の慣れ親しんだ者同士だから出来るコミカルな付き合いを
遠目から過去を懐かしむような瞳で見詰める浦原は彼らの是からの長い人生が
喜ばしい物になる様にと望むのだった。




_____________

___虚圏
中央に聳える一際大きな石造りの建築物の一角。
壮年に取り掛かろうとしている日本人離れした堀の深い顔立ちの気だるげな無精ひげの男が
壁に背を凭れて静かに瞑目していた。そんな男に忍び寄る影が有った。
其の影は気だるげな男の真上で止り自らの獲物である大斧を翳し男目掛けて降り立った。

強大な斧は巨漢である男の自重も加わり強烈な破壊力を見せ付ける。
気だるげな男の座っていた場所は既に陥没し壁も吹飛び外が見える。
しかし,男は其れを余裕で回避して目の前の恰幅の良い傷だらけの老獪を見詰めていた。

「影が丸見えだったぜ虚圏の王様?」
「何が言いたい小童」

「奇襲するならもう少し上手くしろ…」

後へと飛び退りながら男は老獪へ指摘する。
虚圏の追うと評された歴戦の勇と呼べる容姿の老獪は怒気の篭った声で何が言いたいのかと尋ねる。
其れに対し男は相手の琴線を狙うかのような発言をする。

老獪は目の前の男が嫌いだった。
千年以上の長きに渡り虚圏全土を平定し掌握していた正に王だった。
しかし,その王たる自分が藍染の組織するアランカルの中では二番…
目の前の何の覇気も感じぬ男が一番。信じ難く許しがたい真実。
あの時からこの目の前の男が十刃のナンバーワンに選抜された時から
一度たりとも目の前の男より自分が劣るとは思った事は無かった。
其れは驕りでも見誤りでもないと本人は信じている。憤慨する老獪は斧を振り回す。
それを男は易々と回避しながら後へと回る。

「確かにアンタは強いよ尊敬してる」
「黙れ!」

後ろに回り老獪の首筋に手を当て尊敬の念を口にする男。
老獪は心にもない事をと斧を振い男を振り払おうとする。
男はその一撃も軽く往なし素知らぬ顔だ。
そんな男の反応についに堪忍袋の限界を突破したのか老人は渋面を造り,
斧に黒き霊圧を滾らせる。
その力を男は知っているが目の前の男が刀剣解放しない状態では出来ない能力の筈だ。
老いの力…
即ちは物や肉体・霊体に宿る魂の有する形を留められる猶予時間を過剰促進させ殺す力。

「レスピラの究極の強みは相手の霊圧に関わらず相手を蝕み確実に殺すことが出来る事だ」
「何じゃ…ワシの技の説明か…腹立たしい」

しかし,普段なら自分の体から噴出する様に使う其れを老獪は斧に纏わせるだけだった。
男はそれを元に一つの推測をする。
目の前の巨漢は死から復活する淵で本来老いの力の発生源である
王冠以外の自らの武器である斧からも老いの力を発する能力を身に着けた。
しかし,斧の有する老いの力は噴出させ遠距離攻撃を出来ぬではないかと。
技とらしく相手の力の解析をして豪胆で短気な老獪の攻撃意欲を掻き立てたのは
それを立証させる為だった。

老人は男の目測どおり怒髪天し床を蹴り男に急接近した。
確信した。目の前の巨漢はこの状態ではレスピラの力を遠隔操作できないと…
空振りした斧が轟音を上げて床を抉る。抉られた床は一瞬にして朽ち果てた。
朽ち逝く速度が以前より遥かに速い事に男は瞠目する。
詰り斧による老いの力は攻撃範囲こそ狭い物の触れれば相手を一瞬で朽ちさせることが出来るのだ。
以前のレスピラは当っても少しずつ当った場所から腐朽していくので
手や足に当ればその四肢を切断し逃げ延びる事ができた。
今回の斧の力は其れを許さない。圧倒的な老いの速度が目玉と言う事だろう。

「ふっふっふ…愉快愉快♪どうじゃ…幾らお主とて触れらば一瞬で灰燼と帰すぞスターク!!」

老人はスタークの額に少々滲む汗に気付き挑発する。
スタークは虚圏の王を持つめどうやったらこの不毛な争いを終了させれるか逡巡する。
そんなスタークにお構い無しに老人は斧の鎖の部分を持ち振り回し今度は遠距離から
スタークを狙いだす。
スタークはその飛来する斧を悠々と回避し鎖の部分には老いの力が宿っていない事を確認する。


『好機』


激突した柱を一瞬で消し去り巻き上がる粉塵すら消し去る巨大な斧。
巨漢は忌々しげに舌打ちし次の一撃の備え鎖を手繰り寄せる。
スタークは「来いよ」と挑発する。老人はスターク目掛けて斧を放る。
回避し伸び切った鎖を自らの剣で断ち切る。変な力が入った性で斧は有らぬ方向へと飛び
老いの力を失い床を回転するように滑りながら壁に激突した。


「是で刀剣解放も出来ないな?」

巨漢の斬魄刀の様子を繁々と見てスタークは言う。
刀剣解放は有る程度以上所有の武器が原形を留めていなければ出来ない。
詰りは武器が両断されたり欠損すると出来なくなるのだ。
怖い技は封じた。詰り是で勝負は付いたという事だ。


「くっ…何故じゃ?何故勝てぬ!?」
「………知らないね。別に俺は勝ちたくは無いしアンタが弱いとは思ってないが…」
「黙れ小童あぁぁぁ!!」

目を丸くし虚圏の王と称された男は嘆く。
床に膝を付き茫然自失として…其れに対しスタークは忌憚無い言葉を言う。
彼は強くなど成りたくは無かった。弱くさえなりたいと思った。
目の前の男なら自分を殺してくれるんじゃないか…
こんな孤独で詰らない男の性を終焉に迎えてくれるんじゃないかそんな期待さえしていた。
巨漢は尚も怒りを剥き出しにする。
スタークは目をツイと細めて過去でも見るかのような儚い瞳で言う。


「敢えて言うなら…アンタは直ぐ熱くなって周りが見えなくなる性質だって事だなバラガン陛下?」


自分を殺すことが出来ないのはその傲慢さと直情的な性格ゆえだ。
だから実力が有るのに自分を殺すことも出来ないのだと…
バラガンは敵わないと舌打し憧憬にも似た目でスタークを見詰ていた。
其処に一つの足音が響き渡る。


「やれやれ随分暴れた物だな」

「ハリベル」
「榛原翔兵から呼び出しだ…攻め込むらしい」

「ふん…」

周りの凄惨な光景を見て足音の主は冷静な口調で良くもやったものだと
ことの主犯二人を睥睨し溜息を漏らす。
凛々しい褐色の肌のスタイルの良い美女だ。
スタークはその女の名を呼び何が有ったのかと言外に促す。
ハリベルと呼ばれた女は翔兵が招集を掛けたと短い言葉で説明する。
それに対して榛原翔兵が気に入らないバラガンは鼻を鳴らすのだった。


一方,同じラス・ノーチェスの中央搭,此方は久々の再開に含む所が有る様だった。
隻眼の蟷螂の様なという表現がしっくり来る様な顔立ちの
シャネルのマークの様な奇抜な武器を掲げた大男と
片方もまた隻眼ながら此方は清楚かつ穏やかな佇まいの美男子。
かつて十刃と従属官と言う主従関係だった二人だ。

「何だ…てめぇも復活しやがったのか?」

隻眼の巨漢が嬉しくも無さそうに言う。
其れに対して照れ隠しだと理解している清楚な佇まいの男は余り気にした様子も無く言う。


「えぇ,ノイトラ様一人では心配でして…」
「あぁ?てめえより俺の方が強ぃ,弱っちぃてめぇなんざ邪魔なだけだテスラ」

「相変らずの様で安心しました…」
「てめぇのその従者振りも相変らずだ…」


ノイトラはテスラの心配性な言葉に満更でも無さそうな反応をしながら憎まれ口を叩く。
過去の残像が脳裏を過る。
後,数瞬警告が早かったらテスラはあの修羅の攻撃を回避しノイトラが其れを助けられていた。
憂鬱な表情でテスラを見詰ると
テスラは一旦死んで悟りの境地にでも居たって居なくて安心したと微笑んだ。
ノイトラもまた,目の前の男が相変らずで安心したと嘆息しながらも笑みを見せた。


「行きましょう…榛原様がお呼びの様ですし」
「あんな奴に様とかつける必要はねぇ!」

「私の勝手ですよ…」

テスラが榛原に様等と言う敬称を付けている事に
何か腹立たし気な感情を覚えてノイトラは説教する。
其れに対してあくまで自分の勝手ですと
変な所でプライドのある彼らしい言い分をテスラは返すのだった。
そう言えばこんな奴だとノイトラは歩きながらボンヤリ思うのだった。


榛原翔兵の居,其処には既に粗全ての同胞が集っていた。
ラス・ノーチェスに入るまでは存在しなかった筈の物も何人か居る。
どうやら,翔兵の力によって十人以上新しく復活した様だ。
スタークはそう状況を把握する。翔兵の演説も最後の方で翔兵の語気に熱を感じる。


「熱いな…」
「お前が冷血過ぎるからそう感じるんだろ?」

「かもな…」

周りの熱気に当てられてついふら付くスタークを優しく抱えてハリベルが愚痴る。
そのハリベルの愚痴に嘆息しながら首肯するスタークだった。


「お前等は自由に殺したい奴等を殺せば良い!!圧倒的な戦力で害獣どもを蹴散らせ…」






                   ____死神共,全てを蹴散らせ!!!




「復讐の刃達よ!!」


何一つ縛りなど無い。
自らの組織したこの集団と死神達とでは圧倒的な戦力の開きが有る。
誰を殺すも自由だ。恨みをぶつけるのも因縁を晴らすのも…
唯,弱い癖にのうのうと生きている屑どもを弾圧するのも…
敵に情等要らない。
その容赦するなと言う言葉は多くが破面,即ち虚であり死神に恨みが有る者達には
魅力的過ぎる言葉だった————




その演説の終わりの瞬間に脚を踏み入れたノイトラの脳裏には剣八の姿。
沸々と復讐の炎が沸き上がっていた。




                          ∞END∞


NEXT⇒第二章 プロローグ&第二章第一部 第一話「開戦」



Re: BLEACH 刹那の時間【葵】 第十話執筆中 ( No.39 )
日時: 2011/04/10 21:59
名前: 風(元;秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: sCAj955N)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

BLEACH 刹那の時間【葵】
小休止:第一回オリジナルキャラクタインタビュー 榛原翔兵編 第一話(全2話)

翔兵「えっと,何で俺は体中をチェーンで括られてインタビューするわけ?」
藍染「君が危険だからさ」
ギン「趣味?」
東仙「作者の都合だ…」
ギン「たはぁ〜,東仙さんそれは言うたらあかんわぁ」

翔兵「風の都合か……アイツMじゃなかったけ?」
藍染「人はMでもありSでも有ると言うのが彼女の理論だよ」
翔兵「知ってるぅ」
東仙「SとMの両極端しか世の中には居ないというのも奴の理論だな。全く持って嘆かわしい」
ギン「真面目やなぁ…」

翔兵「所でさぁ…俺が質問攻めされるコーナーな筈だよね?」
ギン「質問攻めとか悲しい♪」
藍染「ギン…♪をつける所では無いのではないかな?」
ギン「すんません藍染隊長」
翔兵「ネェ,さっさと始めようぜ?」
東仙「そうだな…話が始まらんような気がしてきた」

藍染「君の父親は大鬼道長の鉄斎かい?」
翔兵「そんなアホな…俺も親父の事は族長に少し話を聞いた程度で良くは分らない。
だが,俺が並々外れて鬼道に精通しているのは一族の中でも鬼道の天才の系譜だからってのは確かだぜ」
ギン「ねぇねぇ?高校の頃サッカー部やったみたいやけどポジションは?」
翔兵「ミッドの右ウィング…俺足速かったからね」
ギン「何や…意外と控え目やね」
翔兵「フォワード以外は控え目だろ…アンタの脳内では」
ギン「当りぃ♪」

東仙「君は虚圏に行く前に自らの住居地を爆発させたよね。何か持ってきたものは有るのかい?
車も何も無くなってしまったようだが」
翔兵「あぁ……うん,何もかも燃やしたよ。現世への離別の為にさ」
東仙「成程,何一つ持って来た物は無しか」
翔兵「現世の物は…ね」


藍染「…………そう言えばラス・ノーチェスの地下に我々を復活させた装置が有ったな。
矢張り虚圏には何度か足を運べていたんだね」
翔兵「あぁ…霊圧探知の苦手なヤミーとガンテンバインとロリとメノリ位しか居ない状態だったから
隠れてコソコソするのも簡単だったぜ♪」
ギン「現世でも隠れてコソコソしてたんやもんなぁ♪」
翔兵「……だな」


⇒第二回(最終回)へ




BLEACH 刹那の時間【葵】
第二章

プロローグ_______

ラス・ノーチェスから遠く離れた場所。
不自然に抉られた穴の中,一人の男が佇んでいた。
水浅葱色の野性味溢れる無造作な髪形,そしてシャープな顎の端整かつ野性的な顔立ち…かつて黒崎一護と激戦を繰り広げた破面の戦士だ。
男は懐かしい然し今のこの世に存在してはならない筈の霊圧に違和感を感じ瞠目する。

「この霊圧は…ウルキオラに……藍染!?何でだ…死んでる筈だ」

全ての霊圧を感じ男の疑念は確信に変わる。死者が甦った。
何故だ。魂まで微塵に砕かれた存在が世界に形を成して顕現するなど有りえるのか。
幾ら思案しても答は出てこない。常識を知る者なら答が出ないのは当然だった。
世界の理に反する力が働いているのだから。



逡巡する男の近く,突然空間が歪み時空が裂かれる。
男は,客人の到来かと剣に手を差し伸べる。
現れたのは黒い肌の大きな瞳の女,浦原喜助が正規の死神をやっていた頃の元上司に当る人物,四楓院夜一だった。
珍しい来客に何か良からぬ事が起っていると確信して男はクックと喉で笑った。
戦いは好きだ。肉と肉,力と力のぶつかり合い…胸が躍る。

「あんたが来るってことは何か有ったか?」

嬉々とした表情で夜一に男は問い掛ける。

「井上織姫が死んだ…そして,榛原翔兵が死者を甦らせる秘宝に手を染め藍染達を甦らせた。翔兵は戸魂界に攻め込む積りだ」


夜一は淡々と冷静に現状を理路整然と男に継げる。
織姫の死に二度も腕を再生して貰った身の上である男は暫し思考を停止する。
誰が遣ったのかと問いかけたかったが表情から察するに彼女も其れは知らないのだろう。
男は歯軋りして翔兵の顔を思い浮かべる。たった数度とは言え面識がある。
最近会った時は織姫と仲が良かったのを覚えている。


『何でだ…』


疑念を抱きながら男は確実に事を起そうとしている。
織姫を護りもせず復讐の刃を向けたのかと静かに闘志を燃やす。
無論,如何に優れた神機を使ったからとあれ程の数の者達を復活させるには相当の時間が掛かった筈だ。
相応の準備をして長い期間をかけて計画を練っての復讐なのだろう。
だが,そんな物は関係なかった。


「気に食わねぇ…」

「グリムジョー…」

グリムジョーと呼ばれた男の目には明らかな殺意が滲み出ていた————

End


BLEACH 刹那の時間【葵】
第二章

第二節
第一話「開戦」

夜の帳落ちる現世,剣戟による澄んだ金属音が響き渡る。
その音は,霊成る者達のぶつかり合い建物などが破壊されない限り音は響かない。
ウルキオラは現世で戦える戦力及び一護達の心理状況の確認の為に
ハリベルと共に翔兵に現世に派兵され一護達の状況を霊圧を頼りに探知していた。
予想通りの戸魂界からの援軍と一護達の心理安定を確認して
ハリベルに報告を頼み自らは戦いたい相手である一護と交戦を開始した体だ。

一人は橙色の頭髪に黒き長刀を携え虚の仮面のような面をつけた黒崎一護,詰りは今の彼の最大戦力だ。
一方はモスグリーンの無機質な瞳の無造作な黒髪の異様に白い肌の男,ウルキオラ。
此方も通常状態ではなく自らの刀剣解放である黒翼大魔を解放した状態だ。


空を駆け回り人間には視認できぬほどの速度で刃を交わらせあう。
両者の実力は拮抗していた。否,僅かにウルキオラが押している。
一護はウルキオラから見れば全ての力を総動員して全力だ。
其れに対し一護から見たウルキオラはまだ,第二開放と言う切り札を残している。
是が一護の成長を知らぬウルキオラの見解だ。
押されている上に切り札を相手が切っていないと言うのに余裕の笑みを浮かべる一護に
ウルキオラは違和感を感じ得意の言葉攻めを始める。

「不思議だな…あの崩玉を従えた藍染様を圧倒したと聞いている
まるで,その実力を感じないのは何故だ?俺など一瞬で切り捨てられる筈だ」
「教える義務が有るかよ?」

ウルキオラの質問に一護は超然とした態度で面倒だとばかりに言捨てた。
当然答はそうだろうなとウルキオラは微笑して言葉を並べ続ける。

「藍染様からの話を聞いた事に基き推断した俺の考察はこうだ
お前は藍染様との戦いの直前,時間の極端に緩やかな空間断崖で
自らの父一心の助力により自らの斬魄刀の卍解天鎖斬月から斬月の深奥にある力を聞き出す事に成功した
だが,其れは藍染様の予測していたプロセスとは違った…
藍染様は天鎖斬月即ち卍解すら力で捻じ伏せ卍解を超えると言う机上の空論とさえされた力
天界へ至ると予想していたようだ」

『天界?』

ウルキオラは冷然とした冷え切った声で淡々と考察を述べていく。
今の所はウルキオラの考察と言うより藍染の考察だが一護の耳に聞きなれぬフレーズが入る。
卍解を屈服させる事により更なる力を手に入れる…聞いた事も無い物だった。
其れを尻目にウルキオラは尚も話を続ける。
然し,一護は卍解の屈服をする実力には至れず
否,至ろうともせず最後の月牙天衝と言う容易く習得出来る力に手を染めた。
だが,其の力は強力な力であるのに対し習得が容易く相応のリスクを孕んでいた。
詰りは霊圧の消失だ。

然し,一護はある一団と接触しフルブリングなる力を使役し其れを磨き
自らが肌身離さず持つ愛着のある物の中に有る魂と心を通わせ合い
その物,一護にとっては死神代行許可証を媒介とする事により得た記憶,
それにより代行許可証が吸収した一護の全ての戦いの記憶と力の質を顕現させるのに成功した。
然し,それは所詮は紛い物だった。
フルブリングの相乗効果により同じ物である斬魄刀の持ち霊の完全復活には成功したが
一護自身の圧倒的霊圧の完全復活には至れなかった。
即ち,一護はかつて自らと戦った時より弱い。


「是が俺の考察だ…」
「おいおい,何文字喋ったよ?お前,そんなお喋りだったんだな?」

「前にも言われた…言葉とは伝える物だ」
「!」

最後に丁寧に結びの言葉を言うウルキオラ。
先程までの説明口調と違い少し感情の入った物言いに一護は目を見開きながら
良く喋るなと意外そうに言う。そんな一護の言動に何処と無く楽しそうにウルキオラは言う。
言葉は心を繋げる為に力だと————
一護はこの様な事を言う奴だったのかと驚愕しウルキオラの横薙ぎの一撃に吹飛ばされる。
十回立て程度のビルに激突しビルが崩壊する。
その様を見て祈る様にルキアは目を閉じる。
隣に立っていた浦原はと言うと「いやぁ,瀞霊廷に魂魄保護と空間凍結依頼してて良かったぁ♪」と
気楽な風情だ。それだけ弟子である一護を信頼しているのだろう。
飄々としていて誰も信用しないと言って良いこの男が是ほど信頼するとは珍しい事だ。


「来い…其の程度でもたつく男じゃないだろう?」

「月牙天衝!」
「セロ・オスキュラス————」



黒き霊圧の奔流たちがぶつかり合い黒の嵐が空の全てに広がる。
唯でさえ黒い空が一層黒黒となる。そんな本流の中,剣戟がぶつかり合う。
容赦なき連打の応酬,大地が震撼する様な力の報酬が続く。
然し,一護は地力のさもあり徐々に追詰められ攻められっぱなしに成る。
遂にはウルキオラの光り輝く刃が腹部を貫通する。


「どうした…其の程度じゃないだろう」

ウルキオラは激痛に悶絶しているのか動かない一護を睥睨して言う。
すると一護は少しも痛いという素振りを見せず闘志に満ちた炎がぎらつく様な瞳でウルキオラを見詰める。
ゾクリと体の毛と言う毛が奮い立つのをウルキオラは理解する。
其れと同時に今の一護の評価を間違っていた事を理解する。
実力差は明確なのに誰一人加勢に来ないのは一対一の果し合いをさせてやりたい等と言う理由では断じてない。単純にこの男の実力を皆,理解しているのだ。
詰り,この男は自らの知らない更なる力を手に入れている。



「黒崎一護…また一つ成長したという事か!」

ウルキオラは今まで一度もした事で無いであろう戦いを心底楽しむような爛々とした表情を魅せる。


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一方,榛原翔兵及び彼に甦らせられ従う者達は既に虚圏を去り瀞霊廷の門前まで至っていた。
スタークにグラン・レイ・セロを受けたヤミーもスタークが極限まで威力を制御して撃ったお陰でほとんど損傷は無い。
更にグリムジョーの従属官だったシャウロン,イールフォルト,ディ・ロイも復活し
懐柔されていた。

「何だあぁ?門番が居やがるじゃねぇか!?面倒くせぇ!!」
「アホか…あんなデカイだけの門番大した事ねぇっての…本当に邪魔なのは遮魂膜だろ!」


一方,一行は殺気石と呼ばれる霊力を遮蔽する力を切断面から発する希少な鉱石で造られた
壁の前で立ち往生していた。鉱石自体も強力な霊力遮断力が有り霊成る者の力では破壊は不可能だ。
藍染の様に崩玉の力により理の外へと至った者ならまだしも…
バラガンの従属官であるアビラマが声を上げる。
彼は正面しか見ない性質ゆえか門番が邪魔だと考えるが其れを近くに居た小柄な中性的な男ジオに馬鹿にされ地団太を踏む。

そんな様を無視して藍染が鏡花水月を発動する。
藍染の斬魂魄の力,完全催眠を使い門番を操り門を開かせる。
そして,門番である巨漢にノイトラが一閃する。門番は門の重さに耐えられなくなり倒れ伏し門に潰され絶命した。
門が開かれた音に反応し近場を警戒していた死神達が応援を要請して現場へと向ってくるのが分る。
開戦が近付いて皆が高揚している中一人コクトーは気軽な口調で翔兵に質問する。

「所でよぉ…ウルキオラちゃんいねぇのお?会いたかったんだけどぉ?」
「ウルキオラ・シファーなら現世で既に仇敵黒崎一護と交戦中だ。
其れとノイトラの仇の更木剣八…ゾマリの仇の朽木白哉…
ディ・ロイを撃破した朽木ルキア…ヤミーにとって忌々しき存在である浦原喜助が滞在している」

翔兵が面倒そうに応える前にテキパキとした業務的な口調でハリベルがウルキオラの所在,
そして,ぺスキスを全開にして周囲を探り自らの仇敵を探りながらも見つけられていない面々に
仇は現世に居ると言う事を伝える。
そんなハリベルの言葉にコクトーは一護とは自分も因縁が有るんだがと呆けていた。



        ドクン————何故か,コクトーの顔を見て胸が高鳴る…茜雫は胸を押さえる

声が聞こえた。
其の声は妙に彼女の体の中にある多くの記憶たちを震え立たせた。
彼女詰り茜雫は実は一つの固体では有るが一つの人間では無い。
現世で死神に魂送され戸魂界に行く途中に何らかの事故で叫谷と呼ばれる所に封じ込められた魂たちの混合体なのだ。
詰り多くの魂の記憶を共有している事になる。
記憶の混線…聞き覚えの有る声を聴いたり顔を見た居るすると彼女のような存在は良く其れを起す。
だが,今回は其れが物凄く大きくて体中が警鐘をならしながらも歓喜している気がして…
彼女をよろめき草冠に寄りかかる。


「大丈夫か茜雫?」
「うん…大丈夫,ちょっとクラッと来ただけ」

「大丈夫じゃないだろうそれは…君は戦いに参加するな」
「…………あたしだけ足並みを外す訳には行かないよ」

「茜雫…」


倒れ込んだ茜雫を抱き抱え心配げに声をかける。
茜雫は笑みを浮かべるが無理をしているのは明確だった。
どのような形であれ死神に世話に成った彼女には酷な事だと彼は理解し彼女の戦線離脱を勧めた。
だが,彼女は其れを拒んだ。
その一連の遣り取りを見て翔兵は小さく笑いスタークは心配げに見詰めていた。
草冠は他人の意思を捻じ曲げるのは由と考えていない故に強く彼女を制止できなかった。
其れを彼は今後,後悔する事になる。


「おい!!あれは……マジか!?」
「藍染隊長に市丸隊長…それにあいつ等は破面!?」

敢えて隠れる必要も無く霊圧を探り戦いたい相手を皆探している最中だった。
其処に異変に気付き援軍を要請した上で現場確認に来た死神達が現れた。
死神達は目の前に居る面々達の絶大な実力と存在するはずの無い者達の数に愕然とする。


「ひっ怯むな!!逃げろ…絶対に敵わん!コイツラ霊力を隠して居たんだ!!」


形勢不利を即座に察知し指揮官が退避と隊長達への報告を命じる。
然し,それは既に遅すぎた。市丸ギンの神槍が彼等先遣隊を人薙ぎにして全員の物語を鎖した。


「あ〜ぁ,空気読めへん奴等は嫌われるで」

「もう,聞えてねぇよ」

説教がましくギンは雰囲気台無しだと忌々しげに言うと
其れに対してスタークがそんな事で殺すなよと言うスタンスの入った声音で言う。
スタークと言う男は殺戮を好む男ではなくこの戦いも唯一人しか倒す気は無いと言う変わり者だ。


そろそろ皆,熱気を帯びてきた。
現世に行きたい面々は現世侵略の許可を与え翔兵は前に出る。
そして,霊圧を網状に張り巡らせ複数人の対象の位置を捜索・捕捉し伝信する鬼道,
天艇空羅を使い宣戦布告する。



「ご機嫌麗しゅう,下らない死神諸君…俺達は復讐の刃。
あんたらに不当な扱いを受け鬱屈とした地獄に身を置き続けてきた者達だ。
俺達はあんた等を許さない…断罪の刃にてあんた等を処する事を此処に表明する……
死にたくなければ精々足掻け。どうせ,俺達には勝てない!」



全ての死神達に翔兵の言葉は伝わる。
そして,其の瞬間翔兵は抑えた霊圧を解放する許可を中間達に出す。
瀞霊廷全土が極限に濃縮された霊圧で覆われ力なき者や病弱な者は倒れ込むほどだ。

霊圧を漲らせいざ戦いの場へと彼等は奔るのだった。


「ん?藍染隊長は行かないの?」
「私も現世に行きたいんだが良いかい?」

「何で?」
「平子真子に用が有る」

「OK♪」


そんな中一人残った藍染に訝しがるように翔兵は問うと藍染は現世に行きたいと言う。
黒崎一護かと思いながら何故かを問うと以外にも仮面の軍勢に挨拶に行きたいと言う。
確か情報では彼らの事を余程差別していた筈だが…少し逡巡して翔兵は成程と合点が行く。
詰り仮面の軍勢を自らが殺して自分に提供すると言っているのだ。
腹に一物持った男だ。真意は不明だが面白いと思い翔兵は其れを許可する。
藍染は其れを聞いてすぐさま現世へと向った。
すると藍染が現世へと向ったのを確認してから戻って来たかのようなタイミングでアーロニーロが現れる。


「ヨォ…俺も現世に行って良いだろ?」
「うん,藍染の監視頼むよ…」


そんな事だろうと思ったと翔兵は目の前の男を単純だと軽蔑しながら申し出を許可する。
そもそも,戦力的には圧倒的に勝っているのだ。
元々独立独歩な連中だし束縛するのは止めた方が良い。
彼の何の中身も無い様な判断はそう言う彼等の本質を理解した物だった。


「さてと…俺も行くか」


皆が方々に散ったのを確認して翔兵も漸く足を進めた……



                           ∞END∞


NEXT⇒第二章 第一部 第二話「一輪の花」


Re: BLEACH 刹那の時間【葵】 第十話更新!コメ求む!! ( No.40 )
日時: 2011/04/02 21:41
名前: 凛寿 (ID: f/UYm5/w)
参照: http://pink/panthar/10gin

どうも!コメしていただき、ありがとうございます(●´艸`●)
オリキャラの設定が細かくてすごいとおもいます☆
うちももうちょっと設定に気を配ろうと思いました^^
文章力もすごいですね!


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